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全身麻酔から目を開けた患者さん.バイタルは安定しているように見えます——では、すぐに病棟へGo?🤔
もうちょっとだけ確認してからにしませんか?😊
麻酔後回復室(PACU)からの早期退室は,重大な術後合併症につながることがあります.
安全な移送には,Aldreteスコアなどの標準化されたスコアリングツールを用いた,多面的な評価が重要です.
Aldreteの場合,目安として、10点中9点以上が退室許可(や帰宅)の基準になります.
・・・うちにはPACU,ないんですけどね・・・😅(その場合はおとなしく手術室内で待機しましょう)
🎯 退室時のバイタル安定性の目標
🫁 呼吸
SpO₂は酸素投与下で≥95%,または室内空気下で少なくとも92–93%を目標にします.
呼吸数は8〜25/分を維持し,自発呼吸が安定していて気道閉塞がないことを確認します.
❤️ 循環
心拍数と収縮期血圧はいずれも術前値の±20%以内を目安にします.絶対値に惑わされず,患者さん個々のベースラインの文脈で評価しましょう.
安易に降圧薬や昇圧薬を使用するのではなく,原因に即した対処をしましょう(脱水・出血?区域麻酔の影響?疼痛?不穏?)
🌡️ 体温
体温は36.0℃以上を維持します.測定部位は施設プロトコールに従い、中枢または末梢で行います.
シバリングがない,または十分にコントロールされていることを確認します.
低体温が高度な場合(35度未満など)は,無理な覚醒は避け,集中治療室でしっかりと復温してからにしましょう👍
💡 意識・気道・疼痛コントロールの確認
🧠 意識と気道
患者さんが言語刺激に反応し,簡単な指示に従えることを確認します(例:「目を開けてください」「手を握ってください」).
気道開存と安定した自発呼吸は不可欠で,この項目はAldreteスコアでも特に重視されます👍
💊 疼痛と悪心・嘔吐
疼痛は適切にコントロールされていること(NRS ≤5が目安).
オピオイドの追加投与を必要としないレベルが理想です.区域麻酔を駆使しましょう!👍
また,悪心・嘔吐(PONV)は最小限〜なしであることが望まれます.
🩹 その他の確認項目
手術創やドレーン部位をチェックし,出血や排液が最小限かつ安定していることを確認します(多くの手技では<100 mL/時を目安に).
創部被覆材は頻繁な交換や補強を必要としないことが条件です.
💪 神経筋機能・区域麻酔後のチェック
🔷 筋弛緩状態の確認
筋弛緩薬を使用した場合は,抜管前に四連反応比(TOFR)≥0.9を確認しておきます.
これは残存筋弛緩を防ぎ,低換気や気道閉塞などの合併症を予防するために重要です☝️
この確認は,Aldreteスコアの正式項目には含まれませんが,国際的ガイドラインでも強調される安全確認です.
可能な限り,客観的モニタリングで筋弛緩の完全回復を確認してから退室を許可します.
🔷 区域麻酔後の注意点
ブロック施行後または最後の局所麻酔薬投与後(特に硬膜外麻酔)から少なくとも30分間は観察します.
ブロックの種類や施設のプロトコルによっては,より長い観察時間が求められる場合もあります.
退室前の硬膜外麻酔の追加は避けます.もし疼痛があり,追加投与を行う場合は観察期間を延長します.
脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔では,効果や回復の程度を確認し,病棟に申し送ります.
PACUがない施設もあるので,観察時間等のプロトコルはさまざまだと思いますので,特に新しい施設で働く場合には確認をしておきましょう👍
📋 標準化スコア:AldreteスコアとMPADSS
標準化されたスコアリングシステムの使用により,退室判断の一貫性と客観性を担保され,記録の明確化にも役立ちます😊👍
下記の両者とも,日本麻酔科学会の『安全な鎮静のためのプラクティカルガイド』に記載されていますので,確認しておいてください👍
🔷 Aldreteスコア(Aldrete Score)
最も広く使われる指標で、活動性・呼吸・循環・意識・SpO₂の5領域を評価します.
合計9/10点以上で、退室準備が整っていると判断できます.
🔷 MPADSS(Modified Post-Anesthetic Discharge Scoring System)
主に外来手術で用いられるスコアで,悪心コントロール・経口摂取・疼痛・歩行能力などの要素を含みます.
🔗 安全な鎮静のためのプラクティカルガイド(日本麻酔科学会《安全委員会》)
📝 Take-Home Messages
安全な手術室やPACUからの退室には,Aldreteスコア(≥9/10)を中心とした評価をきちんと行いましょう😊
🔑 Key Points
- Aldreteスコアを系統的に使用(≥9/10):客観的な退室判断に.
- 心拍数・収縮期血圧:術前値の±20%以内を維持.
- SpO₂:酸素投与下で≥95%または室内空気下で≥92–93%.呼吸数8〜25/分.
- 体温:≥36.0℃、シバリングなし.
- 反応性:言語指示への応答を確認.
- 疼痛・PONV:NRS ≤5、悪心・嘔吐は最小限.
- 区域麻酔後:≥30分観察は観察.
- 筋弛緩薬使用時:TOFR ≥0.9を抜管前や退室前に確認.
📚 References & Further reading
- American Society of Anesthesiologists Committee on Standards and Practice Parameters. Practice Guidelines for Postanesthesia Care. Anesthesiology. 2013;128(2):241–253.
- Aldrete JA. Aldrete Scoring System – StatPearls. StatPearls [Internet]. 2025 Jul 7. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK594237/ [Open Access]
- 安全な鎮静のためのプラクティカルガイド 日本麻酔科学会
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