ほぼルーチンで使用される心臓血管症例を除いて,周術期,特に手術中に血小板を輸血しなければいけない時というのは,だいたい大量出血🩸していて大変な時です(´・_・`).
なぜ揺らす?血小板濃厚液
血小板濃厚液(PC:Platelet Concentrate)は1袋(10単位)で約200mL,中にはおよそ2000億個(!)の血小板が入っています.保存方法は20〜24℃で振盪(=揺らしながら)保存.ではなぜ揺らすのでしょうか?
- pHの維持:血小板は代謝が活発で、保存中に乳酸を産生しpHが低下しやすいです.揺らすことでガス交換が保たれ,酸性化を防ぎます.
- 血小板凝集の防止:動きが止まると血小板は互いにくっついてしまうので,それを防ぎます.
- 酸素供給:血小板の代謝には酸素が必要.揺らすことで少しでも酸素が供給されやすくなります(ただし保存バッグの酸素透過性は低く,この点の寄与はそこまで大きくありません)。
赤血球製剤は冷蔵保存しますが,血小板は冷やすと活性化・凝集してしまうため常温保存が必要です.保存期間はわずか4日間(施設によっては5日).細菌汚染リスクを考えて短めに設定されています.しかも薬価は10単位で約77,000円!とても貴重なので有効利用が切に望まれます.
どんな時に使う?
明確な投与開始基準はありませんが,一般的に血小板数が5万/μLを下回る,あるいはその可能性が高い場合に投与が考慮されます。
局所麻酔下の小手術であれば1〜2万/μL程度でも施行できると報告されていますが,必要数は手術の種類やリスクによって変わります.
また、循環血液量の1.5倍に達する大量出血が生じた場合も適応となります.ただし大学病院や医療センターなどを除く多くの病院では,血小板を常備していないため(あっても少量),その段階でオーダーしても間に合わないことが多いのが現実.状況を見ながら早めに判断してオーダーすることが望まれます(難しいんですけどね).
10単位(200mL)でどれくらい増える?
血小板の予測増加数は以下の式で表されます。
予測血小板増加数(/μL)= [製剤血小板総数 ÷ 循環血液量(L)] × (2/3)
例:体重60kg(循環血液量 約4L)、輸血血小板総数2000億個の場合,約3.5万/μLの上昇が見込まれます.
最後の “2/3” は「分布係数」.投与された血小板の一部は脾臓に取り込まれて末梢血に出てこないためです.なお実際の上昇は個人差が大きく,妊婦では循環血液量が1.4〜1.5倍に増えるため計算結果も変わってきます.
まとめ
- 血小板濃厚液(PC):1袋(10単位)=約200mL,血小板2000億個
- 保存方法:20〜24℃で振盪保存.理由は
- pHの維持(乳酸産生による酸性化を防ぐ)
- 血小板凝集の防止
- 酸素供給(寄与は小さいが補助的に)
- 保存期間:原則4日間(施設によっては5日)。薬価は約77,000円/10単位
- 投与基準:
- 一般に5万/μL未満を目安に投与を考慮
- 小手術(局所麻酔下)では1〜2万/μLでも可能と報告あり
- 循環血液量の1.5倍出血でも適応
- 効果:10単位でおよそ3〜4万/μLの上昇が期待できる
👉 まとめると:血小板輸血は「貴重で保存が難しい」製剤.適切な保存と適応判断,早めのオーダーが臨床ではとても大事!