📘【想定問題】小児扁桃摘出術

症例設定
【患者】
- 3歳男児.身長95cm,体重15kg.
【現病歴】
- 過去6か月間に4回の扁桃炎を繰り返していた.夜間の大きないびき,睡眠中の無呼吸,陥没呼吸を家族が認めたため,終夜睡眠ポリグラフ検査が施行された.
- 無呼吸低呼吸指数は15回/時で,重症閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断された.耳鼻咽喉科診察でMackenzie分類Grade IIIの口蓋扁桃肥大とアデノイド肥大を認め,両側口蓋扁桃摘出術およびアデノイド切除術が予定された.
【既往歴】
- 21トリソミー(ダウン症候群)
- 心室中隔欠損症:生後6ヶ月時に根治術施行済み
- 最近の上気道感染は3週間前.感染中は喘息様の発作が軽度あった.
- アレルギー歴なし
- 服用中薬剤:なし(心臓手術後フォロー中だが内服薬なし)
【おもな検査データ・身体所見】
【バイタルサイン】
- 体温 36.8℃,心拍数 105回/分,血圧 90/50 mmHg,呼吸数 24回/分,SpO₂ 96%(室内気)
【血液検査】
- Hb 12.5 g/dL,Ht 37%,WBC 8,500/μL,Plt 25.0×10⁴/μL
- AST 25 IU/L,ALT 20 IU/L,Cr 0.4 mg/dL,BUN 12 mg/dL
- Na 138 mEq/L,K 4.2 mEq/L,Cl 102 mEq/L
- PT-INR 1.05,APTT 30秒
【心エコー】
- VSD術後,遺残短絡なし,駆出率 68%,mild TR
【その他レントゲンなど】
- 胸部X線写真:CTR 55%,肺野清明
- 頸部単純撮影:扁桃腺肥大(Mackenzie分類 Grade III)
Q1. 本症例の術前評価で特に重要なポイントを説明してください.
- OSAの重症度と術後呼吸合併症リスクを評価します.睡眠検査のAHI,最低SpO₂,CO₂貯留の有無,無呼吸や陥没呼吸の頻度,日中症状,覚醒時SpO₂を確認します.本例はAHI 15回/時であり,重症OSAとして少なくとも一晩の入院監視を計画します.
- 扁桃・アデノイド肥大による上気道狭窄を評価します.マスク換気困難,舌根沈下,挿管困難を想定し,開口,顎顔面形態,頸部可動性,過去の麻酔歴を確認します.
- VSD術後の遺残病変を評価します.最近の循環器診療記録と心エコーを確認し,遺残短絡,肺高血圧,心室機能障害,不整脈,チアノーゼ,心不全症状の有無を確認します.本例では遺残病変を認めず,現在の循環器リスクは低いと評価します.
- 最近の上気道炎・下気道感染,出血傾向,動揺歯,服用薬,アレルギーを確認します.
🔍 追加で聞かれたら
- 小児扁桃摘出術後の監視基準では,AHI 10回/時以上または最低SpO₂ 80%未満が重症OSAの目安です.本例はAHI基準に該当します.
- 年齢による入院基準は「3歳未満」です.本例は3歳ちょうどであり,年齢単独では該当しませんが,重症OSAのため一晩の監視が必要です.
- 3歳児では診察への協力が限られるため,Mallampati分類だけで気道を判断しません.
- 無症状で最近の循環器評価が良好な修復済みVSDに対し,心電図,胸部X線,心エコーをルーチンに再検する必要はありません.症状や診察所見の変化,最近の評価がない場合には追加評価を考慮します.
- 輸液・薬剤投与ライン内の気泡は十分に除去します.
補足・解説
- 修復後6か月以上経過し,遺残短絡のないVSDはJCS 2026の低リスク群です.本症例では,VSDのみを理由とする感染性心内膜炎予防抗菌薬は必要ありません.術野感染予防を目的とする抗菌薬とは区別します.扁桃摘出術・アデノイド切除術でIE予防が推奨されるのは,原則として中等度・高リスク患者です.
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