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♦️ はじめに
肝硬変の患者さんが緊急手術……麻酔科医はどのように麻酔薬を選んでいるのでしょうか?どれでもいい?😅
確かに,現代の麻酔薬は肝機能障害で絶対に使ってはダメ🙅,という薬はありません.が,注意点はあり,知っておく必要があります.
肝機能が低下した患者では,薬物代謝や排泄が遅れ,覚醒遅延や出血傾向などの合併症が起こりやすくなります.
この記事では,レミマゾラムやロクロニウムなど近年頻用される薬剤も含め,肝疾患患者での安全な麻酔薬選択と投与調整のポイントを整理します.
💉 安全な麻酔薬😊と避けるべき薬🙅
肝臓は多くの麻酔薬の代謝に関与しており,肝機能障害があると薬物クリアランスや感受性が大きく変化します.
✅ 推奨される薬剤
- レミフェンタニル:肝臓ではなく血漿エステラーゼで分解され,肝機能障害例でもクリアランスは保たれます.重度肝障害でも通常量で使用可能です.循環抑制作用には注意.
- セボフルラン・デスフルラン:肝代謝率が極めて低く,覚醒も速いため,肝障害例における標準的な揮発性麻酔薬です(イソフルランも良いけど,覚醒が・・・😅)
- プロポフォール:腎臓や肺でも代謝されるため比較的安全です.ただし,明確な減量率はガイドライン上定められていませんが,臨床的には感受性の上昇・クリアランス低下を考慮し,25〜50%程度の漸増投与が実際的とされています(UpToDate 2025).
- レミマゾラム:主に肝内カルボキシルエステラーゼで代謝され,軽〜中等度肝障害(Child-Pugh A/B)ではほぼ通常使用可能です.ただしChild-Pugh Cではクリアランスが約40%低下し,作用延長に注意が必要とされています.投与速度を落とし,BISモニタリングを行いながら,投与速度を調整することが望ましいです。
💪 筋弛緩薬:ロクロニウム vs ベクロニウム
どちらもアミノステロイド系の非脱分極性筋弛緩薬ですが,代謝経路と臨床上の扱いやすさに差があります.
| 特徴 | ロクロニウム | ベクロニウム |
|---|---|---|
| 主な排泄経路 | 肝排泄優位(約80%)+腎排泄一部関与(10〜20%) | 肝代謝+胆汁・腎排泄 |
| 作用発現 | 速い(1〜2分) | やや遅い(3〜5分) |
| 作用持続 | 肝障害で延長するが予測可能 | 延長・蓄積しやすい |
| 代謝産物 | ほぼなし | 有効代謝物(3-desacetyl vecuronium)→作用延長リスク |
| 拮抗薬 | スガマデクスで迅速・確実に拮抗可能 | スガマデクスでも拮抗に時間を要する場合あり |
| 現状 | 日本:広く使用 | 日本:販売終了(2023年)/海外:一部国で継続使用 |
| 臨床的印象 | 安定・確実な拮抗が可能 | 肝障害例では蓄積リスクが高く、現在は臨床的に使用されない |
💡 まとめると:
- ベクロニウムは肝代謝と活性代謝物の影響で作用延長・蓄積が顕著であり,現在,日本ではすでに販売終了となっています.
- ロクロニウムはスガマデクスによる迅速な拮抗が可能で,肝障害例でもChild-Pugh A/Bではほぼ通常使用可、Cでは延長傾向あり調整要です(それでも筋弛緩モニタリングを行っていればスガマデクスで安全に拮抗可能👍).
👉作用時間延長を想定し,TOFモニタリング下での管理が推奨されます.
⚖️ 投与量調整と覚醒遅延
中等度〜重度の肝機能障害では,薬剤の蓄積と覚醒遅延が起こりやすくなります.
プロポフォール,レミマゾラム,ロクロニウムはいずれもChild-Pugh A/Bでは通常使用可能ですが,Cでは作用延長に注意し,漸増投与または間隔調整を行います.
BISやTOFモニタリングを併用し,麻酔深度,筋弛緩状態を維持します.
🔹 補足:出血リスクと神経ブロック
肝不全では凝固因子の合成が低下し,出血リスクが高まります.PT-INR,血小板数,フィブリノゲンの確認は必須です.
重度の血小板減少や凝固障害がある場合は,硬膜外麻酔,脊髄くも膜下麻酔や一部の神経ブロックは避けるべきです.
📝 まとめ:Take-Home Points
- レミフェンタニルセボフルラン,デスフルラン,プロポフォール,レミマゾラムは比較的安全.
- プロポフォールの減量は明確基準なしだが,25〜50%漸増投与を行うこともある.
- ロクロニウムは肝排泄優位(腎も一部関与).Child A/Bでは通常可、Cでは延長に注意.
- ベクロニウムは活性代謝物により延長リスクが高く,日本では販売終了(海外では一部継続).
- ハロタンは現在臨床使用されてない.
- 高度な凝固異常がある場合は区域麻酔(硬膜外麻酔・深部神経ブロックなど)は避ける.
