🩸 輸血後のヘモグロビンってどんくらい上がる?🤔

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♦️ はじめに

手術室では輸血は日常茶飯事.特に心臓外科を標榜する病院では輸血製剤を見ない日はないでしょう.私が現在勤めている病院は心臓外科がなくなってしまったのですが(悲),そんな日常の一幕.

なっちゃん

赤来ましたー.すぐいきますか?

さらりーまん

すぐいこか.もう血ぃ止まっとるから1パック入れたら1.5くらいは上がるやろ.

なっちゃん

なんでわかるんですか?

 勘ではありません笑.この記事では簡単な計算についてお話します.まぁどんな本にも書いてありますし,計算サイトもありますけど😅.


♦️ 血中のヘモグロビンの”総量”.

 検査データを見てください.ヘモグロビンの単位はどうなっていますか?そう,【g/dL】と書かれていますね.“dL”は”100mL”です

 そして人間の体にはどのくらいの血液が流れているでしょうか?これも一応の目安の計算式があります.

予測循環血液量 = 体重 × 70 (mL)

 例えば、体重50kgの患者さんなら、循環血液量は3,500mL=3.5Lです.ただし,あくまで目安.高度肥満,やせ型,性別,年齢にも左右されます.


♦️ それでは投与後の計算

🔷 では,ここで体重が60kg,ヘモグロビン濃度が10.0g/dLの患者さんのヘモグロビン量を計算してみましょう.

 循環血液量は60×70 = 4,200mL,つまり4.2L.だいたいなのでとりあえず4Lとしましょう.

 4Lは40dLなので,40×10.0 = 400gのヘモグロビンをこの患者さんは持っていることになります.

 ここまでで患者さんの総ヘモグロビン量が分かりましたね.では、次にこの患者さんに濃厚赤血球液(RCC)2単位を輸血する場合を考えてみます.

🔷 濃厚赤血球液(RCC)の中のヘモグロビン量

 これは覚えてもらうしかないのですが,RCC2単位の製剤の中には50g程度のヘモグロビンが含まれているとされています(正確には53gと書いてますが,とりあえず計算しやすい数字にします).

👉 注意:ここでの「2単位」は日本の規格(約200mL×2)です.海外の「1 unit」は容量が異なる(300mL前後)ため、英語記事では混同しないように注意してください.

 つまり,この患者さんにRCC2単位を入れると,血中の総ヘモグロビン量は400+50=450gのヘモグロビン量になります


🔷 あとは計算するだけ

 あとは循環血液量で割ってあげればよいですね.輸血後は輸血した分の血液量が増加するため,循環血液量も変化します.しかし血球成分が大半を占めるため、その増加分は無視して計算します.

 なんでも簡略化はNGですが,知りたいのはあくまで概算値ですのでよしとしましょう👍笑.

450(g) ÷ 40(dL) ≒ 11.25 g/dL

となりました.実際はヘモグロビンがちょっと多かったり,循環血液量ががちょっと増えていたりするので細かな値はずれます.しかし,繰り返しますが,大事なのは「概算値」を知ることです.

 ちなみにですが,今回わざわざ患者さんの総ヘモグロビン量を出しましたが,純粋に「追加するヘモグロビン量」を循環血液量で割って「予測増加分」を出しても全然構いません.どちらにせよ一緒です.



📝 まとめ(take home points)

  • 循環血液量は「体重×70 mL」で概算できる.
  • RCC2単位には 約50g Hb が含まれる(正確には53g).
  • 今回の例では Hb 10.0 g/dL → 輸血後 約11.2 g/dL に上昇と予測.
  • 実臨床では出血・輸液・溶血などの影響でズレが生じるため,「RCC1単位 ≒ Hb 0.5–1.0 g/dL 上昇」と大まかに覚えておけばよい.
  • 麻酔科専門医試験・周術期管理チーム試験対策としても頻出の計算である.

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