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Contents
📝 問題リスト
- 心臓弁膜症の基礎知識
- 心臓弁膜症患者の術前評価について説明して下さい.
- 大動脈弁狭窄症・逆流,僧帽弁狭窄症・逆流それぞれの心雑音はどのように聞こえますか.
- 大動脈弁置換術(開心術)
- 有症状の大動脈弁狭窄症患者の平均余命はどの程度ですか?
- 大動脈弁狭窄症の重症度評価をしてください.
- 大動脈弁狭窄症の手術と,他の疾患の手術の優先度に関して説明してください.
- 大動脈弁狭窄症患者の麻酔導入・循環管理について説明して下さい.
- 大動脈弁逆流症患者の循環管理について説明して下さい.
- 大動脈弁置換術(TAVI)
- 経カテーテル的大動脈弁置換術(以下TAVI)の適応にはどのようなものがありますか?
- TAVIを行う際,麻酔科医として術前カンファではどのような確認が必要ですか?
- TAVIのアプローチにはどのようなものがありますか?
- TAVIの麻酔法を経大腿動脈アプローチ(TF)、心尖部アプローチ(TA)に分けて説明してください.
- rapid pacingとは何ですか?いつ行いますか?
- TAVIの代表的な合併症を挙げてください.
- TAVIによる弁留置後の低血圧の鑑別疾患を挙げてください.
- 弁の位置合わせ中に循環動態が破綻した場合にはどのように対処しますか。
- 僧帽弁手術(開心術)
- 僧帽弁逆流症に対する僧帽弁形成術でのTEEによる術前評価について簡単に説明してください.
- 僧帽弁逆流の評価にはTEEのどのビュー(biplane)が適していますか.
- 僧帽弁手術(MR)の導入時の低血圧にはどのように対処しますか.
- 僧帽弁逆流症の輸液の注意点を述べてください.
- SAMとは何ですか?
- SAM(僧帽弁弁尖の前方運動)への対処について説明してください.
- 僧帽弁形成後に再修復や弁置換術を行うのはどのような場合ですか.
- MitraClip®
- MitraClip®の適応にはどのようなものがありますか.
- MitraClip®の合併症にはどのようなものがありますか?
👥 はじめに

ASのAVRが一番出てる印象ですけど



その通り.頻出.重症度評価,AS自体の循環管理と低血圧の対処がメインだね



僧帽弁手術はあまり出てないですけど,MitraClip®もそろそろ出ますかね



どうだろね.特に試験として出しやすそうということもなさそうだけど.それなら先にTAVIが出そうだけどね.あと,心臓手術はCEAとの優先順位も問われたことがあるからガイドライン読んどいてね
Keywords
大動脈弁閉鎖不全 大動脈弁狭窄 僧帽弁閉鎖不全 僧帽弁逆流 大動脈弁逆流 TAVI rapid pacing MitraClip SAM
🤔 心臓弁膜症の基礎知識
Q. 心臓弁膜症患者の術前評価について説明して下さい.
- 弁疾患の原因(加齢性,虚血性,先天性,炎症性など),症状の有無とその重症度(NYHA分類),心不全の既往,日常生活動作の制限を評価します.
- 画像診断では,心エコーによる弁機能評価(逆流や狭窄の程度,心機能),胸部レントゲンでの心拡大,肺うっ血,胸水の有無を確認します.高齢者や冠危険因子を有する患者では,冠動脈造影による評価も考慮されます.
Q. 大動脈弁狭窄症・逆流,僧帽弁狭窄症・逆流それぞれの心雑音はどのように聞こえますか.
- 大動脈弁狭窄症(AS)では,狭窄部を通過する血流により第2肋間胸骨右縁で収縮中期駆出性雑音が聴取されます.
- 大動脈弁逆流症(AR)では,同部位で拡張早期から漸減する高調性の逆流性雑音を聴取します(拡張早期逆流性雑音).
- 僧帽弁狭窄症(MS)では,心尖部で聴取される低調性の拡張中期雑音が特徴で,左側臥位で増強します.
- 僧帽弁逆流症では,同じく心尖部で収縮期全体にわたる高調性の逆流性雑音を聴取し,左腋窩に放散します(収縮期逆流性雑音).
- 麻酔科医は術中以外で聴診器を当てることはあまりないと思うので,心臓外科手術などはっきりと診断がついている重症の患者でしっかりと聞いておくといいですね.
🤔 大動脈弁置換術(開心術)
Q. 有症状の大動脈弁狭窄症患者の平均余命はどの程度ですか?
- 症状出現後の自然予後は平均5年未満とされ,特に心不全症状出現後は2年,失神出現後は3年,狭心症出現後は5年と報告されています.
- 手術時期が遅れると,たとえ手術を行っても予後改善が限定的となることが知られています.
Q. 大動脈弁狭窄症の重症度評価をしてください.
- 大動脈弁口面積<1.0cm²,最高血流速度≧4.0m/s,平均圧較差≧40mmHgを満たすと重症度判断されます.
- ただし,この数値は正常な左室機能と血流が前提となります.LVEF<50%の場合や求心性肥大により心腔が小さい場合には低流量低圧較差となり重症度を過小評価してしまうおそれがあります(低流量低圧較差大動脈弁狭窄症).
- このような場合,正確に重症度を判定するためには,ドブタミン負荷心エコーを行い,1回拍出量を増加させた状態で評価を行います.
【参照】2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン(日本循環器学会 / 日本胸部外科学会 / 日本血管外科学会 / 日本心臓血管外科学会合同ガイドライン)※外部リンク
- 細かなフローチャートは,日本心臓血管外科学会の2020年改訂版の弁膜症治療のガイドラインを参照にしてください(覚えるのはしんどい).
- 頸動脈の高度狭窄があり,CEAとの優先順位を問われることがあります.
【参照】脳外科手術(CEA)は こちら (noteはこちら)
Q. 大動脈弁狭窄症の手術と,他の疾患の手術の優先度に関して説明してください.
- 大動脈弁狭窄症による自覚症状,重症度,非心臓手術のリスクの程度等を考慮して決定します.
- 基本的に,ASが有症状の場合,他の手術が急を要するものでなければ,大動脈弁狭窄症の手術を先行することが推奨されています.
- 逆に無症状で,心不全等が十分コントロールされており,非心臓手術が高リスクが高く,かつSAVR/TAVIのリスクが低いとされる場合には非心臓手術が優先されます.
- 消化管穿孔や絞扼性腸閉塞の場合(非心臓手術の高リスク分類)は,行わないとそのまま命を失う可能性が極めて高いため,有症状だろうが無症状だろうが,手術が優先されますね(ただしモニタリングしっかり).
【参照】2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン:p107〜108参照(日本循環器学会 / 日本胸部外科学会 / 日本血管外科学会 / 日本心臓血管外科学会合同ガイドライン)※外部リンク
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