まっすー


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📝 問題リスト
🤔 総論・脳梗塞(▼)
- 📘 手術中の脳虚血予防のためのモニタリングにはどのようなものがありますか?
- 📘 周術期の脳虚血の予防方法と,早期発見する方法について述べてください
- 📘 脳梗塞患者に関して,術前評価に必要な情報を挙げてください
- 脳梗塞既往患者の待機手術のタイミング
🤔 NIRS:脳局所酸素飽和度測定(rSO₂)(▼)
- NIRSの測定原理と特徴を簡潔に述べてください
- 📘 NIRSは一般的にどのような手術に用いられますか?
- 📘 rSO₂の基準値と警告基準を述べてください
- 📘 手術中にrSO₂の左右差が見られる場合,どのようなことが考えられますか?
- 📘 rSO₂の有意な低下が見られた場合にはどのような対処を行いますか
- 📘 rSO₂の高値が持続する場合はどう解釈しますか?
🤔 脳波モニタ(▼)
- 平坦脳波になるのは体温が何度になったときですか?
- 📘 BIS値の適正値と,測定値解釈の目安を述べてください
- 📘 麻酔中にBIS値が上昇した場合の原因と対応について説明してください
👥 はじめに



私は経験したことないですけど,術中の脳虚血はこわいですね



もともと頸動脈狭窄のある患者さんや人工心肺を用いる手術,血管内にプラークがたくあんある患者さんなどでは常にリスクがあるからね.



でも,BISって肝心な時に出なくなったり,手術後に脳外科の先生に覆布と一緒にはがされるイメージがありますね!



あれやめてほしいよね・・.脳外科的には「おわったー!」って感じなんだろうけど・・
Keywords
脳虚血 脳波 BIS NIRS 局所脳組織酸素飽和度 脳梗塞
🤔 総論・脳梗塞
📘 手術中の脳虚血予防のためのモニタリング方法を挙げてください
- 非侵襲的なものとして,脳波モニタ(虚血による徐波化や左右差の検出),BISモニタ(重度の脳虚血や深麻酔で低下),NIRS(脳局所酸素飽和度rSO₂の連続的測定)が一般的に用いられます.
- その他に,誘発電位モニタリング(SEP・MEP),経頭蓋ドップラー(TCD:中大脳動脈血流速度の測定や微小塞栓の検出),頸静脈酸素飽和度(SjvO₂:全脳の酸素需給バランスの評価),脳組織酸素分圧(PbtO₂:侵襲的だが局所酸素化を直接測定可能)なども症例により用いられます.
補足・解説
- 手術の種類やリスクに応じて組み合わせて使用されます.
- SjvO₂やPbtO₂は,重症頭部外傷などを扱う一部の高度救命センターや脳外科ICUで用いられることがありますが,一般の周術期管理ではNIRSや脳波モニタがより頻用されるのが日本の実情です.
| 測定対象 | 特徴 | |
|---|---|---|
| 脳波 | 脳の電気的活動 | 虚血で徐波化→振幅低下→平坦化 |
| BIS | 処理脳波(前頭部) | 簡便だが薬剤・EMGの影響あり |
| NIRS | 脳局所酸素飽和度 | 非侵襲・連続的,前頭部限定 |
| TCD | 中大脳動脈血流速度 | 塞栓検出にも有用,検者依存性高い |
| SjvO₂ | 頸静脈球酸素飽和度 | 全脳の酸素需給バランスを反映 |
| PbtO₂ | 脳組織酸素分圧 | 局所を直接測定,侵襲的 |
| SEP・MEP | 神経伝導路の機能 | 脊髄・皮質の虚血検出 |
📘 周術期の脳虚血の予防方法と,早期発見する方法について述べてください
【予防】
- 血圧管理:一般に,平均動脈圧を患者のベースラインのおおよそ±20%以内に保つことが望ましいとされますが,少なくともMAP 65mmHg未満の低血圧は避けるように管理します.
- 特に高血圧患者では自動調節範囲が高圧側に偏位しているため,より高めのMAP維持を考慮します.
- PaCO₂はnormocapniaを維持します. 低酸素,貧血,低体温を避けます. 血糖管理にも注意を払います(高血糖は虚血性脳障害を増悪させうるため).
【早期発見】
- 術前に瞳孔所見を含む神経学的所見を必ず記録しておきます.
- 術中は血圧の変動に注意し,必要に応じてNIRS(rSO₂),脳波モニタ,BISなどのモニタリングを行います.
- 術後は可能な限り早期に,意識レベル,瞳孔所見,四肢の運動・感覚を術前のベースラインと比較して評価します.異常が疑われる場合は速やかに脳画像検査を検討します.
補足・解説
- 術前の神経学的所見の記録は非常に重要です.記録を怠ると,術後に瞳孔不同などが認められた場合に,それが新規所見なのか既存のものなのか判断できなくなります.
- 高血糖は虚血部位の乳酸産生を亢進させ,虚血性神経障害を増悪させることが知られています
- 脳梗塞患者に特化した厳密な目標値は一定していませんが,周術期全般では血糖をおおよそ140〜180 mg/dL程度にコントロールし,極端な高血糖・低血糖を避ける方針が多くのガイドラインで推奨されています.
- 周術期脳卒中は診断と介入の遅れが予後に直結するため,術後せん妄との鑑別が難しい場合でも,少しでもおかしいと感じたら早期に脳卒中チームへの相談や,画像検査を躊躇しない姿勢が重要です. NIRSやBISの詳細については下記参照.
📘 脳梗塞患者に関して,術前評価に必要な情報を挙げてください
- 発症時期(特に発症から3ヶ月以内かどうか)と経過,ADL,意識状態を確認します.
- 脳梗塞の原因(アテローム血栓性,心原性塞栓,ラクナ梗塞など)を把握します.
- 神経学的所見として,麻痺の程度(拘縮の有無を含む),嚥下機能,構音障害の有無を評価します.特に嚥下機能は術後の誤嚥性肺炎のリスク評価において重要です.
- 抗血小板薬・抗凝固薬の内服状況と,中止・続行の計画を確認します.
- 画像検査として,頭部MRI/CT,頸動脈エコー,心エコーなどで病変の程度や新規病変の有無を評価します.
- 基礎疾患のコントロール状況(糖尿病,高血圧,心房細動など)を確認します.
補足・解説
- 術中の低血圧には特に注意し,早めに昇圧を行います. 頸動脈エコーはルーチンで全例に行うものではなく,頸動脈雑音の聴取,脳梗塞の既往,頸動脈狭窄が既知の場合など,ハイリスク患者を中心に実施します.
📘 脳梗塞の既往がある患者について,待機手術の適切なタイミングをどのように考えますか?
- 脳梗塞発症後は,一定期間にわたり周術期脳卒中のリスクが上昇します.
- 発症から3ヶ月以内は周術期脳卒中リスクが最も高く,待機可能であれば手術の延期を検討します. 複数の疫学研究では,90日以降にリスクが低下し,6〜9ヶ月の経過でさらにベースラインに近づくと報告されているため,待機可能な手術ではこの期間まで待つことが望ましいと考えられます.
- TIAの既往も脳梗塞と同様に周術期脳卒中リスクを増加させるため,発症からの期間を考慮して手術時期を検討します. ただし,手術の緊急性・延期によるリスクと,脳卒中再発リスクを考慮して個別に判断する必要があります.
補足・解説
- TIAは症状が残らないため軽視されがちですが,リスク評価・手術タイミングの考え方は脳梗塞とほぼ同様に扱います.
- 緊急手術ではタイミングを選べないため,リスクを認識した上で,血圧管理や脳灌流圧の維持に特に留意した麻酔管理を行います.
- 発症からの期間だけでなく,残存する神経学的障害の程度や,原因の治療状況(心房細動に対する抗凝固療法の開始,頸動脈狭窄に対するCEA/CASの施行済みかなど)も手術時期の判断に影響します.
- 症候性の高度頸動脈狭窄を有する場合は,一般の頸動脈狭窄ガイドラインに基づきCEA/CASの適応を評価した上で手術時期を検討しますが,非症候性狭窄に対して周術期リスク軽減のみを目的として予防的にCEA/CASをルーチンで行うことは推奨されていません.
🤔 NIRS:脳局所酸素飽和度測定(rSO₂)
NIRSの測定原理と特徴を簡潔に述べてください
- 近赤外光(波長700〜1000 nm付近)が生体組織を透過する性質を利用し,酸化ヘモグロビンと脱酸化ヘモグロビンの吸光度の差から,脳局所の酸素飽和度(rSO₂)を算出します.
- 主な特徴として,非侵襲的かつリアルタイムに連続測定が可能であること,信号は主に静脈血成分を反映するように設計されていること(典型的には動脈:静脈比25:75〜30:70としてアルゴリズムが組まれている),
- 前頭部にセンサーを貼付するため主に前頭葉領域の酸素化を反映することが挙げられます
補足・解説
- 臨床で一般的に使用される機種として,INVOS®やNIRO®などがあります.
- 動脈:静脈の比率は機種ごとの前提設定(例:INVOS®では25:75,他機種では30:70など)であり,アルゴリズムにより差があります.
- rSO₂は動脈血と静脈血の混合信号であるため,SpO₂(動脈血のみ)やSjvO₂(静脈血のみ)とは異なります.
- 主な限界として,頭蓋外組織(皮膚・頭蓋骨など)の血流の影響を受けうること,測定領域が前頭部に限られ深部の虚血は検出困難であることが挙げられます.
📘 NIRSは一般的にどのような手術に用いられますか?
- 心臓血管外科手術(人工心肺使用手術,上行・弓部大動脈置換術)
- 頸動脈内膜剥離術(CEA)
- 脳神経外科手術(脳動脈瘤手術,もやもや病手術など)
- 小児心臓手術(特に新生児・乳児)
- ビーチチェア位での肩関節手術 頸動脈狭窄を有する患者の非心臓手術
など,脳虚血リスクの高い手術で広く使用されています.
補足・解説
- 心臓血管外科手術や小児心臓手術ではNIRSが広く用いられていますが,CEAや非心臓手術での使用頻度は施設によって差があります.特にCEAでは頸動脈クランプ前後のrSO₂変化がリアルタイムに観察でき,シャントチューブ挿入の必要性判断にも役立ちます.
- ビーチチェア位では座位による脳灌流圧低下が問題となるため,rSO₂による連続モニタリングが有用とされています.
📘 rSO₂の基準値と警告基準を述べてください
- 多くの成人において,前頭部rSO₂は70%前後を中心とした値を示し,おおよそ55〜80%の範囲に分布すると報告されています.
- 左右差は通常10%以内です.
- ベースラインからの20%以上の低下,あるいは絶対値50%以下は脳酸素化低下のリスク上昇と関連する閾値として多くの報告で用いられています.
- 絶対値40%未満では神経学的予後不良との関連を示す報告があり,危険水域です.
- 絶対値は個人差が大きいため,術前のベースラインを必ず確認し,ベースラインからの変化を重視することが重要です.
補足・解説
- 実臨床では「ベースラインからの20%低下」を注意を要する黄色信号,「絶対値50%以下」を緊急対応を要する赤信号として段階的に評価するアプローチもあります.
- 単一の公認カットオフが存在するわけではなく,低下の速度や持続時間も重要な判断材料です.
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