♦️ はじめに
救急外来や手術室で仕事をしていると,見ない日はないであろう酸素ボンベ.そう,あの真っ黒いやつです.
ちなみに酸素ボンベの外側の色は黒と決められています.ホースの色は緑で,ボンベが緑なのは二酸化炭素なのでちょっとややこしい.そのため,つなぎ間違いによる事故も起こったりしています.

♦️ 酸素ボンベの圧力メーター
ボンベには圧力メーターがついてますよね?ちゃんと見てますか?
矢印が0を指しているときは栓が閉まっている状態です.よくこの状態で右のダイヤルを回して「酸素が流れてない!」なんてことがありますので要注意.

⬇️これが開いた状態.少ないですけど…見にくいですが8MPaくらいのところに矢印があります.

🔷 このボンベ,どのくらいもつ?
それではこのボンベ,5L/分で流したときに何分くらいもつでしょうか?
5分?10分?それとも1時間?そんなこと考えたこともない人も結構いらっしゃるようで….そりゃあんた,知らないところで業者さんとか担当の人がちゃんとチェックして新しいのに入れ替えたりしてくれてるからですよ!😅
というわけで,この際どれくらい使用可能な時間が残っているのかを計算できるようにしておきましょう.これ,試験にも出たりするので.
♦️ 酸素ボンベの残量の計算方法 🧮
🔷 一般的な酸素ボンベが満タンの場合は・・・
満タンだと 約500L(0.5m³) です.これは覚えておいてもよいと思います.5L/分で流すと理想的には空になるまで100分あるので十分ですよね.
でも普段は満タンじゃないので圧力計を見る必要があります.ちなみに満タン時の圧力は 14.7MPa です(ボンベにも書いてあります.見たことなかったでしょ?笑
メーターにはさらに上の数値がかかれていますが,それ以上に入れることは通常ありません(ボンベの最大耐圧と臨床使用時の満タン圧は異なります).

🔷 計算式
酸素残量(L)= ボンベ容積(3.4L) × 圧力(MPa) × 10
例えばボンベ容積が3.4L,圧力が満タンの14.7MPaの場合,
3.4 × 14.7 × 10 ≒ 500L
となります.
では,写真のおよそ8MPaを指しているボンベで計算してみましょう.
酸素残量 = 3.4 × 8 × 10 = 272L
つまり,術後などに5L/分で流すと およそ54分 もつ計算です.
🔷 安全のための係数
ただし,実際の使用時間は理想値よりも短くなります.流量の変動やボンベ切れを避けるため,安全のために0.8という係数をかけて余裕を持たせています.
先ほどのボンベなら,
272 × 0.8 ≒ 220L.
これを5L/分で使うと 約43分 の使用可能時間となります.
🔷 割合で考える方法
まぁ,この計算をしなくても,
「満タン(15MPa)で80〜100分もつなら,その半分くらいの圧だから40分程度じゃないの?」
と割合でざっくり考える人もいるかもしれません.はい,その通りです.
きちんと根拠を理解していれば(圧),割合計算でもかまいませんよ笑.
🔷 気になるMPaと気圧の関係.あと”10”って何?
え?気にならない?笑 気にしてくださいそういうところ☝️
あの計算式は,「1気圧の環境下でどのくらいの酸素がありますか?」ということを求める式です.
ボンベの圧力計の単位は『MPa』と書かれていますね?このMPaを1気圧に変換する必要があります.もう嫌になりましたね笑.酸素ボンベには高圧で酸素が詰め込まれているので,それを大気圧に直す必要があります.
パスカル(Pa)は台風などの気圧でもよく聞きますよね?ヘクトパスカルのパスカルで,圧力の基本単位です(パスカルさんの名前をとってます).
- まず,1気圧は 101.3kPa.細かいので ≒100kPa としましょう.
- 「メガ」は「キロ」の1,000倍(みなさんが月末に気にする「ギガ」は「メガ」の1,000倍です笑).
- 100kPa = 0.1MPa なので,1気圧はおよそ0.1MPa.
つまり 1MPa = 10気圧.
このMpaを気圧に直すための『×10』だったのですね!
もう一度整理
今,上の写真のボンベの圧力メーターは8MPaを指しています.
1MPa=10気圧なので,8MPa=80気圧です.
つまり,大気圧の80倍の酸素が3.4Lの容器に詰まっている.
→ 80 × 3.4 = 272L となりました.
📝 まとめ
- 酸素ボンベの外装色は黒,ホースは緑(CO₂との取り違え注意)
- 3.4L酸素ボンベが満タン(14.7MPa)のとき,約500L入っている
- 計算式は ボンベ容積 × 残圧(MPa) × 10
- 使用可能時間は 残量 ÷ 流量 × 0.8 で安全に見積もる
- 1MPa = 10気圧,これを押さえておくと計算式の意味が理解できる
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