♦️ 普段目にする抗凝固薬
現在さまざまな抗凝固薬が周術期に使用されていますが,ぱっと思い浮かぶのは以下のものではないでしょうか?
- ヘパリン(未分画,低分子)
- ワルファリン
- DOAC(直接経口抗凝固薬)
♦️ DOAC:直接経口抗凝固薬
🔷 DOACの名前が覚えられない・・・😅
上の二つはいいとして,DOACは現在4種類販売されていますね.みなさん,これらの一般名と商品名,きちんと言えます・・?😅(右が商品名)
- ダビガトラン → プラザキサ®
- アピキサバン → エリキュース®
- リバーロキサバン → イグザレルト®
- エドキサバン → リクシアナ®
何回やってもダビガトラン以外がピンと来なくて,毎回硬膜外の適応について確認するときに表で確認しています・・笑.
🔷 かつてはNOAC(新規経口抗凝固薬)と呼ばれた
このDOACは,10年位前まではNOAC(novel oral anticoagulants)と呼ばれていましたが,いつまでも新しいわけではないので,現在はDOAC(direct oral anticoagulants)と呼ばれます.
かつてちょっと田舎を中心に「○○ニュータウン」と銘打たれた地域がたくさんありましたが,だんだんさびれてきて寂しい思いをしたのを覚えています笑(はい,田舎出身です😊).
🔷 “経口”はわかるとして,なにが「直接」?
え?気になったことない?気にしてください😡.ものの名前にはだいたい意味がありますからねっ☝️.
わざわざ”直接”とつけるからには,ほかの抗凝固薬は”直接でない(間接的)”ということですよね?
その理解のためにはまず,ヘパリンとワルファリンの作用機序を確認しておきましょう.今回の主役はDOACなので,下の内容の細かなところまでは覚える必要はありません.
♦️ それぞれの抗凝固薬の作用機序
🔷 ヘパリンの作用機序
ヘパリンは凝固因子の反応を直接阻害するわけではなく,アンチトロンビンⅢ(AT-Ⅲ)に結合して複合体を形成し,その“複合体”がトロンビン(第Ⅱa因子)や第Xa因子を不活化することで抗凝固作用を発揮します.
👉 注意したいのは,ヘパリンは凝固因子そのものの生成を阻害するわけではない,という点です.
🔷 ワルファリンの作用機序
ワルファリンはどうでしょう.ワルファリンはビタミンK依存凝固因子(Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ因子)の活性化過程を妨げる薬です(「肉納豆」で覚えたと思います😊).ここでは覚えなくていいですが,具体的にはビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)を阻害します.
補足:ビタミンKはこれら凝固因子のγ-カルボキシ化に必要な補酵素であり,一旦酸化されますが,再び還元されることで繰り返し利用されます.この「還元」を担う酵素を阻害することで,活性化した凝固因子が作られにくくなり,結果的に抗凝固作用を発揮します.
つまり,ワルファリンも凝固因子を直接阻害するわけではありません.
🔷 では,今回の本命のDOAC
最後に本命のDOACです.教科書や添付文書を見ると,それぞれ以下の凝固因子を阻害すると書かれています.
- ダビガトラン → トロンビン(第Ⅱ因子)阻害
- アピキサバン → 第Xa因子阻害
- リバーロキサバン → 第Xa因子阻害
- エドキサバン → 第Xa因子阻害
ダビガトランはトロンビンの活性部位に直接結合して作用を発揮します(こまか〜な反応は省略).要はトロンビンに直接作用しているのです.
ほかの3つは第Xa因子に直接結合して作用します.Xaはプロトロンビナーゼ複合体の主要成分であり,この活性をブロックすることで下流のトロンビン生成が抑制されます.
♦️ まとめ(Take Home Message)
ほかの抗凝固薬(ヘパリン,ワルファリン)が「間接的に」凝固反応を抑えるのに対し,DOACは凝固因子(トロンビンまたはXa因子)に直接結合して阻害するため,「直接」と名前がついています.
・・・・まぁ・・長々話さなくても最後の一文がすべてなのですが・・・(^.^;)
- ヘパリン:AT-Ⅲを介してトロンビン(IIa),Xaを不活化 →「間接的」
- ワルファリン:VKOR阻害によりビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ, Ⅶ, Ⅸ, Ⅹ)の活性化を妨げる →「間接的」
- DOAC:凝固因子そのものに直接結合し阻害 →「直接」
- DOACの内訳:
- ダビガトラン=トロンビン阻害薬
- アピキサバン/リバーロキサバン/エドキサバン=Xa阻害薬
👉 名前の由来はシンプルに「直接的に凝固因子を阻害するからDOAC」!