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♦️ Introduction
近年,欧米を中心にVOCAL-Pennスコアは肝硬変患者の手術リスク評価における「新たなスタンダード」として広く導入されています.
一方で,日本ではまだ認知度が高いとは言えず,MELDスコアやChild-Pughが主流のままという現状があります.
しかし,周術期に肝疾患患者を扱う麻酔科医や周術期管理チームにとって,このスコアの概念を理解しておくことは今後重要になってくると思われます.
MELDは慢性肝疾患の重症度評価には有用ですが,手術リスクの予測には限界があるとされています.VOCAL-Pennスコア は,こうしたギャップを埋めるために開発された,より実践的で精度の高いツールで注目されています😊
💡 VOCAL-Pennスコアの特徴
このモデルはペンシルベニア大学の研究グループ(VOCAL)により開発され,手術を受ける肝硬変患者を対象とした大規模データから導かれています.
従来のスコアと異なり,「手術の種類」と「患者の全身状態」を組み合わせてリスクを予測します.特徴は以下の通り⤵️
- 予測精度が高い:MELDやMELD-Naよりも30日・90日死亡率の予測に優れる
- 広いMELD範囲で有効:MELD 20以上の重症例でも信頼性が保たれる
- 個別化された評価:手術の侵襲度や緊急度も加味してリスクを算出
🔷 臨床での使い方
最新の周術期管理・肝疾患ガイドラインでは,肝硬変患者の術前評価にVOCAL-Pennスコアの使用が推奨されています.
これにより.以下のような臨床判断がより明確になります👇
- 手術の妥当性を評価(本当に手術すべきか?)
- 術前最適化の必要性(栄養状態、腹水、肝性脳症のコントロールなど)
- 術後モニタリングの強度(ICU管理が必要かどうか)
- 患者・家族への説明(現実的な予後・合併症リスク)
オンライン上で利用できるVOCAL-Pennスコア計算ツールでは,患者のデータ(年齢,ビリルビン,アルブミン,ASA分類,手術の種類など)を入力するだけで,数秒で死亡リスクが算出され,とても便利です😊
💡 Take-Home Message
- VOCAL-Pennスコアは、MELD単独では見えにくかった「手術+全身状態」の影響を統合的に評価し、肝硬変患者の周術期リスクをより精密に予測できる新しい標準ツールです.
- 日本での普及はまだまだのようですが,今後注目されるかもしれません.
📚 References
- VOCAL-Penn Liver Outcomes Research Group
- The online calculator(VOCAL-Penn)
- Mahmud N, Fricker ZP, Hubbard RA, Ioannou GN, Lewis JD, Taddei TH, Rothstein KD, Serper M, Goldberg DS, Kaplan DE. Risk prediction models for post-operative mortality in patients with cirrhosis. Hepatology. 2021 Jan;73(1):204-218. doi: 10.1002/hep.31558. Epub 2020 Dec 10. PMID: 32939786; PMCID: PMC7902392.
