⚠️ 書籍版修正報告(2025/10/08更新) ⚠️

書籍版で生じた修正事項等を掲載していきます🙇‍♂️

① P76 スガマデクスの投与量決定方法について
  • 理想体重と記載していますが,一般的には実体重ベースで投与します🙇‍♂️
  • ロクロニウムを理想体重ベースで投与した場合は理想体重ベースの投与も許容されるようですが,過少投与のほうがリスクであるため,あえて少なめに投与するメリットはありません.
  • P162ページ(肥満の章)では実体重と書いているのですが・・.整合性が取れていませんでした.
  • なお,いくつかの報告では,実体重ベースでも理想体重ベースでも,安全性に差がないとはされています.
  • ロクロニウムは筋弛緩モニターを用いながら調節しましょう.
② p52〜54 問題⑨の抜け落ち.回答部分の⑨は⑩の回答例

【回答例】

  • 下肢の神経機能チェック:硬膜外血腫(や稀だが脊髄虚血)のリスクがあり,見逃せば永続的な後遺症に繋がるため,背部痛の有無や,定期的に下肢の運動と知覚をチェックします.
  • 術後の心筋虚血.冠動脈ステント留置の既往がありリスクが高いです.12誘導心電図と継続的なSTモニタリングを行います.必要時はトロポニン採血も.
  • 腎機能評価:もともと腎機能が悪く,大動脈遮断の影響でAKIのリスクが高いです.時間尿量の厳密なモニタリングを行います.
  • 腹腔内出血(リーク含),腸管虚血の徴候:ドレーン,腹部膨満,バイタルサイン,乳酸値等をチェック
    下肢の虚血(グラフトの血栓性閉塞など)のチェック:下肢の色調,必要時はドプラを使用します.
③ p156 問題⑩の抜け落ち(ブログ版には抜け無し)

説明例

  • ご家族様の懸念は当然のことです.詳しく説明させていただきます.
  • 確かに現時点で術前より筋力が低下していることは私たちも認識しています.
  • 手術自体は予定通り胸腺腫を完全に摘出することができました.この点では成功と言えます(この点については外科医から説明があっていると思います).
  • 病理検査の結果はまだですが,外科医からは腫瘍は完全に切除できたとの報告を受けています.
  • 現在の筋力低下は手術の成否とは別の問題で,重症筋無力症という基礎疾患と手術侵襲が関連しているものと考えております.
  • 重症筋無力症患者さんでは,術後一時的に筋力低下が悪化することがあります.これはクリーゼと呼ばれる状態です.
  • 手術自体のストレス反応や全身麻酔の影響で,一時的に症状が悪化することは想定内の反応です.
  • 通常,適切な治療を継続することで数日〜数週間で改善することが多いです.
  • 現在,神経内科医とも連携して治療を行っています.今後も定期的にカンファレンスを行い,薬剤調整などを検討していきます.
  • 今後の見通しとしては,徐々に筋力は回復することが期待されます.回復には個人差がありますが,多くの場合1〜2週間で術前の状態に戻ります.それまで人工呼吸管理を行います.
  • 長期的には胸腺腫摘出により重症筋無力症自体が改善する可能性があります.約70%の患者さんで症状の改善が報告されています.
  • 現在,呼吸状態や筋力を定期的に評価しています.何か変化があればすぐに対応します.
  • 他にご質問やご心配なことはありますか?
  • 明日には神経内科医も含めた形で,より詳しい説明の機会を設けることも可能です.
  • 定期的に状況をお伝えしますので,何かご不明な点があればいつでもお声がけください.
④ p174 ⑦の問題の抜け落ち.回答例の⑦は本来の⑧の回答(ブログ版は抜け無し)
  • 手術を担当した麻酔科医のさらりーまんです.手術中の状況と現在の状態についてご説明します.
  • 手術の途中で,動脈瘤が破裂し,出血が起こりましたが,脳外科の先生がすぐに対応し,無事クリップで止血することができました.手術は無事終了し,現在は安定しています(大きいので術中破裂の説明はしてたと思うけど).
  • ただし,破裂が起きたため,今後数日間は脳のむくみや,血管が縮んで脳への血液の流れが悪くなること(脳血管攣縮),水頭症といった合併症が起こる可能性があります.そのため,このあと集中治療室(ICU)に移動して,厳密な管理やモニタリングを行っていきます.
  • しばらくは人工呼吸器を使って呼吸を助けたり,お薬で眠った状態にすることがありますが,これは脳の負担を軽くするためで,数時間〜1日程度はお薬で眠った状態を維持することがあります.状態が落ち着いてきたら,少しずつ目を覚ましていきます.
  • これから経過を慎重に見守りながら,神経の状態を継続して評価し,必要な治療を行っていきます.面会や今後の経過については,担当の先生や看護師から随時ご案内しますので,ご安心ください。
  • 何かご心配なことやご質問があれば,いつでもお聞きください.
⑤ p162 肥満患者へのプロポフォール投与量に関して.

【誤】初回導入量は実体重(厳密には除脂肪体重)→ 【正】初回導入量は理想体重(厳密には除脂肪体重)

  • 最近のエビデンスによると,肥満患者に対する麻酔導入時のプロポフォールは、除脂肪体重(LBW)ベースとした計算による投与量を用いると適切で,これにより投与不足と循環動態の安定性を両立できることが示されています.
  • ただし,LBWの算定は難しい場合もあり,IBWや補正体重を用いることが実用的とされています(安全性・有効性ともに差は少ないようです).
  • 麻酔維持においてもLBWやIBWベースのレート調整が安全とされ、過量投与を防ぎつつ十分な鎮静効果が得られる,とされているようです.
  • プロポフォールの投与量については,過去には「導入IBW・維持TBW」方式が推奨されたことがあったようですが,現在は「導入・維持ともにIBWやLBW・ABW基準」が主流となっているようです.

【参考文献リスト例】

  1. Comparison of Fat-Free Mass and Ideal Body Weight as Scalar for Propofol Dosing in Obese Patients
    • Asia Pacific Journal of Anesthesiology, 2023
  2. Efficacy and Safety of Propofol Dosing Based on Ideal Body Weight in Obese Patients
    • Journal of Emergency and Critical Care Medicine, 2022
  3. The appropriate dose of propofol for anesthesia induction in the obese patient
    • Annals of Palliative Medicine, 2020
  4. Induction of anaesthesia with propofol according to the ideal vs. total body weight in obese patients
    • South African Journal of Anaesthesia and Analgesia, 2015
  5. Different dosing regimens for propofol induction in obese patients: Ideal, lean, or total body weight?
    • Saudi Journal of Anaesthesia, 2013
  6. Peri‐operative management of the obese surgical patient
    • Anaesthesia, Association of Anaesthetists, 2015
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