👉👉 🇺🇸 All Posts 🇬🇧 / 🇯🇵 記事一覧 🇯🇵 👈👈
♦️ はじめに
4歳の子どもが先週まで風邪をひいていたけれど,今はすっかり元気😊
さて,明日の扁桃摘出術——予定通り行っていいでしょうか?🤔
これは小児麻酔で非常によくあるジレンマです.
子どもは見た目の回復が早いものの,気道の炎症や過敏性は思った以上に長く残ります.
咳が止まっても,麻酔導入中に突然の喉頭痙攣や気管支痙攣を起こすことも.
「風邪が治ったように見える」だけでは,まだ安心できません(待ちすぎても,またすぐに風邪引いたりして困ることもありますが・・・😅)
💡 「2週間ルール」とは
上気道感染(URTI)後の手術は,症状が完全に消えてから少なくとも2週間は延期する.
これが国際的にも推奨されている基本ルールです.
エビデンスでは,風邪後2週間以内に麻酔を受けた子どもは,喉頭痙攣・気管支痙攣・酸素飽和度低下などの呼吸器合併症リスクが2〜7倍に上昇すると報告されています.
症状が治っても,気道上皮はまだ炎症状態にあり,挿管や吸引などの刺激で容易に反射性の痙攣を起こします.
この「気道の過敏期」は2週間を過ぎる頃にようやく落ち着き,それ以降は合併症発生率が明らかに低下します.
⚠️ さらに延長すべきケース(3〜4週間)
経過によっては,より慎重な延期が必要な場合もあります.
以下のような場合は,3〜4週間の延期を検討されます.
- 高熱(38.5℃以上)を伴った風邪 🌡️
- 膿性鼻汁や緑色の鼻水(細菌感染の併発が疑われる)
- 湿性咳嗽(痰がからむ咳)や胸部ラ音
これらは下気道まで炎症が及んでいるサインで,完全な回復にはさらに時間がかかります.
早期に手術を行うと,術中の気管支痙攣や換気不良を引き起こすリスクが高まります.
👶 ハイリスク群ではさらに注意
症状だけでなく,基礎背景や環境因子も重要です.
以下のような子どもでは,症状が軽くてもリスクが高いことを意識しましょう.
- 2歳未満(気道反射が未成熟)
- 喘息や慢性呼吸器疾患がある
- 睡眠時無呼吸症候群(OSA)を伴う
- 早産児の既往
- 家庭内喫煙曝露 🚭 👉 子どもさんがいる家庭では禁煙したほうがいいですね!
こうした背景がある場合,たとえ軽い咳や鼻汁が残っているだけでも,手術延期を検討する場合があります(ただのアレルギー性鼻炎であればOKですが).
✅ 実際の麻酔管理のポイント
緊急や準緊急の手術で延期が難しい場合,もちろん手術を行わざるを得ませんが,できるだけ気道刺激を減らす麻酔法を選択します.
- ラリンジアルマスク(SGA)>気管挿管:気道合併症は約1/10に低下
- プロポフォールTIVA(静脈麻酔):揮発性吸入麻酔よりも刺激が少ない
- 深麻酔下抜管(deep extubation):条件を満たす症例では有効
- 吸引・喉頭展開は丁寧に,浅麻酔で行わない
術後もPACU(回復室)や病棟でのモニタリングをしっかりと行い,呼吸状態の変化に早く気づける体制を整えましょう☝️
📝 まとめ(Take-Home Message)
- ⏳ 症状消失後2週間が安全な目安
- ⏳ 重症感染(発熱・湿性咳・膿性鼻汁)は3〜4週間待機
- 👶 高リスク児(2歳未満,喘息,OSA,喫煙曝露など)は慎重に
- 💉 不可避な場合はSGA・TIVAなど刺激を減らす麻酔法を選択
- 🫁 短い延期が、長い安心につながる
🔗 Related articles
- 追加予定
