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♦️ Introduction
「明日手術予定の患者さん,血糖値が340mg/dL…😫このまま進めても大丈夫?」
周術期の血糖管理は,合併症を左右する重要な要素です.適切なコントロールができていないと,感染や創傷治癒の遅延など,様々な合併症のリスクがあり,術後経過に大きく影響します⚠️
💡 なぜ血糖管理が大切?🤔
周術期は,ストレスホルモンの分泌や摂食制限により,血糖が乱れやすくなります.
高血糖が続くと,次のような合併症が起こりやすくなります.
- 創部感染(白血球機能の低下)
- 創傷治癒遅延
- 心血管イベント(特に冠動脈疾患合併例)
- 浸透圧利尿による脱水
- 急性腎障害
術後わずかな時間の高血糖でも,創傷治癒や感染リスクに影響することが知られています.そのため,麻酔科医は術中に血糖測定を行って,血糖値が上がっていたら(例えば>200mgなど)いそいそとインスリンの準備したりしてますよね?😊
⚠️ 低血糖のリスクにも注意!
周術期では「高血糖」だけでなく「低血糖」も重大な合併症です.
麻酔中は交感神経症状(冷汗・振戦・動悸など)がマスクされやすく,低血糖を見逃しやすいという問題があります(特にインスリン使用時).
さらに,意識障害やけいれん,徐脈・血圧低下など,麻酔合併症と区別しづらい症状で現れることもあります.
- 絶食時間の延長
- 経口血糖降下薬の影響(特にSU薬)
- インスリン投与過量(特に持続投与中)
☝️これらが重なると重篤な低血糖を引き起こすため,過度な血糖降下を避けることも大切です。
⚙️ 周術期の目標値と管理のポイント
主要なガイドラインでは,周術期の血糖値を140〜180 mg/dL に維持することが推奨されています。
この範囲は,厳密すぎず,安全性と有効性のバランスが取れた値です.
つまり,「厳密な正常値」ではなく「安全な中庸」がポイントです。
前述のように,低血糖は麻酔中に見逃されやすいため,過度な降下を避け,安定したコントロールを目指しましょう.
✅ 臨床上でのポイント
術前
時間があればHbA1cを確認し,経口血糖降下薬は種類により中止時期が異なる(例:SGLT2阻害薬は数日前,ビグアナイド系やSU薬は前日中止など).
詳細は別記事で扱いますが,薬剤特性に応じた休薬タイミングが重要です👍
術中
1〜2時間ごとに血糖測定を行い,血糖上昇時は静注インスリンの単回投与や持続投与を行います(特に大手術).施設ごとのインスリンスライディングスケールを参考に用いることが多いです,
特に高齢者や肝腎機能障害患者では要注意⚠️
術後
経口摂取再開までは頻回測定し,スライディングスケールを使用.ストレス反応の減少に伴うリバウンド低血糖にも注意.内科系主治医とも連携を🤝
💬 まとめ(Take-Home)
- 周術期血糖は140〜180 mg/dLを目安にコントロール
- 周術期は高血糖による感染・創治癒遅延だけでなく,低血糖の見逃しリスクや薬剤特性にも注意.
- 経口薬の休薬時期とスライディングスケールの運用を理解し,バランス重視の血糖管理を行いましょう😊
周術期管理チーム試験対策・麻酔科専門医試験対策にも頻出のテーマです☝️
📚 References & Further reading
- American Diabetes Association (ADA) “Standards of Medical Care in Diabetes—2024”:2024;47(Suppl 1):S295-S304.
- Society for Ambulatory Anesthesia. Updated Consensus Statement on Perioperative Blood Glucose Management in Adult Patients With Diabetes Mellitus Undergoing Ambulatory Surgery. Anesth Analg. 2024 Aug;
- 術式や患者背景により目標範囲を細かく記載。大規模手術や重症例に対する推奨を明示。
- Joint British Diabetes Societies Guidelines, NICE guidelines (UK)
- 合理的な血糖管理目標やCGM導入,SGLT2阻害薬の周術期管理などを詳述しています.
📈代表的な大規模臨床研究・メタアナリシス
- NICE-SUGAR trial (NEJM, 2009)
- ICU入室患者6104例を対象とした大規模RCT。厳格な血糖管理(81–108 mg/dL)は従来目標(≤180 mg/dL)に比べて死亡率増加および重篤な低血糖リスク上昇を報告し,目標値の安全域設定に大きな影響を与えた研究.
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