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♦️ はじめに
周術期管理において,徐脈性不整脈は麻酔導入時や術中に突発的に発生することがあり,迅速な対応が求められます(徐脈は低血圧よりよほど怖い・・😨).
例えば緊急手術中,患者さんの心拍数が突然30/分台に低下し,アトロピン投与にも反応しない——このような血行動態の不安定な徐脈に遭遇した際,最も迅速な対応手段となるのが体外式ペースメーカーです(場合によっては迅速なCPRが必要になる場合もあります).体外式ペースメーカーは,経皮的ペーシング(TCP: Transcutaneous Pacing)と一時的経静脈ペーシング(TTVP: Temporary Transvenous Pacing)を含み,恒久的ペースメーカー植込みが必要な場合,それまでのブリッジ治療として重要な役割を果たすこともあります.
観察研究では,症候性徐脈患者の一部がTTVPを必要とすることが示されていますが,その頻度は患者背景や施設により大きく異なります.TTVP患者は高い死亡率と合併症リスクを持つハイリスク群であり、恒久ペースメーカー植込みまでの必要最小限のブリッジ治療として位置づけられます(1).
本記事では,体外式ペースメーカーの分類・適応・実施手順から合併症管理まで,麻酔科専門医試験および周術期管理チーム試験で必要な知識(補足の確認方法,閾値管理,トラブルシューティングなど)について簡潔に解説します☝️.
ペーシング(Pacing)
ペースメーカーが心筋に電気刺激を送出すること.
捕捉(Capture)
送られた刺激が心筋を脱分極させること(電気的捕捉).
加えて実際の収縮(機械的捕捉)が得られて初めて“真の捕捉”.
感知(Sensing)
ペースメーカーが自己心拍の心内電位を検知すること.感度設定が関与する.

♦️ 体外式ペースメーカーの分類
🔷 経皮的ペーシング(TCP)
経皮的ペーシング(TCP)は,胸壁に貼付した電極パッドを介して心臓に電気刺激を伝達する,非侵襲的な方法です(刺激自体は痛いですが・・).特別な手技や滅菌操作を必要とせず,数分以内に開始できるため,緊急時の第一選択として位置づけられます.
しかし,TCPは安定したペーシングを長期間維持することは困難であり,患者の疼痛や皮膚への影響も考慮する必要があります(1)(2).実際使用すると,身体がドンっドンっとなるのが見えます.
TCPの最大の利点は迅速性であり,TTVP(や恒久的ペースメーカー植込み)への移行までのブリッジ治療として使用されます.一方で,骨格筋収縮による強い疼痛を伴うため,鎮静・鎮痛なしでの長時間使用は現実的ではありません.
🔷 一時的経静脈ペーシング(TTVP)
一時的経静脈ペーシング(TTVP)は,中心静脈(主に内頸静脈穿刺)から挿入したペーシングリードを直接右心室に留置する侵襲的な方法です.TCPと比較して安定した捕捉が得られ,数日から数週間の使用に適しています(1)(3).
TTVPは血管穿刺と透視下でのリード位置調整を要するため,TCPほど迅速には開始できません.しかし,閾値が低く安定しているため,意識のある患者さんでも比較的快適に使用できます.恒久的ペースメーカー植込みまでの待機期間や,一過性の伝導障害からの回復を待つ場面で選択されます.
【補足】 心外膜ペーシング
心外膜ペーシングは上の2つとはちょっと違う,特殊な方法です.心臓外科手術の際に心外膜に直接縫い付けたペーシングワイヤーを用いる方法です(心臓外科の手術に入ったことがある方にはおなじみの後光景ですね😊).開心術後の一時的な徐脈や伝導障害に対して使用され,日本の心臓血管外科施設では術後管理において標準的に準備されています(4)(12).心外膜ペーシングワイヤーは血液と直接接触しないため,感染や血栓のリスクが経静脈式と比較して低いという特徴があります.
臨床現場では,術後早期から定期的に閾値確認を行い,ペーシング依存度と閾値の安定性を評価します.一般に,自己調律が安定し,ペーシング不要と判断されてから数日後にワイヤーを抜去しますが,抜去時には出血や心タンポナーデのリスクに注意が必要です.術後の房室ブロックや洞機能不全が遷延する場合には,恒久的ペースメーカーへの移行を検討します.
♦️ 体外式ペースメーカーの適応—“血行動態不安定”な徐脈とは
体外式ペースメーカーの適応を理解するためには,「血行動態不安定な徐脈」の定義を把握することが重要です.ACLSの徐脈アルゴリズムにおいても,この適応判断は中心的な位置を占めています(2).
🔷 不安定徐脈の定義
血行動態不安定な徐脈とは,徐脈によって臓器灌流が障害され,臨床的に有害な症状や徴候を呈している状態を指します(いわゆる症候性徐脈).AHAガイドラインでは,徐脈が症候性かどうかの判断において,心拍数の絶対値よりも臓器灌流不全の有無を重視しています(昔は50未満など数値があった).
症候性徐脈の徴候としては,めまい・ふらつき,急性意識障害,虚血性胸部不快感,急性心不全,低血圧,失神などが挙げられます(2)(3).また,徐脈が臨床症状の主要な原因なのか,それとも他の基礎疾患(心筋虚血,低酸素症,電解質異常,アシドーシス,低体温症など)によるものなのかを臨床的状況の中で評価することが重要とされています.
意識障害,胸痛,急性心不全,ショック徴候などが認められれば,心拍数がやや高めであっても介入の適応となり得ます.
🔷 アトロピン無効時の判断
徐脈に対する初期薬物療法としてアトロピンが投与されますが,高度房室ブロックや洞不全症候群などでは無効,あるいは効果が限定的です(その徐脈,アトロピン使用はOK?🤔:主要な禁忌と無効な不整脈参照).アトロピン投与後も血行動態の改善が得られない場合,速やかにペーシングへ移行する判断が求められます(2).
国内のガイドラインでも,薬物療法抵抗性の症候性徐脈に対するペーシングの重要性が強調されています(12).実際の臨床現場では「アトロピン無効」を確認次第,TCPの準備を開始することが推奨されます.
♦️ TCPの実施方法
経皮的ペーシングは緊急時に最も迅速に開始できるペーシング法であり,その実施手順を熟知しておくことは専門医試験対策としても臨床実践としても極めて重要です.実際に麻酔科専門医試験口頭試問でも問われたことがあります.
🔷 電極パッドの位置
電極パッドの配置には前胸部—背部(AP: Anterior-Posterior)配置と前側胸部(AL: Anterior-Lateral)配置があります.複数の研究で,AP配置の方が捕捉閾値が低く,より確実なペーシングが得られることが示されています(1)(5).
AP配置では,前面の電極を胸骨左縁に,背面の電極を左肩甲骨下部に貼付します.この配置により,電流が心臓を効率的に通過し.より低い電流で捕捉が得られます.
AL配置は患者を仰臥位のまま施行できる利点がありますが,捕捉閾値がやや高くなる傾向があります(しっかりと刺激強度を挙げないと補足されない).
🔷 レートと電流の設定
TCPの設定では,まずペーシングレートを設定し,次に電流(出力)を調整して捕捉を得ます.一般的には,レートを患者の自己心拍より高い値(多くの場合60〜80/分程度)に設定し,電流は低い値から開始して徐々に上昇させます(1)(5).
電流設定については,機種や文献により推奨される開始値が異なりますが,低出力から開始して捕捉が得られるまで段階的に増加させるという原則は共通しています.捕捉が確認されたら,一般に閾値の1.5〜2倍程度(あるいは閾値に一定のマージンを加えた値)を安全域として設定することが推奨されています.必要以上の高電流は疼痛増強と皮膚障害のリスクを高めるため,最小有効電流を同定することが重要です.
🔷 捕捉(キャプチャ)の確認
ペーシングの成功を判断するには,電気的捕捉と機械的捕捉の両方を確認する必要があります.電気的捕捉とは,ペーシングスパイクの後に幅広いQRS波が出現することを指し,心電図モニター上で確認します.典型的には,スパイク直後に幅広いQRS波とそれに続くST-T変化が認められます(1)(6).
しかし,電気的捕捉が得られても,それが実際の心収縮に結びついているとは限りません.機械的捕捉の確認として,動脈拍動の触知,パルスオキシメーターの脈波,動脈圧波形,そして臨床的な灌流改善(意識レベル,末梢循環など)を評価します.
電気的捕捉と機械的捕捉の両方が確認されて初めて,ペーシングが成功したと判断できます👍
♦️ TCP時の鎮静・鎮痛 🩹
経皮的ペーシングは,心筋だけでなく胸壁の骨格筋も刺激するため,患者にとって非常に不快な経験となります.適切な鎮静・鎮痛管理はTCP施行時の重要なポイントです☝️.
🔷 疼痛の機序🤔
TCPが強い疼痛を引き起こす主な理由は,電流が心筋に到達する過程で胸壁の骨格筋を刺激し,ペーシングパルスごとに繰り返す筋収縮を生じさせるためです(1)(6).この筋収縮は持続的な胸壁痛と不快感を伴います.
意識のある患者では,この疼痛によりペーシングの継続が困難になることがあります.また,疼痛に伴う交感神経活性化が血行動態に悪影響を及ぼす可能性もあるため,適切な疼痛管理が必要です.
🔷 鎮静・鎮痛の実際☝️
TCP時の疼痛管理には,ミダゾラムなどのベンゾジアゼピン系鎮静薬が用いられることが多いです.オピオイドが用いられることもありますが,患者の状態に応じて慎重に検討されます(1)(6).鎮静の深度は,患者の血行動態と気道管理の観点からバランスを取る必要があります.
麻酔科医的には,過度の鎮静による呼吸抑制や血圧低下を避けながら,患者の苦痛を軽減することが求められます.緊急性の高い状況では,まずペーシングによる血行動態の安定化を優先し,その後に鎮静・鎮痛を調整するアプローチが現実的です(といっても,手術室では麻酔で意識がないことが多く,すでにレミフェンタニル等のオピオイドが投与されていることが多いですが😅).TCPが長時間に及ぶ場合や,TTVPへの移行準備中には,より深い鎮静が必要になることもあります.
♦️ TTVPの手技
一時的経静脈ペーシング(TTVP)は,より安定した長期間のペーシングが可能ですが,手技自体は静脈穿刺を伴うため侵襲的です.麻酔科医や循環器科医が「テンポラリー入れよう」と言えば,これのことです☝️
🔷 血管アクセス
TTVPのための中心静脈アクセスには複数の選択肢がありますが,中心静脈カテーテル留置と同じように,右内頸静脈が最も使用・推奨されます(1)(3)(5).右内頸静脈は,上大静脈から右心房,さらに右心室へと解剖学的にほぼ直線的な経路をたどるため、ペーシングリードの挿入と位置調整が容易です。
鎖骨下静脈アプローチも使用されますが,リードの操作性や合併症リスクの観点から,緊急時には右内頸静脈が第一選択となることが多いです.大腿静脈からもアプローチは可能ではありますが,リードの安定性や感染リスクの観点から推奨度は低くなります.
解剖学的に特殊な問題がない限り,右内頸静脈が第一選択だと考えて間違いありません☝️
🔷 リードの進め方と位置決め
ペーシングリードは,透視ガイド下で右心室心尖部に向けて進めます.緊急時には透視が使用できない場合もあり,その際はECGガイドのみでリードを進めることもあります.リードの先端が右心室に接触すると,心電図上で損傷電流パターン(ST上昇)が観察されます.このST上昇は,リード先端が心筋に接触していることを示す重要な指標となります(1)(3).
リードの位置が適切であれば,低い閾値で安定した捕捉が得られます.位置決め後は,リードが移動しないよう確実に固定し,定期的な閾値チェックと位置確認を行います.
🔷 初期設定
TTVPの初期設定では,ペーシングレート,出力(電流または電圧),感度を調整します(1)(3).レートは患者の病態に応じて設定し,出力は捕捉閾値を確認した上で安全域を持たせた値に設定します.
感度設定は,患者の自己心拍を適切に感知してデマンドペーシングを機能させるために重要です.感度の数値設定と実際の感度は逆相関の関係にある(数値を上げると感度が下がる)点は,初めは混乱しやすいポイントでもあります.
ペースメーカの感度設定で指定する数値は,ペースメーカが自己心拍として感知するために必要な,心電位の最低振幅(電圧)を表しています.
| 設定数値 | 実際の感度 | 意味 |
| 低い数値 (例:0.5mV) | 高い感度 | わずかな電位(0.5mV以上)でも感知する。 |
| 高い数値 (例:5.0mV) | 低い感度 | 大きな電位(5.0mV以上)でなければ感知しない。 |
- デマンドペーシングとは,自己心拍が検出された場合,ペースメーカからの電気刺激(ペーシング)を抑制し,自己心拍が一定時間出現しない場合にのみペーシングを行うモードのことです.
- 自己心拍と人工的な刺激が競合するのを防ぎ,心室細動などの危険な不整脈を誘発するリスクを避けるために非常に重要です.
♦️ ペーシングモード:NBGコードの基礎
ペースメーカーの作動モードを表すNBGコードは,専門医試験や周術期管理において頻出の知識です.この当たりは,以下のページでも採り上げています.
【ブログ内リンク】🫀 ペースメーカーの基礎知識
🔷 3文字コードの意味
NBGコードの最初の3文字は,それぞれペーシング部位,感知部位,感知時の反応を表します.第1文字はペーシングを行う心腔(V=心室、A=心房、D=両方),第2文字は感知する部位(心腔),第3文字は感知した際の反応(I=抑制,T=トリガー,D=両方,(O=なし)を示します.
🔷 主要なペーシングモード
臨床で頻用されるモードとして,VOO,VVI,DDDがあります.VOO(心室非同期ペーシング)は,感知機能なしで設定レートで心室を刺激し続けるモードです.患者の自己心拍に関係なくペーシングを行うため,自己心拍との競合リスクがありますが,電磁干渉下(手術中のモノポーラー電気メス使用時など)や感知不全時に使用されます.
VVI(心室デマンドペーシング)は,心室を感知・ペーシングし,自己心拍を感知すると出力を抑制するモードです.最も一般的に使用される一時ペーシングモードであり,自己心拍との競合を避けられます.
DDDモードは心房・心室の両方を感知・ペーシングする最も生理的とされるモードですが,一時ペーシングではリード2本が必要となり,設定もやや複雑になります.
♦️ トラブルシューティング ⚠️(埋込み型も同様)
ペーシングが期待通りに機能しない場合,その原因の迅速な特定と対処が必要です.捕捉不全とセンシング異常は,専門医試験でも臨床現場でも重要なトピックです.
🔷 捕捉不全の原因
ペーシング捕捉不全(ペーシングスパイクの後にQRS波が出現しない状態)は,急性期と慢性期で原因が異なります(1)(8).
- 急性期(挿入直後〜数日)の原因としては,リードの位置不良や移動,接続不良,出力設定不足などが挙げられます.これらは比較的対処しやすく,リード位置の調整や出力増加で解決できることが多いです.
- 慢性期(数日〜数週間後)の原因には,リード先端での線維化による閾値上昇,心筋虚血,電解質異常(特に高カリウム血症),酸塩基平衡異常,抗不整脈薬の影響などがあります.これらの代謝性・薬理学的要因は,根本原因の是正が必要です。
重要な点として,ペーシング閾値は一度決定すれば不変というわけではありません.電解質異常,アシドーシス,低酸素血症,薬剤投与,さらには患者の体位変化などによって閾値は容易に変動します(8)(13).
このため,ペーシング開始時に適切な設定であっても,患者の状態変化に伴って捕捉不全に陥ることがあります.定期的な閾値チェックを行い,設定電流が捕捉閾値に対して十分な安全域(一般に閾値の1.5〜2倍程度)を維持しているか確認することが,ペーシング管理の基本です.
🔷 センシング異常
センシング異常には,アンダーセンシングとオーバーセンシングがあります(1)(8).アンダーセンシングは,自己心拍を感知できずにペーシングが出力されてしまう状態で,自己心拍とペーシングの競合を引き起こす危険があります.原因としては,感度設定の不適切,リード位置不良,低振幅の自己心拍などがあります.
オーバーセンシングは,ノイズ(電気メス刺激なども含む)や筋電位などを心内電位と誤認して出力が抑制される状態です.これにより必要なペーシングが行われず,徐脈が放置されるリスクがあります.
🔷 対処法
捕捉不全への対処は,まず出力を増加させて捕捉が回復するか確認します.改善がなければリード位置の確認と再調整を行います(8).電解質異常や酸塩基平衡異常が疑われる場合は,血液検査を行い補正します.
センシング異常への対処は,感度設定の調整が基本となります.アンダーセンシングには感度を上げ(数値を下げる),オーバーセンシングには感度を下げます(数値を上げる).それでも改善しない場合は,リード位置の再調整や,一時的に非同期モード(VOO)への変更を検討します.
♦️ 体外式ペーシングの合併症と限界
体外式ペースメーカーには,その方式に応じた特有の合併症があります.
🔷 TCPの合併症
TCPの最も重要な合併症は皮膚熱傷です.高出力での長時間連続使用は皮膚熱傷のリスクを高めると報告されており,重症例では第3度熱傷に至ることも報告されています(1)(9).少なくとも30分ごとに皮膚状態を確認し,可能なかぎり早期に,TTVP等,他のペーシング法へ移行することが推奨されます.
その他の合併症として,前述の疼痛と不快感,骨格筋収縮による動きのアーチファクト,そして不完全な捕捉による血行動態不安定の遷延などがあります.また,意識のある患者では,繰り返す筋収縮による疲労や精神的苦痛も無視できません(軽度鎮静・鎮痛が必要になることもあります).
🔷 TTVPの合併症
上記の通り,TTVPは侵襲的手技であるため,中心静脈カテーテル挿入に共通する合併症に加え,特有の合併症リスクがあります(1)(3)(10).
心穿孔による心タンポナーデは最も重篤な合併症であり,致死的となり得るため常に注意が必要です.大規模データベース解析では,心タンポナーデの発生率は約0.6%,気胸は約0.9%,出血は約2.4%と報告されています.
血管穿刺に関連する合併症として,気胸(特に鎖骨下アプローチ),血腫形成,動脈穿刺などがあります.また,リード留置に伴う不整脈(主に心室性),感染(局所感染から敗血症まで),長期留置での血栓形成なども認められます.
感染リスクは留置期間に比例して上昇するため,不要になったら速やかに抜去することが重要です.
🔷 電磁干渉と患者指導
体外式ペースメーカー(特にTTVP使用中)の患者では,電磁干渉(EMI)による誤作動に注意が必要です(11).携帯電話などの電子機器との適切な距離の確保が推奨されており,おおむね15 cm程度以上の距離を保つことが一般的な目安とされています.
MRI検査は原則禁忌であり,電気メスの使用時にも設定変更や監視強化が必要になることがあります.周術期管理においては,術中の電気メス使用時に非同期モードへの変更を検討するなど(計画的な対応が求められます.
🤔よくある質問(FAQ)✅
🤔 経皮的ペーシング(TCP)と経静脈ペーシング(TTVP)の違いは?
- TCPは胸壁に電極パッドを貼付して行う非侵襲的な方法で,数分以内に開始できる迅速性が最大の利点です.
- TTVPは中心静脈からリードを挿入する侵襲的手技ですが,安定した低閾値のペーシングが数日から数週間維持でき,患者の疼痛も少ないのが特徴です.
- 緊急時はまずTCPでブリッジし、必要に応じてTTVPへ移行するのが一般的な戦略です。
🤔 ペーシングの捕捉はどのように確認しますか?
- ペーシング捕捉の確認には電気的捕捉と機械的捕捉の両方を評価します.
- 電気的捕捉は心電図モニター上でペーシングスパイク直後に幅広いQRS波とST-T変化が出現することで確認します.
- 機械的捕捉は,動脈拍動の触知,パルスオキシメーターの脈波,血圧上昇,臨床的な灌流改善によって確認します.
- 電気的捕捉だけでは心収縮が保証されないため(PEAのように波形だけ出てる場合),必ず両方を確認することが重要です.
🤔 体外式ペースメーカーの適応は何ですか?
- 体外式ペースメーカーは,薬物療法(アトロピンなど)に反応しない血行動態不安定な徐脈が主な適応です.
- 具体的には,徐脈によって臓器灌流が障害され,臨床的に有害な症状や徴候を呈している状態を指します(いわゆる症候性徐脈).AHAガイドラインでは,徐脈が症候性かどうかの判断において,心拍数の絶対値よりも臓器灌流不全の有無を重視しています(昔は50未満など数値があった)
- 高度房室ブロック、洞不全症候群、術中の突発的徐脈などが代表的な臨床場面であり,恒久的ペースメーカー植込みまでのブリッジ治療として使用されます.
📝 まとめ:Take Home Messages
体外式ペースメーカーは血行動態不安定な徐脈に対するブリッジ治療として不可欠であり,捕捉確認・トラブルシューティング・合併症管理の知識は専門医試験,実臨床の両面で重要です.
🔑 Key Points
- TCPは最も迅速なブリッジ治療.疼痛・熱傷リスクから長期使用には不向き
- ペーシング成功の判断には電気的捕捉と機械的捕捉の両方の確認が必須
- TCPでは胸壁筋収縮による強い疼痛を伴うため、鎮静・鎮痛管理が重要
- TTVPは右内頸静脈アプローチが解剖学的に最も有利で第一選択となる
- NBGコードの理解は専門医試験頻出知識であり,VOO・VVI・DDDの特徴を把握する
- 合併症として,TCPでは皮膚熱傷,TTVPでは心穿孔・感染・血栓に注意が必要
🔗 Related articles
📚 References & Further reading
- StatPearls. External Pacemaker. StatPearls Publishing; 2024.
- ACLS Algorithms. Bradycardia Algorithm. American Heart Association; 2020.
- European Society of Cardiology. Guidelines on cardiac pacing and cardiac resynchronization therapy. Eur Heart J. 2021.
- Springer. Temporary Cardiac Pacing: A Comprehensive Review. J Cardiovasc Electrophysiol. 2023.
- Ottawa Heart Institute. Transcutaneous Pacing Protocol. Clinical Practice Guidelines; 2022.
- Taming the SRU. Emergency Transcutaneous Pacing. Critical Care Education; 2023.
- StatPearls. Pacemaker Types and Selection. StatPearls Publishing; 2024.
- Innovations in Cardiac Rhythm Management. Troubleshooting Temporary Pacemakers. 2023.
- HeartRhythm Case Reports. Third-degree burn from transcutaneous pacing. 2022.
- University Hospitals EM Residency Blog. Complications of Temporary Transvenous Pacing. 2023.
- 厚生労働省. 植込み型心臓ペースメーカー等の使用上の注意事項について. 2022.
- 日本不整脈心電学会. 不整脈薬物治療ガイドライン. 2020.
- Tjong FVY, et al. Temporary transvenous pacing in acute clinical care: A scoping review. Neth Heart J. 2019.
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🔷 出典
- 上記参考文献(References & Further reading)を基にしています.
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