まっすー


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📝 問題リスト
🤔 オピオイドの基礎概念(耐性・依存・OIH)(▼)
- オピオイド耐性とは何ですか
- 📘 オピオイドの退薬症状(離脱症状)について,症状・鑑別・対応を説明してください
- オピオイド誘発性痛覚過敏(OIH)とは何ですか.耐性との違いも含めて説明してください
🤔 さまざまな副作用・症状対策(▼)
- 📘 モルヒネの主な副作用とその対策について説明してください.
- 📘 術後,誤ってオピオイドが過量投与された場合,どのような症状が出現すると考えられますか.
🤔 オピオイド投与中患者の周術期管理(▼)
- 📘 オピオイド内服中の患者を麻酔する場合,術前に得ておく情報にはどのようなものがありますか?
- 📘 癌性疼痛のため長期にオピオイドを使用している患者の術前のオピオイドはどのように管理しますか?
- 📘 癌性疼痛のため長期にオピオイドを使用している患者の術中のオピオイド必要量はどうなりますか?
🤔 緩和ケア・終末期(▼)
- 緩和ケア領域における呼吸困難への対処法にはどのようなものがありますか.
- 癌末期患者における胸水穿刺の注意点について説明してください.
- 末期がん患者の腹水への対処にはどのようなものがありますか.
👥 はじめに



オピオイド投与中の患者さんが他の手術を受けることありますもんね



そうね.開腹手術も骨折手術といろいろね.オピオイド耐性がついていることがあるから,いつもよりしっかり鎮痛が必要なことがある.



術後も気をつけないとですね



そう.足りなくて疼痛を訴えることもあれば,過量投与になって呼吸抑制などが出ることもある.観察を慎重に
Keywords
モルヒネ 腹水 退薬症状 離脱症状 オピオイド 胸水
🤔 オピオイドの基礎概念(耐性・依存・OIH)
オピオイド耐性とは何ですか
- 長期間オピオイドを使用することにより,同じ効果を得るためにより多くの用量が必要となる状態です.
- 機序は複合的で,μ受容体の脱感作(リン酸化による応答性低下),受容体の内在化やダウンレギュレーション,細胞内シグナル伝達の変化,NMDA系の賦活などが関与するとされています.
- 臨床的には,鎮痛効果だけでなく,悪心・嘔吐や眠気などの副作用に対しても耐性が形成されます.一方で,便秘や縮瞳に対しては耐性が生じにくいとされています.呼吸抑制への耐性については一定の報告があるものの,腎機能低下時や急速な増量時には過量投与に伴う呼吸抑制が問題となりうるため,慎重なモニタリングが必要です.
補足・解説
- 耐性が生じる速度は副作用ごとに異なります.悪心・嘔吐や鎮静への耐性は比較的早く(数日〜1週間程度で)形成されるのに対し,便秘への耐性はほとんど形成されません.このため,オピオイド長期投与中も緩下剤の継続が必要です.縮瞳も同様に耐性が生じにくく,オピオイド使用中の患者の瞳孔所見の評価では,この点を考慮に入れます.
耐性・身体依存・精神依存・OIHの4概念は混同されやすいため,以下に整理します.
| 概念 | 定義 | 機序 | 臨床的対応 |
|---|---|---|---|
| 耐性 | 同じ効果に必要な用量が増加 | 受容体脱感作・ダウンレギュレーション等 | 増量で効果回復.ローテーションも考慮 |
| 身体依存 | 急な中止で離脱症状が出現 | 代償的な神経適応の露呈 | 漸減で予防.正常な生理的反応 |
| 精神依存(嗜癖) | 強迫的な薬物使用パターン | 報酬系の変化 | 専門的介入.癌性疼痛の適切使用ではまれ |
| OIH | オピオイド投与で痛覚が増強 | NMDA系活性化・グリア活性化等 | オピオイド減量・ローテーション・ケタミン |
📘 オピオイドの退薬症状(離脱症状)について,症状・鑑別・対応を説明してください
- オピオイドの長期使用により身体依存が形成され,突然の中止や拮抗薬(ナロキソンなど)の投与により退薬症状が出現します.
- 症状は中止後数時間で始まり,数日で最も悪化した後,徐々に改善します.主な症状には以下のものがあります.
- 予防には漸減が重要で,急な中止を避け,患者背景(使用期間,用量,原疾患,全身状態など)に応じて段階的に減量します.
【主な症状】
- 自律神経症状:異常発汗,流涙,鼻汁,散瞳,鳥肌,頻脈,高血圧
- 消化器症状:下痢,嘔吐,食欲不振,腹痛
- 全身症状:筋肉痛,関節痛,あくび,悪寒・発熱,倦怠感
- 精神症状:不安,不快感,抑鬱,易刺激性,不穏,不眠
【病棟での鑑別を含めた対応】
- 術後の病棟で退薬症状を疑う場合は,まず鑑別が重要です.敗血症,術後せん妄,代謝異常,甲状腺クリーゼなどが類似症状を呈するため,バイタルサイン,自律神経症状,消化器症状,精神症状を総合的に評価し,術前のオピオイド使用歴も確認します.
- 退薬症状と判断したら,まず術前ベースラインのオピオイド量が確保されているかを確認し,不足があれば補充します.
- その上で,症状に応じてレスキュー(1時間量程度)を頻回に投与し,症状の改善をみながら調整します.
補足・解説
- 薬剤により発症時期は異なります.短時間作用性オピオイドでは,中止後数時間〜12時間程度で症状が出現し始め,24〜72時間でピークに達し,多くは1週間程度で徐々に改善します.一方,メサドンなど長時間作用性薬剤では発症が遅れ,持続も長くなる傾向があります(なお,メサドンは日本では使用が限定的であり,国内で長時間作用性オピオイドとしては貼付フェンタニルや徐放製剤が中心です).
- 減量速度の目安としては「1週間で25〜50%程度」という記載もありますが,実際には患者の状態や治療環境(外来か入院か,終末期かどうか)によって大きく異なるため,一律に適用できるものではありません.
- 身体依存は「精神依存(嗜癖)」とは異なる概念です.身体依存は正常な生理的反応であり,適切な漸減により安全に管理できます.一方,精神依存はオピオイドの強迫的な使用パターンを特徴とし,癌性疼痛への適切なオピオイド使用で精神依存が生じることはまれです.
- 退薬症状はそれ自体が生命を脅かすことはまれですが,頻脈・高血圧は心筋虚血のリスクとなりうるため,特に心疾患合併例では迅速な対応が重要です.
オピオイド誘発性痛覚過敏(OIH)とは何ですか.耐性との違いも含めて説明してください
- OIH(Opioid-Induced Hyperalgesia)は,オピオイドを投与すること自体により,かえって痛みに対する感受性が増強する現象です.
- 耐性では「オピオイドの鎮痛効果が弱まる」のに対し,OIHでは「痛覚そのものが増強する」点が異なります.最大の臨床的な違いは,耐性はオピオイドを増量すれば鎮痛が得られますが,OIHではオピオイドを増量しても痛みが十分に改善せず,場合によってはかえって痛みが増悪することがある点です.
- OIHが疑われる場合の対応としては,オピオイドの減量やローテーション,NMDA受容体拮抗薬(ケタミン)の使用などが考慮されます.
補足・解説
- OIHの機序としては,脊髄レベルでのNMDA受容体の活性化,下行性疼痛抑制系の機能低下,グリア細胞の活性化による神経炎症などが関与するとされています.
- 臨床的にはOIHと耐性の鑑別は難しいことも多いですが,鑑別のヒントとして,耐性であれば痛みの範囲は元の疼痛部位に限局する傾向がありますが,OIHではもとの疼痛部位を超えて痛みが広がる,アロディニアや灼熱痛など痛みの性質が変化するといった特徴がみられることがあります.
- 臨床的には,オピオイドを増量しても痛みが改善しない,あるいはむしろ悪化する場合にOIHを積極的に疑います.
🤔 さまざまな副作用・症状対策
📘 モルヒネの主な副作用とその対策について説明してください.
- 便秘は最も高頻度に発生し,耐性が生じにくいため,投与開始時から緩下剤(酸化マグネシウム,センノシドなど)を使用します.効果不十分な場合はナルデメジン(末梢性μ受容体拮抗薬)の追加を検討します.
- 悪心・嘔吐は投与初期に多く,制吐薬(メトクロプラミド,オンダンセトロンなど)で対応します.通常は数日〜1週間で耐性が形成されます.
- 眠気も投与初期に出現しますが,通常は一過性です.持続する場合は減量やオピオイドローテーションを検討します.
- 呼吸抑制は,慢性疼痛患者では耐性により臨床的に問題となることは少ないですが,急な増量時,過量投与,肝腎機能低下時には注意が必要です.
- その他,口渇,排尿障害,掻痒感,錯乱などが起こりえます.
- 掻痒感は,オピオイド性掻痒はヒスタミン機序だけではないため,原因を評価したうえで対症療法を行い,必要に応じて減量やオピオイドローテーションも考慮します.
- 錯乱に対しては,まず原因検索(過量投与,腎機能低下,せん妄,脱水,感染など)を行い,原因への対処を優先します.原因の是正が困難な場合はハロペリドールなどの使用を検討します.
- 口渇に対しては,オピオイド減量の他,頻回の水分摂取や口腔内保湿剤の使用などで対応します.
補足・解説
- ナルデメジンは末梢選択的μオピオイド受容体拮抗薬で,中枢の鎮痛作用に影響を与えずにオピオイド誘発性便秘症(OIC)を改善します.日本では2017年に承認され,医療用麻薬適正使用ガイダンスでもOICに対する選択肢の一つとして位置づけられています.
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