📘【想定問題】腹腔鏡下胆嚢摘出術

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症例設定

【患者】

  • 75歳男性.身長170 cm,体重75 kg(BMI 26).

【現病歴】

  • 2か月前から食後の心窩部痛を自覚していた.1週間前,脂肪分の多い食事後に強い右季肋部痛が出現し,近医を受診した.腹部超音波検査で胆石を指摘され,当院外科に紹介された.症状が持続しており,腹腔鏡下胆嚢摘出術が予定された.

【既往歴】

  • 2型糖尿病(SGLT2阻害薬エンパグリフロジン10mg/日,メトホルミン500mg 分2)
  • 高血圧(オルメサルタン20mg/日,アムロジピン5mg/日)
  • 喫煙歴:15本/日×50年間(禁煙指示が出されたが継続中😡)
  • アレルギー歴:特記事項なし
  • 手術歴:なし
【主な検査所見・バイタルサイン】

全身状態・身体所見

  • 易疲労感あり.階段は昇降可能だが,すぐに息切れあり(METS 3-4程度)
  • 聴診で両側に乾性ラ音を聴取

バイタルサイン

  • 血圧 138/85 mmHg,心拍数 78/分・整, 呼吸数 18/分 SpO₂ 95%(room air)体温36.5℃

呼吸機能検査

  • FEV1.0% 48%,%VC 95%,FEV1.0 1.42L

画像検査など

  • 胸部レントゲン:肺の過膨張,横隔膜平坦化,肺野透過性亢進(樽状胸郭)
  • 胸部CT:両側とも気腫状変化.左上葉に5cm,右上葉に小さなブラを複数認める.肺炎像なし.
  • 心電図:正常洞調律,軽度左室肥大所見
  • 心エコー:左室駆出率 55%,下壁軽度運動低下,弁膜症なし
  • 腹部エコー:胆嚢内に複数の結石あり,胆嚢壁肥厚(4.2mm),胆管拡張なし
  • 腹部CT:胆嚢壁の軽度肥厚,周囲脂肪織濃度上昇なし,総胆管径 7mm

採血データなど

  • WBC 6,500 /μL,Hb 14.2 g/dL,Plt 23.8 ×10⁴/μL
  • AST 82 U/L,ALT 85 U/L,ALP 298 U/L,γ-GTP 132 U/L,T-Bil 1.1 mg/dL
  • BUN 15 mg/dL,Cr 1.2 mg/dL,eGFR 48 mL/min/1.73m²
  • HbA1c 7.2%,空腹時血糖 145 mg/dL
  • Na 141 mEq/L,K 4.1 mEq/L,Cl 105 mEq/L
  • PT 11.2 秒,PT-INR 1.02,APTT 31.5 秒
  • 血液ガス(room air):pH 7.38,PaO₂ 80 Torr,PaCO₂ 48 Torr,HCO₃⁻ 26 mEq/L,BE +1.8
Q1. この患者の術前リスクを評価してください.ASA-PS分類,呼吸機能の解釈,追加評価,周術期心血管イベントリスクについて説明してください.
  • ASA-PSはIIIと評価します.閉塞性換気障害,労作時呼吸困難,喫煙継続,肺気腫と肺ブラがあり,機能制限を伴う全身性疾患があるためです.
  • 呼吸機能検査では,FEV₁/FVC 48%,%VC 95%であり,高度な閉塞性換気障害を認めます
  • 高齢,喫煙継続,運動耐容能低下,乾性ラ音,気腫性変化,両側肺ブラがあり,術後肺合併症リスクは高いと考えます.急性増悪,呼吸器感染,喀痰増加の有無,吸入薬の使用状況を確認し,必要に応じて呼吸器内科に相談して治療を最適化します.
  • 禁煙は直ちに開始し,深呼吸,排痰法などの呼吸訓練を行います.急性増悪や呼吸器感染があれば,待機手術を延期します.
  • 心血管評価では,不安定狭心症,急性心不全,重症不整脈などの活動性心疾患がないことを確認します.RCRIでは腹腔内手術の1点で,既知の虚血性心疾患,心不全,脳血管障害,インスリン治療,Cr 2.0 mg/dL以上はありません.ただし,下壁運動低下が新規所見か,無症候性心筋梗塞を示唆しないかを確認します.BNP,トロポニン,負荷検査は一律に追加せず,総合的に心血管リスクが上昇しており,結果が手術延期,治療,術後監視計画を変える場合に考慮します.
🔍 追加で聞かれたら
  • PaCO₂ 48 mmHgは軽度高値ですが,HCO₃⁻ 26 mEq/L,BE +1.8 mEq/Lであり,慢性CO₂貯留とまでは断定できません.過去の血液ガスや臨床経過を確認します(いや,まぁ慢性貯留なんだろうけど).
  • COPDの診断確認や治療方針決定が必要な場合は,気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーを考慮します.気管支拡張薬反応は,気流閉塞の重症度判定のために一律に行うのではなく,喘息や可逆性気流制限の併存が疑われ,治療方針に影響する場合に評価します.
  • 6分間歩行試験や心肺運動負荷試験は,非胸部手術のルーチン検査ではありません.機能的能力が不明で,その結果が手術時期や術後管理を変える場合に考慮します.
  • Hugh-Jones分類には平地歩行速度や休止距離の情報が必要であり,本症例の記載だけから一定の度数は判断できません.
  • 心エコーはすでに施行されています.下壁運動低下について,既往心筋梗塞,狭心症状,過去の心エコー所見を確認します.
補足・解説
  • 気管支拡張薬投与後の値か不明で,%予測FEV₁も示されていないため,COPDの確定診断や気流閉塞の重症度分類まではできません.また,FEV₁の絶対値だけで術後肺合併症リスクや手術可否は判断できません.

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