症例設定
【患者】
- 67歳男性.172cm,78kg(BMI26.4)
【現病歴】
- 3か月前から労作時胸痛があり,近医を受診した.
- 心電図で下壁誘導のST低下を認め,冠動脈CTおよび冠動脈造影で三枝病変(左前下行枝90%狭窄,左回旋枝75%狭窄,右冠動脈95%狭窄)を認めた.
- 内科的治療でも症状が残存するため,人工心肺使用下冠動脈バイパス術が予定された.
【既往歴】
- 高血圧症
- 2型糖尿病
- 脂質異常症
【服用中薬剤】
- アスピリン 100mg/日
- アムロジピン 5mg/日
- テルミサルタン 40mg/日
- メトホルミン 750mg/日
- アトルバスタチン 10mg/日
【主な検査所見】
バイタルサイン:血圧 146/85 mmHg,心拍数 72/分・整,SpO₂ 96%(室内気)
身体所見:心音 整,心雑音なし,呼吸音 清,両側下腿に軽度浮腫あり
検査データ:
- 血液検査:Hb 13.8 g/dL,Plt 22.5×10⁴/μL,BUN 22 mg/dL,Cr 1.1 mg/dL,eGFR 54 mL/min/1.73m²,HbA1c 7.2%,Na 138 mEq/L,K 4.3 mEq/L,Cl 105 mEq/L
- 凝固検査:PT-INR 1.05,APTT 32秒
- 心電図:洞調律,下壁誘導(II, III, aVF)でST低下
- 心エコー:左室駆出率(LVEF)45%,下壁の壁運動低下,軽度僧帽弁逆流,左室拡張末期径 52mm
- 冠動脈造影:三枝病変(上記記載の通り)
- 呼吸機能検査:%VC 92%,FEV1.0% 76%
- 頸動脈エコー:両側に軽度プラークあり,有意狭窄なし
【予定術式】
- 人工心肺使用下冠動脈バイパス術(CABG)
- 左内胸動脈→左前下行枝
- 大伏在静脈グラフト→左回旋枝
- 大伏在静脈グラフト→右冠動脈
Q1: この患者の術前評価において,麻酔管理上重要なリスク因子を3つ挙げ,説明してください..
- 第一に,三枝に高度狭窄がある重症冠動脈疾患です.麻酔導入時の低血圧や頻脈によって心筋酸素需給バランスが破綻し,心筋虚血を生じる危険があります.
- 第二に,LVEF 45%で下壁壁運動低下を伴う左室収縮能低下です.麻酔導入時の循環抑制,周術期心不全,人工心肺離脱困難のリスクとなります.
- 第三に,軽度の腎機能低下です.人工心肺,低心拍出量,血行動態不安定などにより,術後急性腎障害を発症するリスクがあります.
🔍 追加で聞かれたら
- 2型糖尿病があり,周術期高血糖,感染,創傷治癒遅延などにも注意します.
- 軽度下腿浮腫があり,潜在的なうっ血や容量過剰がないかを確認します.
- 右冠動脈高度狭窄があるため,右室虚血や右室機能低下にも注意します.
- アスピリン,テルミサルタン,メトホルミンなどについて,施設方針に基づく周術期の継続・休薬を確認します.
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