⚡️ 手術室で停電が起きたら?

手術室の停電対応,非常用電源,UPS,電気的安全を解説する周術期管理チーム試験対策記事のサムネイル

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Contents

♦️ はじめに

  • 手術室で突然電気が消えたら、あなたはまず何を確認しますか?
  • 停電や電源トラブルは頻繁に起こるものではありませんが、起きたときには患者さんの安全に直結します。非常用電源やUPS、電気的安全は、周術期管理チーム試験でも関連しやすいテーマです。
  • この記事では、停電時に「何を守ればよいのか」を中心に、非常用電源・UPS・電気的安全の基本を整理します。用語の暗記ではなく、患者さんに直結する機能を守る視点で理解しておくと、臨床でも試験対策でも役立ちます。

💡 手術室で停電が起きたら、まず何を守る?

⚠️ 停電時の危険は「電気が消えること」だけではない💡

  • 停電と聞くと照明が消える状況を思い浮かべがちですが、手術室で本当に注意すべきなのは、患者さんの生命維持に直結する機能が止まる可能性です。
  • 意識したいのは、換気・酸素供給、モニタリング、薬剤投与、吸引、照明です。
  • 麻酔器や人工呼吸器が止まれば換気が、モニターが消えれば状態把握が、シリンジポンプが止まれば昇圧薬や麻酔薬の持続投与が途切れます(充電はそれほど長く保ちません😓)。
  • 吸引ができなければ術野の管理が難しくなり、照明が消えれば手術の継続に影響します。電源だけでなく、酸素供給や医療ガスの状態にも目を向けましょう(医療ガス設備の詳細には施設差があります)。
  • ただし、一般的には「停電=すべての機器が即座に止まる」とは限りません。機器によっては、非常用電源や内蔵バッテリで一定時間は動作を継続できます。だからこそ「今、何が動いていて、何が止まっているのか」を確認する姿勢が大切です。

🔌 非常用電源・無停電非常電源・UPSはどう違う?

🔌 電源を「止まる前提」と「切り替わる前提」で考える

  • 電源の種類は、細かい分類や数値を覚えるよりも、考え方をつかむほうが混乱しにくくなります。
  • ざっくり言えば、「止まる前提のもの」と「切り替わる前提のもの」に分けると整理しやすくなります
  • 通常の一般電源は、停電すれば止まります(デスクトップPCの電源を足でひっかけたら消えますね😅)。
  • これに対して非常用電源は、自家発電などによって停電時にも電力を供給する仕組みです。ただし発電機が立ち上がるまでには、わずかながら時間がかかることがあります。
  • この「切り替わるまでのわずかな空白」を埋める備えは、施設側と機器側の両方にあります。
  • 施設側では無停電非常電源が、機器側ではUPS(無停電電源装置)や内蔵バッテリーが、瞬断のときに電力を途切れさせない橋渡しの役割を担うことがあります。
  • これらは似てはいますが,違います。施設側の電源系統は手術室全体の電源供給に関わり、機器側の備えは機器ごとの一時的な電源保持に関わります。「部屋の電源」と「機器の電源」を分けて考えると整理しやすくなります。

🔌 UPS(無停電電源装置)の役割

  • 大切なのは、UPSの役割を正しく理解することです。
  • UPSは短時間の電源維持や瞬断対策には有用ですが、長時間の電源確保そのものを担うものではありません。あくまでも,停電時に非常用発電機などの電源供給へ切り替わるまでの短い時間を橋渡しする装置です.
  • そのため,UPSの有無だけで安心せず,接続先,バッテリ状態,機器ごとの内蔵電池,施設の非常電源系統をあわせて確認する必要があります.
  • 「UPSがあるから停電対策は十分」と考えるのは誤解のもとです。
  • また、非常電源の分類や名称は規格の改正により見直されることがあり、コンセントの色分けや接続先のルールも施設によって異なります。実際の運用は、最新の院内基準や設備資料で確認しておきましょう☝️。

🔋 停電時に確認したい機器:麻酔器、モニター、ポンプ、吸引、手術灯

🔌 麻酔器・人工呼吸器・患者モニター

  • まず確認したいのは、生命維持に直結する麻酔器・人工呼吸器・患者モニターです。換気が続いているか、酸素化や呼気終末二酸化炭素、循環のモニターが表示されているか、アラームが鳴っていないかを確認し、状況によっては用手換気へ切り替える準備も意識しておきます。
  • これらの機器の多くは内蔵バッテリを備えていますが、動作時間は機種によって大きく異なります。非常用電源につながっているという理由だけで安心せず、個々の機器の状態を実際に確認しましょう。
  • また,麻酔器においては,人工呼吸器が作動しなくなっても,酸素や空気が供給されていれば手動で換気することが可能です😊

🔋 シリンジポンプ・輸液ポンプ・吸引・手術灯

  • シリンジポンプが止まると、昇圧薬や麻酔薬、鎮痛薬などの持続投与が中断され、循環や麻酔管理に直接影響します。多くは内蔵バッテリがありますが,思いのほか持続時間は少ないです(搬送時に充電アラームが鳴るのを聞いたことのある人も多いはずです😅).
  • 中央吸引や吸引器の可用性は施設の設備に依存するため、代替手段の所在を平時から確認しておきます。
  • 手術灯は、術野の視認性が保たれているかを確認します。点灯しない場合は懐中電灯や,スマホのフラッシュライトを活用することもできます.

⚡️ 電気的安全の基本:漏れ電流、B/BF/CF、マクロショック・ミクロショック

🤔 なぜ「小さな電流」が問題になるのか

  • 停電とは少し離れますが、手術室の電気にまつわる安全として、電気的安全の考え方も整理しておきましょう☝️。試験対策でも整理しておきたいテーマです。
  • ポイントは,「電流の大きさ」だけでなく,「どこを流れるか」です.
  • 医療機器からはごくわずかな漏れ電流が生じることがあり,体表を通る電流では問題になりにくい程度でも,心腔内や心臓近傍に電流経路ができると,心筋を直接刺激して心室細動を起こしうるため危険です.
  • 体表面を流れる比較的大きな電流による感電をマクロショック(普通の感電のイメージはこれ)、心臓に近い経路で微小な電流が問題となることをミクロショックと呼びます
  • 心腔内や心臓近傍に電流の経路が生じうる状況では、より小さな電流でも問題になりうる点が重要です。
  • B形,BF形,CF形は,患者さんにつながる部分をどの程度安全に保護するかで分けた分類です.
  • イメージとしては,B形は患者さんに触れる一般的な装着部BF形は体表に装着するが心臓へ直接使うことは想定しない装着部CF形は心臓に近い場所で使われる可能性を考えて,より小さな漏れ電流まで厳しく管理する装着部です.
  • 例えば,血圧計のカフやパルスオキシメータのプローブなどはBF形として扱われることが多く,心電図電極や観血的圧ラインに接続するトランスデューサなどはCF形として扱われることがあります.
  • ただし,実際の分類は機器本体や装着部の表示,添付文書,施設の機器管理資料で確認する必要があります.

⚡️ 接地と等電位接地は目的が違う

  • 接地(アース)や非接地配線方式という言葉は,少し難しく聞こえます.ここでは,細かい電気工学の話ではなく,「電気が流れる道をどう安全にするか」というイメージで考えてみましょう.
  • 上でも述べた漏電とは,電気が本来流れるべき回路から外れて,機器の外装や金属部分,水分,大地側などへ逃げてしまう状態です.
  • 医療機器では,構造上,正常でもごくわずかな漏れ電流が生じることがありますが,電源コードの損傷,絶縁の劣化,水分や薬液の侵入,機器の破損などがあると,漏れ電流が増えることがあります
  • 手術室では,患者さんにつながる医療機器や金属部分が多いため,漏れ電流がどこを通るかが安全上重要になります.
  • 電気は,電位差があるところに流れます.高いところから低いところへ水が流れるのと似ています.もし医療機器の中で漏電が起き,本来流れてはいけない金属部分へ電気が逃げると,その金属に触れた人や患者さんの体を通って電流が流れる可能性があります.これは危険ですね😫!
  • 非接地配線方式は,手術室で使われる特別な電源の考え方です.
  • 通常の電源では,漏電が起きると大きな電流が流れてブレーカーが落ちることがあります.しかし手術中に部屋全体の電源が突然落ちると,人工呼吸器やモニターなどに影響する可能性があります.
  • そこで非接地配線方式では,1か所で漏電が起きても大きな電流が流れにくく,すぐに電源が遮断されにくいようにしています.同時に,絶縁監視装置で「漏電が起きているかもしれない」と早く気づけるようになっています
  • 一方,等電位接地は,患者さんの周りにある金属部分の「電気的な高さ」をそろえるための仕組みです.
  • たとえば,2つの金属の間に電位差があると,その間をつないだ体に電流が流れる可能性があります.患者さんの周囲の金属部分をあらかじめつないで電位差を小さくしておけば,患者さんの体を通って電流が流れるリスクを下げられます.
  • つまり,非接地配線方式は「漏電が起きても,すぐに大きな電流や電源遮断につながりにくくする仕組み」等電位接地は「患者さんの周囲の電位差を小さくして,体を通る電流を減らす仕組み」と考えると理解しやすいです.名前は似ていますが,守ろうとしているポイントが少し違います.

🪫 停電対応は個人技ではなくチーム対応

🧑‍⚕️ 麻酔科医・看護師・臨床工学技士の役割

  • 停電への対応は一人の知識や判断に頼るものではなく、職種ごとに見るべきポイントを分担してチームで対応することが大切です。
  • 麻酔科医は、患者さんの状態、換気・循環・麻酔深度・薬剤投与を中心に確認します。
  • 手術室看護師は、ポンプや吸引、照明、術野の状況、連絡や物品の準備に目を配ります。
  • 臨床工学技士は、機器や電源、バッテリの状態、代替機の準備、日常的な保守点検といった機器管理の面から支えます。
  • こうした対応は、日常点検や保守点検、研修や定期的な訓練、バッテリ管理、代替機の準備といった体制が、いざというときの安全につながります。
  • また、院内設備のトラブルではなく,広域停電や災害時には、電源だけでなく空調、水、医療ガス、連絡手段なども同時に制限されることがあります。こうした場面では個々の機器対応だけでなく、施設の災害対応マニュアルや指揮系統に従うことが基本になります。これらについても今後特集します😊☝️

☝️この記事で扱わないこと:電気メス、EMI、手術室火災は別記事へ

⚡️ 電気安全系は広いので、分けて学ぶ

  • 手術室の電気的安全は範囲が広いため、この記事ではすべてを扱いません。
  • 電気メスと対極板の安全、電磁干渉(EMI)とペースメーカ・ICDの関係、手術室火災の予防などは、いずれも重要ですが、それぞれ独立して学ぶほうが整理しやすいと思います😊。

まとめ:停電時は「電源」より先に「患者に必要な機能」を確認する

🔑 Key Points

  • 手術室で停電が起きたとき、最初に向き合うべきなのは「患者さんに必要な機能が保たれているか」です。
  • 換気・酸素供給、モニタリング、薬剤投与、吸引、照明を確認し、何が動いていて何が止まっているのかを把握することが重要です。
  • UPSは長時間の電源確保を担うものではなく短時間の橋渡しであること、停電対応が多職種によるチーム対応であることも押さえておきましょう。
  • 周術期管理チーム試験や麻酔科専門医試験では、UPSと非常用電源の違い、B/BF/CF形装着部、漏れ電流、接地といった用語が問われやすいポイントです。電源の細かな仕様やコンセントの色、バッテリ持続時間は施設や機種で異なるため、ぜひご自身の施設の扱いを一度確認してみてください。

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  • 追加予定

📚 References & Further reading

  • 日本規格協会.病院電気設備の安全基準(JIS T 1022).2023.
  • 日本規格協会.医用電気機器―第1部:基礎安全及び基本性能(JIS T 0601-1).2023.
  • 厚生労働省.医療機関における生命維持管理装置等の研修および保守点検の指針.
  • 日本臨床工学技士会.医療機器の保守点検計画と適切な実施に関する解説書.

⚠️ 免責事項・著作権に関して

🔷 参考資料

  • 上記参考文献(References & Further reading)を基にしています.

🔷 免責事項

  • 本記事は,前掲の論文・ガイドライン,医学系サイトで紹介されている知見を参考に,筆者による独自の解釈と再構成を加えて作成した教育的な解説記事です.
  • 記事に含まれる情報は医学的助言や治療の代替となるものではありません.
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  • 筆者は,本記事の内容に基づいて行われた臨床判断について責任を負いかねます.

🔷 教育目的

  • 本記事は,周術期管理および集中治療に携わる医療従事者を対象とした教育目的の記事です.
  • 完全で権威ある情報については,原著論文・ガイドライン,および所属施設のプロトコルを参照することを推奨します.

🇯🇵 日本での使用に関する注意

  • 本記事に記載される薬剤・治療法については,日本国内の承認状況、添付文書、保険適用を必ず確認してください.
  • 日本国内の診療においては,日本麻酔科学会,JRC,日本集中治療医学会,日本循環器学会などが発行するガイドラインも併せて参照してください.

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