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♦️ はじめに
周術期末梢神経障害(perioperative peripheral nerve injury: PNI)は,手術や麻酔に関連して発生する神経損傷のことをさします☝️.発生率自体は1%未満とされていますが,麻酔関連の医療訴訟ではなんと約12%を占めているとされています😳!(1).つまり,頻度は低くても一度起きると大きな問題になりやすい合併症ということです。
特に好発部位として押さえておきたいのが,尺骨神経,腕神経叢,総腓骨神経の3つです.これらの神経は解剖学的に骨突出部や体位固定具による圧迫を受けやすい特徴があるため,試験でも臨床でも重要なポイントになります(尺骨神経に限っては,原因不明なものも多いですが・・).
本邦のデータも見ておきましょう.泌尿器科手術を対象とした調査では,麻酔科管理症例35,400例中59例(約0.2%程度)で手術体位関連損傷(surgical positioning injury: SPI)が報告されており,そのうち約3割が神経・血流障害だったとされています(2).
周術期管理チーム試験や麻酔科専門医試験でも頻出のテーマですので,体位と神経障害の関係,リスク因子,予防策についてはしっかり押さえておきましょう!☝️
本記事では,最新のエビデンスに基づいて,周術期PNIの発生機序から予防・管理までを包括的に解説していきます😊.
♦️ 周術期末梢神経障害の疫学
周術期PNIの発生率は,対象となる手術や調査方法によって大きく異なります.一般的な外科手術全体では1%未満とされていますが,心臓外科や脳神経外科などの特定の領域では発生率が上昇することが報告されています(1)(3).
単一施設での大規模後ろ向き研究では,380,680症例中112例(約0.03%程度)でPNIが確認されています(3).ただし,後ろ向き研究の性質上,実際には過小評価されている可能性があることも頭に入れておいてください.
医療訴訟における影響も見逃せません.クローズドクレーム(損害賠償請求)分析によると,PNIは全身麻酔関連請求の約12%を占めています.そのうち腕神経叢損傷が約36%,尺骨神経損傷が約30%と,この2つで全PNI請求のおよそ3分の2を占めているとされています😫(1).
興味深いのは,これらの請求の91%において「適切な麻酔ケアが行われていた」と評価されている点です.つまり,標準的な管理を行っていてもPNIは発生しうるということを示しています.
好発神経についてもう少し詳しく見ていきましょう.上肢では尺骨神経と腕神経叢,下肢では総腓骨神経が代表的です.
尺骨神経は肘部管において浅在しており,肘の屈曲や前腕の回内位での圧迫を受けやすい解剖学的特徴があります.尺骨神経損傷の発生率はおおむね1:200〜1:400程度とされ,男性に多い傾向があります(男女比約3:1)(4).この性差は,男性では肘部管周囲の脂肪組織が少なく,尺骨神経溝の結節が女性より大きいため圧迫を受けやすいことが一因と考えられています.
♦️ 病態生理と発生機序
周術期PNIの発生機序は多因子性であり,単一の原因で説明できないことが多いです.主要な機序としては,圧迫,牽引(伸展),虚血,および炎症が挙げられます(1)(4)(5).
🔷 圧迫による損傷
- 神経が骨突出部と固定具の間に挟まれることで生じます.
- 持続的な圧迫は神経栄養血管(vasa nervorum)の血流を障害し,神経内浮腫から軸索輸送障害,さらには重症例ではワーラー変性に至ります.
- ワーラー変性とは,神経が切断されたり,重度の圧迫を受けたりすると,損傷部位より遠位(末梢側)の神経線維が変性・崩壊していくことを指します.
🔷 牽引による損傷
- 神経が過度に伸展されることで発生します.ここで重要な数字を押さえておきましょう.
- 研究によると,神経がわずか5%伸展されると栄養血管の血流障害が始まり,8%で静脈還流が障害され,15%の伸展で神経内血流が完全に遮断されるとされています(4).
- 肩外転や股関節屈曲などの体位でこのような伸展が問題となることが多く,麻酔科専門医試験でも出題されるポイントです.体位調整の際に「なぜそこまで気をつけるのか」がよくわかりますね.
🔷 虚血性の損傷
- 全身性の低血圧や局所的な血流障害によって神経への酸素供給が不足することで生じます.
- 麻酔下では血圧低下や循環血液量減少が起こりやすく,これが神経の脆弱性を高める要因となります.
🔷 ダブルクラッシュ現象とは・・?🤔
さて,ここで重要な概念を紹介します☝️「ダブルクラッシュ現象」です(1)(4).これは,神経の経路に沿って複数の部位で軽度の障害が存在する場合,個々の障害では症状を呈さなくても,それらが重なることで臨床的に明らかな神経障害が発現するという現象です.
例えば,糖尿病による潜在的な末梢神経障害を有する患者では,術中の軽度の圧迫でも症状が顕在化しやすくなります.
🔷 術後炎症性ニューロパチー
また,術後炎症性ニューロパチーという病態も認識しておく必要があります(5).これは機械的損傷とは異なり,免疫介在性の神経微小血管炎によって生じるもので,術後数日から1か月程度以内に発症し,手術部位とは異なる分布の脱力や重度の神経障害性疼痛を特徴とします.
機械的損傷との鑑別が重要であり,炎症性の場合はステロイドなどの免疫療法が有効である可能性があります.
♦️ PNIのリスク因子
🔷 患者因子(糖尿病・高血圧・喫煙・BMI)
周術期PNIのリスクを高める患者因子として,糖尿病,高血圧,喫煙が大規模研究で示されています(3).これらの因子はいずれも末梢神経の血流に影響を与え,神経を損傷に対して脆弱にすると考えられています.
糖尿病は周術期PNIのリスクをおよそ2倍程度高めるとされています(3).糖尿病患者では既存の末梢神経障害の有病率が高く,先ほど説明したダブルクラッシュ現象によって術中の軽度の障害でも症状が顕在化しやすくなるとされています.
高血圧も同様にリスクを約2倍程度に高めます(3).慢性的な血管障害が神経栄養血管の機能を低下させ,虚血に対する耐性が減弱すると推測されています.
喫煙もおよそ2倍程度のリスク上昇と関連しており,微小循環障害がその機序として考えられています.
つまり,「糖尿病・高血圧・喫煙はいずれも約2倍のリスク」と覚えておくとシンプルでよいでしょう.
BMIについては,極端な低値と高値の両方がリスク因子となりえます(4).低BMI患者では骨突出部が目立ち圧迫を受けやすく,高BMI患者では適切な体位固定が困難になることがあります。
既存の神経障害や解剖学的変異も重要なリスク因子です(4).術前に神経症状を有する患者や,関節リウマチなどで関節可動域に制限がある患者では,特に注意が必要です☝️
🔷 手術・麻酔因子(長時間手術・全身麻酔)
手術時間の延長は独立したリスク因子であり,特に2時間を超える手術でPNIリスクが上昇するとされています(5).長時間の同一体位保持は持続的な圧迫や牽引をもたらし,神経障害のリスクを高めます.
大規模後ろ向き研究では,全身麻酔や硬膜外麻酔がPNI発生と統計学的に関連する可能性が示されています(3).全身麻酔下では筋弛緩により保護的な筋緊張が失われ,また患者自身が不快感を訴えることができないため,不適切な体位が持続しやすくなることによると考えられています.ただし,脊髄くも膜下麻酔や末梢神経ブロックとのリスク差については明確な結論はなく,観察研究レベルのエビデンスにとどまります.
特定の外科専門分野もリスクと関連しています.心臓外科,脳神経外科,一般外科,整形外科の手術でPNI発生率が高いことが報告されています(3).これらの手術では体位の特殊性や手術時間の長さが影響していると考えられます.
♦️ 体位別のリスクと好発神経
🔷 仰臥位・トレンデレンブルグ位
仰臥位は最も一般的な手術体位ですが,上肢の神経障害リスクが存在します。特に肩の過度な外転(90度を超える外転)は腕神経叢の牽引損傷を引き起こす可能性があり,注意が必要です(6).特に,若手の先生が助手に入った場合,術野やスペースによっては,自然と手台にもたれかかることがあるので,注意が必要です😡!
トレンデレンブルグ位(頭低位)では,患者の頭側への滑り(cephalad slide)を防ぐために肩当てが使用されることがありますが,これが腕神経叢を圧迫する原因となりえます(6).そのため,急峻なトレンデレンブルグ位では肩当ての使用は可能な限り避けることが推奨されています.
特に,ロボット支援手術などで用いられる急峻なトレンデレンブルグ位(最大45度程度)では,上肢のPNI発生率が0.1%〜3.6%程度と報告されており,体位の角度と時間に注意が必要です(7).しかも長くなることが多いし!😫
近年,ロボット支援手術の普及に伴い,急峻なトレンデレンブルグ位や長時間の砕石位が必要となる症例が増加しています.ダヴィンチ手術などでは最大45度程度の頭低位が用いられることもあり,これらの体位に関連するPNIの予防策についてはさらなるエビデンスの蓄積が求められています.研究デザインや使用されるデバイスの不均一性から,PNIを予防するための最良のアプローチを決定することは現時点では困難であり,施設ごとにエビデンスに基づいたポリシーを策定することが推奨されています(7).
尺骨神経障害は仰臥位で最も多く発生します.肘の過屈曲,前腕の回内位での固定,肘部管への直接的圧迫が主な原因ですが,原因不明の場合のこともあります(4)(6).
🔷 砕石位
砕石位は婦人科,泌尿器科,大腸外科手術で頻用される体位ですが,下肢の神経障害リスク(特に総腓骨神経麻痺)が高い体位です.下肢のPNI発生率は0.2%〜10%程度と報告により幅があります(7).
総腓骨神経は腓骨頭部で浅在しており,レッグホルダーや支持具による圧迫を受けやすい神経です.その他,坐骨神経,大腿神経,閉鎖神経,大腿外側皮神経なども砕石位で障害されうる神経として報告されています(7)(8).
長時間の砕石位保持は下肢コンパートメント症候群のリスクも高めます.本邦の報告では,SPIのうち4例が下肢コンパートメント症候群であり,そのうち3例で減張切開を要する重症であったとされています(2).これは砕石位を使う手術で常に頭に入れておくべき合併症です🤔.
🔷 腹臥位
システマティックレビューによると,腹臥位は有害事象のリスクが最も高い体位とされています(8).腹臥位における有害事象の全体的リスクは0.33程度と報告されており,他の体位と比較して高い傾向があります.日ごろでも腹臥位の手術の担当と聞くと,少し気が重いのではないでしょうか😅.
腹臥位では顔面,眼,頸部への圧迫に加え,上肢の不適切な配置による腕神経叢損傷のリスクがあります.胸部・腹部の圧迫により静脈還流が障害され,頭蓋内圧や眼圧の上昇,さらには術後視力障害(虚血性視神経症など)のリスクも存在します(8).
腹臥位において頭部を中立位ではなく頭低位にすると,結膜浮腫のリスクが有意に上昇することも報告されています.腹臥位の管理は神経障害だけでなく眼合併症も含めて総合的に考える必要があります.
🔷 側臥位
側臥位では,下側の腕に対する腋窩の圧迫が腕神経叢障害の原因となりえます.腋窩枕は腋窩への直接的な圧迫を避け,胸郭を支持するように配置することが重要です(4).ここは実技的にも試験的にも押さえておきたいポイントです.
上側の腕は牽引による腕神経叢損傷のリスクがあり,適切なサポートで中間位に保持する必要があります.また,下側の下肢では総腓骨神経が腓骨頭部で圧迫されるリスクがあり,パッド等による保護が必要です。
♦️ PINの予防策
🔷 上肢の体位管理(肩外転・肘屈曲・前腕位置)
上肢の適切な体位管理は周術期PNI予防の基本です☝️
仰臥位における腕の外転は,90度以内に制限することが推奨されています(6).肩を過度に外転・外旋させると腕神経叢が牽引され,損傷リスクが高まります.
肘関節については,過度の屈曲を避けることが重要です.肘を90度以上屈曲させると尺骨神経溝での圧迫リスクが上昇します(4)(6).
前腕は回外位または中間位で保持することが推奨されており,回内位での完全伸展は尺骨神経の圧迫を引き起こしやすい肢位とされています.
自動血圧計のカフは,原則として上腕(肘窩より近位側)に装着し,前腕など肘窩より遠位への装着は避けることで,尺骨神経や正中神経への間欠的圧迫を減らすことができます(6).これは日常臨床でも意識していると思います😊
また,骨突出部には適切なパッドを使用し,持続的な圧迫を防ぐことが基本となります.パッドを使用する際も,きつく巻きすぎないよう注意が必要です.
🔷 下肢の体位管理(腓骨頭保護・時間制限)
砕石位における下肢の管理では,腓骨頭部の保護が最も重要です.レッグホルダーやサポートの位置を調整し,必要に応じてパッドを使用します(6)(8).
股関節の過度な屈曲は坐骨神経の牽引を引き起こす可能性があるため,快適な範囲を超えて屈曲させないことが推奨されています(6).同様に,ハムストリングスを過度に伸展させる肢位も避けるべきです.
砕石位の持続時間も重要な因子です.2〜3時間以上の砕石位保持後は,一時的に仰臥位に戻して四肢を休ませることが推奨されており,休息時間は最低10分,できれば15分以上が望ましいとされています(8)(なかなか難しいこともあると思いますが・・).長時間手術では定期的に体位を確認し,必要に応じて下肢の位置を調整することが重要です.
弾性ストッキングや間欠的空気圧迫装置(IPC)も,不適切に装着すると腓骨頭を圧迫する原因となりうるため,装着時には神経への圧迫がないことを確認する必要があります(特に折り返していたりする場合).
🔷 術中モニタリングと再評価
術中の体位の定期的な再評価は,PNI予防において重要な要素です.手術開始後も体位がずれることがあり,特に長時間手術やトレンデレンブルグ位では患者が頭側に滑る傾向があります(7).
術中神経生理学的モニタリング(IONM),特に自動化された体性感覚誘発電位(SSEP)モニタリングは,一部の手術でPNIの早期発見と予防に有用である可能性が示唆されています(1).振幅が50%低下または潜時が10%遅延した場合にアラームを発するシステムにより,可逆的な段階での介入が可能となります.ただし,ルーチン使用を支持する強固なエビデンスはまだ不足しており,今後の研究が待たれます.うちにもないです.
術前の「頭からつま先まで,前から後ろまで」のアセスメントと,術後の同様の評価を行うことで,体位関連の有害事象を早期に発見することができます(8).また,具体的な体位,四肢の位置,使用したパッドの種類などを麻酔記録に残すことも推奨されています.
♦️ 術後評価と予後
術後に神経障害が疑われた場合,早期の認識と適切な対応が重要です。多くの患者は麻酔覚醒直後に異常な痛み,脱力感,感覚異常に気づきますが,損傷が明らかになるのは術後数日から数週間後になることもあります(4).
急性の単ニューロパチーは緊急の調査を要します.患者の運動または感覚の異常に関する対応は,直ちに主治医や担当麻酔科医に報告されるべきであり,必要に応じて神経内科医や神経生理学者へのコンサルテーションを行います(4).
🔷 検査の時期の重要性
神経伝導検査(NCS)と針筋電図(EMG)は術後診断の主要な検査ですが,検査のタイミングには注意が必要です.損傷から神経変性が完了するまでに2〜4週間程度の期間があるため,この期間内の検査は偽陰性となりえます(1)(4).確定診断には損傷後3〜4週間程度経過してから検査を行うことで,重症度の区別が可能になることが多いとされています.
一方,受傷後1週間以内の早期NCSは,損傷部位が「体位による圧迫」なのか「手術手技による直接損傷」なのかを区別する局在診断に有用であり,医学的・法的観点から重要な意義があります.
🔷 PNIの予後
予後については神経や損傷の程度によって異なります.
尺骨神経損傷の場合,約半数の症例で6週間程度以内に機能が回復するとされていますが,残りの症例では2年後も障害が残る可能性があります(4).腓骨神経および大腿神経損傷患者の50%以上は1年以内に運動機能が回復したとする報告がありますが,坐骨神経損傷では予後が不良な傾向があります(8).
クローズドクレームの分析では,PNI症例の約39%が一時的な障害,約37%が永続的だが機能障害を残さないものであった一方,24%程度は永続的な障害に至ったとされています(1).
回復しない症例では,理学療法,装具,神経障害性疼痛に対する薬物療法などの対症療法・支持療法が中心となります(4).
術後炎症性ニューロパチーが疑われる場合には,免疫療法が有益である可能性がありますが,治療効果は確立されていません(1)(5).国際的には,筋電図検査で重度の軸索消失が認められ,3〜6か月程度で回復が見られない神経損傷の場合,外科的紹介を検討することが推奨されています(神経剥離術や移行術など)(4).
🤔 よくある質問(FAQ)
🤔 周術期末梢神経障害の発生率はどのくらいですか?
- 一般的な外科手術全体では1%未満,大規模研究では約0.03%程度と報告されています.
- ただし,ロボット支援手術など特殊な体位を要する手術では0.16%から10%程度まで幅があり,手術の種類や体位,手術時間によってリスクは変動します.
- 後ろ向き研究では過小評価されている可能性もあります.
🤔 どの神経が最も損傷されやすいですか?
- 上肢では尺骨神経と腕神経叢,下肢では総腓骨神経が好発神経です.
- クローズドクレーム分析では,腕神経叢損傷が約36%,尺骨神経損傷が約30%を占め,この2つで全体のおよそ3分の2を占めています.
- 尺骨神経は特に男性に多い傾向があります(男女比約3:1).
🤔 砕石位ではどのような予防策が有効ですか?
- 腓骨頭部の保護が最も重要であり,レッグホルダーが腓骨頭に直接当たらないよう位置を調整します.
- 股関節の過度な屈曲を避け,2〜3時間以上継続する場合は,理想的には一時的に仰臥位に戻して四肢を休ませます.休息時間は最低10分,できれば15分以上が推奨されます.
🤔 術後に神経障害が疑われた場合,いつ検査すべきですか?
- 神経伝導検査や筋電図検査は,損傷から神経変性が完了するまでに2〜4週間程度かかるため,損傷直後では偽陰性となりえます.
- 確定診断には損傷後3〜4週間程度経過してからの検査が有用ですが,損傷部位の局在診断には早期(1週間以内)の検査も意義があります.
🤔 周術期神経障害の回復見通しは?
- 神経や損傷の程度により異なります.
- 尺骨神経損傷では約半数が6週間程度以内に回復しますが,残りは2年後も障害が残る可能性があります.
- 全体として約4分の3は一時的または軽度の障害にとどまりますが,約4分の1では永続的な障害が残りうるため,予防が重要です.
📝 まとめ:Take Home Messages
周術期PNIは発生率1%未満ながら訴訟の約12%を占める重要な合併症であり,適切な体位管理と定期的な再評価により多くは予防可能です.
🔑 Key Points
- 尺骨神経・腕神経叢・総腓骨神経が好発部位であり,解剖学的脆弱性を理解することが重要
- 糖尿病・高血圧・喫煙などの患者因子はPNIリスクを約2倍程度に高める
- 肩外転90度以内,肘過屈曲の回避,前腕回外〜中間位保持,腓骨頭保護が基本的な予防策
- 血圧カフは上腕に装着し,前腕への装着は避ける
- 術後の神経伝導検査は損傷後3〜4週間程度が確定診断に有用だが,早期検査も局在診断に意義がある
- 約半数は数週間〜数か月で回復するが,永続的な障害が残る症例も存在する
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📚 References & Further reading
- Chui J, et al. Perioperative Peripheral Nerve Injury After General Anesthesia: A Qualitative Systematic Review. Anesth Analg. 2018;126(1):134-142.
- Mizuno J, et al. Surgical positioning injuries during urological surgery: a retrospective study of incident reports. J Clin Anesth (Japan). 2020;44(3):312-318.
- Welch MB, et al. Perioperative Peripheral Nerve Injuries: A Retrospective Study of 380,680 Cases during a 10-year Period at a Single Institution. Anesthesiology. 2009;111(3):490-497.
- Hewson DW, et al. Peripheral nerve injury arising in anaesthesia practice. Anaesthesia. 2018;73(1):51-60.
- Laughlin RS, et al. Postsurgical Neuropathy: A Descriptive Review. Mayo Clin Proc. 2020;95(2):355-369.
- American Society of Anesthesiologists Task Force. Practice Advisory for the Prevention of Perioperative Peripheral Neuropathies 2018: An Updated Report. Anesthesiology. 2018;128(1):11-26.
- Oblak T, et al. The incidence of peripheral nerve injuries related to patient positioning during robotic-assisted surgery: An evidence summary. J Perioper Nurs. 2021;34(3):e-49-e-52.
- Bentsen SB, et al. Patient positioning on the operating table and patient safety: A systematic review and meta-analysis. J Adv Nurs. 2025;81(1):5585-5599.
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