まっすー


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📝 問題リスト
🤔 ARDSの基礎知識(▼)
- 📘 ARDSの診断基準(Berlin定義)について説明してください
- 📘 ARDSの胸部画像所見の特徴を述べてください
- 📘 ARDSの原因疾患を挙げてください
🤔 ARDSにおける人工呼吸管理(▼)
- 📘 open lung approachとは何ですか?
- 📘 ARDSでも用いられる自発呼吸を温存した換気モードを挙げてください
- 📘 ARDSに対する肺保護換気の初期設定を述べてください
- 📘 ARDSにおける酸素化の目標値を述べてください
- 📘 低一回換気量管理による問題点と対策を述べてください
- 📘 ARDS Network ProtocolにおけるPEEP/FIO₂テーブルの2パターンについて,それぞれの利点と欠点を説明してください
- 📘 ARDSに対する人工呼吸器管理で,設定以外の注意点を挙げてください
👥 はじめに



ARDSも術後によく見ますね



外科の消化管穿孔など激しい症例では敗血症ですでにARDSを発症している症例や,術後に発症することがよくあるね



呼吸状態は悪いし循環は不安定だし,いつも大変です.術後も大変だと思うけど



とりあえず診断規準と肺保護換気の設定は覚えておこう
Keywords
急性呼吸促迫症候群 ARDS 肺保護換気 open lung approach
日本呼吸器学会(公式ページ)
🤔 ARDSの基礎知識
📘 ARDSの診断基準(Berlin定義)について説明してください
- 2012年に提唱されたBerlin定義では,以下の4項目をすべて満たすものをARDSと定義します.
- 発症時期:既知の臨床的誘因(肺炎,敗血症,誤嚥など)から1週間以内に発症,または呼吸器症状の新規出現・増悪
- 画像所見:胸部X線またはCTで両側肺野の陰影であり,胸水,葉または肺全体の無気肺,結節のみでは完全には説明できないもの
- 肺水腫の原因:心不全や輸液過負荷のみでは説明できない呼吸不全(心原性の可能性がある場合は心エコーなどで客観的に除外)
- 酸素化障害:PEEPまたはCPAP ≧ 5 cmH₂Oの条件下で P/F比 ≦ 300.mild(200 <P/F ≦ 300),moderate(100 <P/F ≦ 200),severe(P/F ≦100)に分けられます.
補足・解説
- 詳細は上記ガイドライン参照
- 画像や酸素化の数値だけで機械的に診断するのではなく,心原性肺水腫など他の原因を適切に鑑別した上での臨床的総合判断が必要です.
- 重症度が上がるほど死亡率が高くなることが知られており,Berlin定義の検証研究では軽症で約25〜30%,中等症で約30〜35%,重症で約40〜45%と報告されています(数値は研究や対象集団により幅があります).中等症〜重症では腹臥位療法の検討,重症ではECMOの適応検討などが行われます.
- Berlin定義以前は,AECC基準(1994年)が使用されていました.AECC基準ではP/F比 ≦ 200をARDS,P/F比 ≦ 300をALI(急性肺損傷)と区別していましたが,Berlin定義ではALIの概念がmild ARDSに統合され,重症度分類が導入されました.
- また,AECC基準ではPAWP ≦ 18 mmHg(肺動脈楔入圧)が必要でしたが,Berlin定義ではPAWP測定の代わりに臨床的評価による心原性肺水腫の除外に変更されています.
- 周術期では心機能低下や輸液過多も併存しやすいため,心原性の病態とARDSが重なることも珍しくありません.心エコーなどで心原性成分を評価しつつ,Berlin定義を満たす非心原性肺水腫としてのARDSの有無を総合的に判断することが重要です.
📘 ARDSの胸部画像所見の特徴を述べてください
- 両側性のびまん性浸潤影(すりガラス影〜浸潤影)が特徴的です.
- 心拡大や胸水が存在してもよいですが,それらだけでは完全には説明できない両側性の陰影が必要です.
- 重力依存性に背側優位の分布を示す傾向があり,気管支透亮像(air bronchogram)を伴うことがあります.
補足・解説
- 胸部CTでは,背側(重力依存性領域)に浸潤影が,腹側(非依存性領域)にすりガラス影が分布するパターンが典型的です.
- 重力依存性の濃度勾配は,リクルートメント手技や腹臥位療法の適応を考える上でも重要な所見です.ただし,ARDSの原因(肺炎型か,敗血症型かなど)によって画像パターンは異なり,必ずしも均一な所見を呈するわけではありません.
📘 ARDSの原因疾患を挙げてください
- 直接的な肺損傷(肺炎,誤嚥,吸入障害,肺挫傷など)と,間接的な肺損傷(敗血症,外傷,急性膵炎,大量輸血,熱傷など)に大別されます.
- 最も頻度の高い原因は肺炎と敗血症です.
補足・解説
- 直接損傷型(pulmonary ARDS)は肺胞上皮が直接障害されるタイプで,間接損傷型(extrapulmonary ARDS)は全身性の炎症反応を介して血管内皮が障害されるタイプです.一般的にextrapulmonary型の方がリクルートメント手技への反応が良いとされています.
- 周術期では,誤嚥,大量輸血(TRALI:輸血関連急性肺障害との鑑別も重要),敗血症などが原因として特に重要です.
🤔 ARDSにおける人工呼吸管理
📘 open lung approachとは何ですか?
- 虚脱した肺胞をrecruitment maneuver(RM)で再開通させ,適切なPEEP titrationで再虚脱を防ぐことで肺傷害を予防する換気戦略です.
- 無気肺部位での繰り返しの開通・虚脱と,それに伴う炎症性メディエーターの放出を軽減する効果が期待されます.
補足・解説
- RMの実施中は一時的に胸腔内圧が大きく上昇するため,静脈還流の減少による血圧低下が高頻度に生じます.循環動態の慎重なモニタリングが不可欠で,循環動態が不安定な症例ではRMの適応を慎重に判断する必要があります.
📘 ARDSでも用いられる自発呼吸を温存した換気モードを挙げてください
- APRV/BILEVEL(気道圧開放換気),CPAP+PSV(圧支持換気)などがありますなどがあります.
- ただし,重症ARDSの急性期(特にP/F比が低い段階)では,これらの自発呼吸温存モードは第一選択とはなりません.標準的にはARDS Networkプロトコルに基づくvolume controlベースの低一回換気量管理が基本です.
補足・解説
- 各モードの詳細は人工呼吸器管理のページを参照
- 重症ARDSの急性期(特にP/F比が低い段階)では,患者自身の努力呼吸により過大な経肺圧(transpulmonary pressure)が発生し,肺傷害を悪化させる可能性が指摘されています.これはPatient Self-Inflicted Lung Injury(P-SILI)と呼ばれ,近年注目されている概念です.
- ACURASYS試験では,中等症〜重症ARDSの初期48時間において筋弛緩薬の持続投与による自発呼吸の抑制が予後を改善した可能性が示されました(ただし,その後のROSE試験では有意差は確認されていません).
- そのため,重症ARDSの急性期では深い鎮静+短期間(48時間程度)の筋弛緩による完全調節呼吸でP-SILIのリスクを回避しつつ肺保護換気を徹底し,改善に伴い自発呼吸を温存したモードへ段階的に移行するアプローチが一般的です.
- また,長期間の持続筋弛緩はICU-acquired weakness(ICU獲得性筋力低下)のリスクがあるため,漫然と継続しないよう注意が必要です.
- APRV/BiLevelについては機種依存性や施設ごとの習熟度の差が大きく,明確な予後改善エビデンスも限定的です.
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