☢️ Sv(シーベルト)とGy(グレイ)って何が違うん?🤔

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はじめにざっと

 Sv(Sievert)もGy(Gray)もどちらも放射線に関連した測定単位なのですが・・では何が違うのでしょうか?ちなみにどちらも放射線研究の分野で功績を残した人の名前です.シーベルトさんはスウェーデンの医師,グレイさんはイギリスの物理学者です.どちらの量も国際単位系では 1 J/kg を単位とします(量の意味が違うだけ).

簡単に言うと・・・

  • グレイ(以下Gy)は「放射線が物質に(生体を含む)吸収したエネルギーの量(=吸収線量)」です.
  • シーベルト(以下Sv)は「放射線が生体に与える影響の“効き具合”を見積もるために重み付けした線量」で,具体的には放射線の種類ごとの重み(放射線加重係数 w_R)と臓器の感受性(組織加重係数 w_T)を掛け合わせた等価線量・実効線量に用いる単位です.
    • 個々人の正確な発がん確率を直接示す“危険度の単位”ではなく,放射線防護のための規格化指標です).

 そのため,主に医療者の放射線被曝について話す際には,癌患者さんに照射する際には照射された組織にどれだけのエネルギー(組織への攻撃力)が吸収されたかを測るためにGy,その被曝のリスク(確率的影響の指標)を評価するためにSvを用います.(粒子線治療など特殊な場面ではRBEを考慮した表記が使われることもありますが,基本はこの使い分けです).

さらにくだけた例えをすると(あまり良くない例えかもしれませんが笑)

  • 人を殴る純粋な力がGy.
  • 殴った場所が受ける影響がSv.

 顔面や急所など軽いダメージでも大きなダメージ・影響を受ける部位もあれば,お尻のようにある程度強い力で殴られても大して影響を受けない強い場所,同じ力で殴っても「効かねーよ」という場所があると言うことですね.(学術的には“力”=Gyに,放射線の種類や臓器ごとの“効きやすさ”という重み w_R・w_T を掛けてSvに換算しているイメージです).

 ここを踏まえると,確率的影響や確定的影響などの概念が理解しやすくなります.特に周術期管理チーム試験等では医療者の放射線被曝予防について問われますので,日頃の臨床に活かす意味でもしっかりと理解しておきましょー.

♦️ グレイ(Gray:Gy)👽

 グレイと聞くと某ビジュアル系グループや,もっと古いとアメリカで捕えられたとされる写真で有名な某宇宙人,勉強熱心な方やアメリカのドラマが好きな人には某解剖学教科書の名前を思い浮かべるかもしれません笑.

 上記の通り,グレイ(以下Gy)とは放射線が物質に吸収されたエネルギーの量(吸収線量 D)のことで,例えば速度のように純粋な物理量の単位です.照射した組織にどのような影響を与えるか(そのスピードで衝突した場合に車や衝突したものがどうなるかなど)は関係ありません.1 Gy=1 J/kg.放射線治療の処方や,確定的影響(組織反応)の評価で使います.

♦️ シーベルト(Sievert:Sv)👨🏻‍⚕️

 
 上記の通り,シーベルト(以下Sv)とは“放射線の与えるエネルギーの危険度”…とざっくり言いたいところですが,厳密には“重み付けした線量”です
 等価線量 H_T(Sv)=Σ〔w_R × D_{T,R}(Gy)〕実効線量 E(Sv)=Σ〔w_T × H_T〕という関係で求めます.X線・γ線・β線は w_R=1,α線は w_R=20,中性子はエネルギー依存で可変です.同じ 1 Gyでも放射線の種類や当たった臓器によってSvが大きく変わるのがミソです(“ヒョロヒョロパンチでも当たったのが眼球なら効く”のと同じ). 

実効線量(E)は集団・職業被ばくの防護設計や規制のための指標で,個々の患者さんの正確な将来リスクを数値化する用途には向きません

📝 まとめ

  • Gy=吸収線量(物理量)Sv=重み付けした線量(防護量).どちらも J/kg
  • 確定的影響の評価・治療処方→Gy確率的影響の管理・防護→Sv(等価・実効)
  • w_R(放射線の種類),w_T(臓器の感受性)で同じGyでもSvが変わる(X線=1,α=20,中性子は可変).
  • 実効線量は“個人リスクの予言”用ではない(防護・管理のための指標).

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