📌 プロポフォール注入後の『痛たたた・・😫』”を減らすには?〜エビデンス的に効果のある対策はこれ😊 -Quick Tip-

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Contents

♦️ はじめに

麻酔導入時,プロポフォールを注入した瞬間に患者が顔をしかめる,あるいは「あ,痛,いたたたた・・😫」——この血管痛は臨床現場でよく遭遇する場面ですよね!

実際,何も対策をしなければ患者の約6割が痛みを訴え,そのうち4割近くが強い痛みを経験するとされています.痛みを軽減するための工夫は,単なる快適性の向上だけでなく,スムーズな麻酔導入と患者の協力を得るためにも重要なポイントとなります.

♦️ プロポフォールの血管痛はなぜ起こる?🤔 -発生機序と頻度-

プロポフォールは脂肪乳剤製剤であり,その化学構造に含まれるフェノール基が血管内皮を直接刺激することに加え,ブラジキニンの遊離を促進することが痛みの主因と考えられています.

特に手背静脈のような細い血管では血流が遅く,薬剤が希釈されにくいため,局所的な刺激が強く出やすくなります.

重要ポイント: 血管の太さと血流速度が、痛みの強さを左右する主要因です。

補足
  • 中鎖脂肪酸(MCT)を含む改良型プロポフォール製剤(国内ではディプリバン®など)は,従来型と比較してやや痛みが少ない傾向があります(相対リスク0.75).
  • しかし,製剤変更のみでの効果は限定的であり,他の予防策と組み合わせることが重要です.

♦️ 最も効果的な対策は? :注射部位の選択とリドカイン

🔷 注射部位の選択がカギ

臨床現場で最も確実に効果が期待できる対策は,注射部位の選択です.肘正中静脈のような太い血管を選択すると.痛みの発生率は約14%まで低下します.これは手背静脈を使用した場合の約60%と比べると大幅に減少しており,相対リスクは0.14と報告されています.血流が速いため薬剤が速やかに希釈され,局所への刺激が軽減されることが理由と考えられます.

・・といっても,麻酔科医が肘正中静脈に第一選択とすることはほぼないでしょうし,病棟ですでにそこにとられていたりすると,いい顔はしないと思います😅(術中だけならまぁいいですけど・・)

日本の手術室では,術野の確保やレイアウトの関係で手背静脈や前腕の静脈を選択することが多くなりますが,術前診察の段階で血管を評価し,可能な限り太い静脈を確保しておくことが痛み予防の第一歩となります.

術前の静脈路確保は,病院によって随分異なると思います.
病棟看護師さんがとったり,主治医がとったり.研修医がとったり,朝一の手術のみ麻酔科医が手術室でとったり(それ移行は病棟で),などなど色んなバリエーションがあります.

🔷 リドカインの使い方:混合投与vs前投与,どちらが良い?

結論から言うと,リドカインが最もエビデンスが確立された薬理学的予防法です.通常20〜40mg(2%製剤で1〜2ml)を使用しますが,投与方法には2つの選択肢があります.

前投与法: プロポフォール注射の直前にリドカインを静注する方法

混合投与法: プロポフォールにリドカインを直接混合してから注入する方法

大規模なシステマティックレビューの結果,両方法とも同程度の効果を示しており,強い痛みを訴える患者の割合を,対策なしでは約4割のところ,1割強まで抑えることができるようです.

ただし,両方法の疼痛軽減効果は同等であるものの,下記のように,患者安全の観点から前投与法を優先することが望ましいと考えられます.

⚠️ 混合投与時の重要な注意点

  • プロポフォールとリドカインの混合は脂質粒子径を増大させ,エマルジョンを不安定化させることが知られています.これにより塞栓のリスクが理論的に懸念されるため:
    • 混合した製剤の長時間保存は避けてください
    • 混合する場合は投与直前に行い,速やかに使用する
    • 安全性を考慮すると前投与法を第一選択とすることが推奨されます
料理に例えると・・・🍳

前投与法と混合投与法の違いを料理に例えると分かりやすいかもしれません.

  • 前投与法は,まず少量の塩(リドカイン)で下味(血管内皮の麻酔)をつけてから,メインの食材(プロポフォール)を投入する手法です.
  • 混合投与法は,メイン食材に塩を混ぜてから投与する手法です.効果は同じですが,混合によって食材(プロポフォールエマルジョン)の品質がわずかに変化するリスクがあるため,前投与法の方が「安全な標準的手順」として推奨されます.

☝️ さらに効果を高める工夫: リドカインの前投与後,駆血帯で30〜60秒間静脈を閉塞させてからプロポフォールを注入すると,痛みの軽減効果がさらに向上します(相対リスク0.29).ただし,手技がやや煩雑になるため,ルーチンでの実施は限定的です(普通は手間かかるのでここまでやらないでしょう😅).

♦️ その他の薬物:オピオイド・ケタミン・NSAIDsの効果は?

リドカインが何らかの理由で使用できない場合,他の方法として次のようなものがあります.

🔹 オピオイド前投与

  • フェンタニルなど少量のオピオイドを事前に投与すると,痛みの発生率を約半分に減らすことができます(相対リスク0.49).ただし,呼吸抑制のリスクに注意が必要です.

🔹 ケタミン前投与

  • 0.1mg/kgのケタミンも中等度の効果を示します(相対リスク0.52).

🔹 アセトアミノフェン

  • 静注アセトアミノフェンも疼痛軽減効果を示していますが,リドカインとの効果の優劣については研究間で結果が一致していません.
  • 2025年の最新RCTではリドカイン,フェンタニル,アセトアミノフェンの間で統計的な有意差は認められませんでしたが,過去のメタ解析ではリドカインの方が効果的とされています.

⭐️ そもそもレミフェンタニルをしっかり流してると・・・

  • いろいろ紹介しましたが,レミフェンタニルをしっかり時間をとって流していると,血管痛が問題にならないことが多く,実際には血管痛対策は行わない施設も多いと思います(うちも😅)


📝 まとめ:Take Home Messages

プロポフォールの血管痛(発生率約60%)は,太い血管の選択とリドカインの適切な使用により発生率を15〜30%程度まで低減できます.エビデンスに基づく複数の予防戦略を組み合わせることで,患者満足度と麻酔導入の質を大きく向上させることができます.

🔑 Key Points

  • 最優先の対策: 可能な限り太い血管から投与する(痛み発生率を約60%→14%に低減)
  • 💊 リドカインの使用: 20-40mgを前投与(推奨)または混合投与(効果は同等だが,安全性の観点から前投与を優先)
    • ⚠️ 安全性の注意: リドカイン混合投与では脂質粒子の不安定化に注意,長時間保存は避ける
  • 📋 駆血帯の併用: リドカイン前投与後に30-60秒の静脈閉塞でさらに効果向上(相対リスク0.29)👉手間がかかる.
  • 🔄 代替戦略: リドカイン禁忌時は少量オピオイドやケタミン0.1mg/kgが次善策.

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⚠️ 免責事項

  • 本記事は医学教育を目的とした情報提供であり,医学的な助言や治療の代替となるものではありません.
  • 実際の臨床判断は,最新のガイドライン,個々の患者の状況,および担当医の判断に基づいて行ってください.
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