📘【想定問題】腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(小児)

📘 専門医試験対策目次blognote

症例設定

【患者】

  • 5歳男児.115cm,25kg(標準に比べてやや高慎重,高体重.肥満気味)

【現病歴】

  • 2か月前から右鼠径部の膨隆を認め,小児外科を受診した.右鼠径ヘルニアと診断され,腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術が予定された.現在,疼痛はなく,嵌頓の既往もない.

【既往歴】

  • 3歳時に気管支喘息と診断.現在は安定しており,過去12か月間発作なし
  • アレルギー:ハウスダスト,卵白(軽度)
  • 予防接種:定期接種はすべて完了
  • 入院歴・手術歴:なし
  • 先天性心疾患の既往:なし.卵円孔開存なし.

【服用中薬剤】

  • モンテルカスト 4mg 1日1回 就寝前
  • フルチカゾンプロピオン酸エステル吸入剤 50μg 1日2回(発作時のみ,現在は使用していない)
【主な検査所見・バイタルサインなど】

バイタルサイン・身体所見

  • HR 95bpm,BP 95/60mmHg,RR 20回/分,SpO₂ 99%(室内気)
  • 気道評価:Mallampati分類 Class I,開口制限なし,頸部伸展良好
  • 呼吸音:清,喘鳴なし
  • 心音:整,雑音なし
  • 腹部:平坦,軟.右鼠径部に還納可能な膨隆あり

その他の検査

  • 特記すべき所見なし
Q1. 本症例の麻酔前評価で特に注意すべき点と,追加で確認する情報を挙げてください.
  • 最も重要なのは,気管支喘息が現在十分にコントロールされているか,最近の上気道感染や喘鳴がないかを確認することです.最終発作時期,発作の誘因,夜間症状・運動誘発症状,発作時吸入薬の使用頻度,救急受診・入院・気管挿管歴,経口副腎皮質ステロイド使用歴を家族から聴取します.現在の喘息治療薬は原則として継続します.
  • 発熱,湿性咳嗽,膿性鼻汁,喘鳴,呼吸状態の悪化などがあれば,待機手術の延期を含めて再評価します.家庭内喫煙や受動喫煙についても確認します.
  • 体格は成人のBMIだけでなく,年齢・性別別の成長曲線や肥満度で評価します.現在の気道所見から困難挿管を積極的に予測する状態ではありませんが,小児用ビデオ喉頭鏡,声門上器具,異なるサイズのマスクと気管チューブを準備します.
  • 絶飲食状況を確認します.日本麻酔科学会の指針に従い,清澄液は麻酔開始2時間前まで,軽食・固形物は6時間以上を基本とします.
🔍 追加で聞かれたら
  • 卵白アレルギーが軽度であることだけを理由に,プロポフォールを一律に禁忌とはしません.過去のアナフィラキシーや薬剤に対する反応歴を確認します.
Q2. 小児の腹腔鏡手術で,成人と比較して特に注意すべき点を説明してください.
  • 小児は酸素消費量が大きく,FRCが小さいため,無呼吸や換気不良によって成人より急速に低酸素化します.気腹によって横隔膜が頭側へ移動し,FRCと肺コンプライアンスが低下するため,気道内圧上昇,無気肺,換気血流比不均衡が生じやすくなります.CO₂吸収によるEtCO₂上昇にも注意し,必要に応じて分時換気量を増加させます.
  • 小児は気管が短いため,気腹や体位変換によって気管チューブ先端と気管分岐部の距離が短縮し,気管支挿管となることがあります.気腹開始後と体位変換後には,気管チューブの深さ,胸郭運動,両側呼吸音,換気量を再確認します.
  • 循環面では,腹腔内圧上昇による静脈還流低下と,急速な腹膜伸展による迷走神経反射性徐脈に注意します.気腹は緩徐に開始し,6〜8mmHg程度の低圧から開始することを目安として,術野と呼吸・循環への影響をみながら必要最小限に調整します.
  • 気腹中には一過性の乏尿が生じることがありますが,尿量だけを根拠に過剰輸液を行いません.また,小児は体表面積/体重比が大きく低体温になりやすいため,体温監視と保温を行います.
🔍 追加で聞かれたら
  • カフ付き気管チューブを使用する場合は,カフ圧計を用いて必要最小限の閉鎖圧に調整します.
  • 頭低位や側方傾斜を用いる場合は,患児の滑落,圧迫,末梢神経障害がないように固定します.
補足・解説
  • 新生児の場合は動脈ラインによる血圧モニタリングが推奨されます.また,左右シャントの再開通や静脈ガス塞栓のリスクも報告されています
Q3. 術前鎮静のための前投薬について説明してください.
  • 小児の前投薬は一律には行わず,年齢,発達段階,不安の程度,過去の医療体験,家族からの分離が可能かを評価して決定します.本患児は母親同伴で落ち着いているため,薬物による前投薬を行わない方針でよいと考えます.
  • まず,年齢に合わせた説明,遊びや動画による注意転換,保護者の同伴などの非薬物的介入を行います.それでも強い不安があり薬物前投薬が必要な場合は,国内で麻酔前投薬として承認されている経口ミダゾラムシロップを考慮します.
  • 投与後は呼吸状態,循環動態,鎮静深度を継続的に監視し,酸素投与,バッグマスク換気,吸引,蘇生薬を直ちに使用できる環境で管理します.
🔍 追加で聞かれたら
  • 経口ミダゾラムシロップの承認用量は,通常0.25〜1.0mg/kgを麻酔前に1回経口投与し,上限は20mgです.肥満小児では標準体重に基づいて投与量を算出します.実際には年齢,不安の程度,全身状態を考慮し,必要最小限の量とします.
  • トリクロホスナトリウムは50〜75mg/kg程度が用いられることが多いです.

【経過】

  • 前投薬は行わず,手術室に入室しました.母親同伴で入室し,麻酔導入まで付き添ってもらいます.患児は落ち着いています.末梢静脈路は未確保です.

ここから先は「オンラインメンバーシップ限定」です. ↓の「新規ユーザー登録」から登録申請を行ってください.

既存ユーザのログイン
   
X(旧twitter)でも更新通知してます!
  • URLをコピーしました!
Contents