🫁 機能的残気量(FRC)・・何が”機能的”?🤔

🔷 はじめに

 機能的残気量(FRC:Functional Residual Capacity).全身麻酔や体位,呼吸機能検査についての教科書を読んだことがある人であれば,一度は聞いたことがあると思います.

 ファミコン世代としては,“ザンキ”と聞くとシューティングゲームでの“残機”を思い浮かべてしまうのですが…😅笑.

曰く,

  • 全身麻酔では機能的残気量が低下します.
  • 肥満患者や妊婦さんでは機能的残気量が低下します.
  • 仰臥位では機能的残気量が低下します.
  • そのため無気肺を形成しやすくなり,低酸素状態に陥りやすくなります.

などなど.

 “機能的”という接頭語がつくくらいですから,もともとの“残気量”というものがあって,その中でなにか“機能的”なものが“機能的残気量”というのだろうなということはわかると思うのですが,きちんと説明できますか?

🔷 そもそも残気量とは

 読んで字のごとく,残気量(RV:Residual Volume)は肺の中に「残った気体」のことです
 具体的には“これ以上自分では吐ききれないところまで吐いた後に残っている気体の量”のことです.吐ききっても真空になるわけではないので笑.
 別の言い方をすると,肺がぺちゃんこにならないようにするための空気の量が残気量ですね.

🔷 機能的残気量と残気量の違い

 残気量については上記の通り.

 機能的残気量(FRC)は“安静呼気”の終わりに肺に残る空気の量を指します.つまりFRC=残気量(RV)+予備呼気量(ERV).この両者ともスパイロメトリでは直接測定できず,ヘリウム希釈法,窒素洗い出し法,体プレチスモグラフィなどの検査が必要です.

 さらに生理学的には,肺の内向き弾性収縮と胸郭の外向き弾性復元がちょうどつり合う“力学的平衡点”の肺気量でもあります.ここが“機能的(functional)”と呼ばれる理由です.

🔷 どれくらいの量がある?

 教科書により表記に幅がありますが,健常成人(座位)でおおむね30mL/kg(IBW目安),または約2.5〜3.0Lと記載されることが多いです.
 体格や姿勢(仰臥位で低下),年齢などでも変わります.(例:StatPearlsは約3L,別の総説は約30mL/kgと記載).

🔷 結局,何が「機能的」?

 普段呼吸をしていて,急に止めてもすぐに息苦しくはなりませんよね?これは血中酸素に加えて,FRCという“肺内の酸素タンク”を使えるからです.麻酔導入では前酸素化:プレオキシジェネーション(100%酸素吸入)でFRC内の窒素を置換し,この酸素タンクを最大化して“安全無呼吸時間”を稼ぐのが基本戦略です.ヘッドアップ位やPEEP/CPAPを併用すると,FRC(と酸素貯蔵)をさらに増やせます

 つまり,FRCが大きいほど低酸素に強いと言えます.

🔷 FRCを下げる主な因子(臨床で重要)

冒頭にも挙げましたが,FRCを下げる主な因子としては以下のものがあります

  • 全身麻酔:導入後まもなく約20%低下.肥満やCOPDで低下がより大きくなります.
  • 体位:座位→仰臥位で約20〜25%低下(報告例:−0.79Lなど).Trendelenburgでさらに低下.
  • 妊娠約10〜25%低下(RVとERVの低下が寄与).
  • 肥満BMI上昇とともに指数関数的に低下し,クロージングキャパシティ(CC)にFRCが接近して気道閉塞が起きやすくなります.

 これらが重なる(例:肥満×妊婦×仰臥位×全麻)と,依存部でCC>FRCとなり,気道閉塞→吸収性無気肺→V/Qミスマッチ→低酸素という王道パターンに入りやすくなります.

📝 まとめ

  • FRC=RV+ERV安静呼気終末の肺内気量で,肺と胸郭の弾性がつり合う平衡点でもある.
  • 標準値は教科書により約30mL/kgまたは約2.5〜3.0L(座位・健常成人).姿勢・年齢・体格で変動.
  • FRCはスパイロでは直接測れないヘリウム希釈/窒素洗い出し/体プレチスモで測定.
  • FRCを下げる因子全麻(≈20%↓),仰臥位(≈20〜25%↓),妊娠(≈10〜25%↓),肥満(BMI依存で↓)
  • 臨床的意味FRCが小さいほど低酸素リスク↑(CC>FRCで気道閉塞・無気肺).プレオキシジェネーション+PEEP/ヘッドアップで“酸素タンク”を増やす

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