🤔 SBTとは?成功してもすぐ抜管できるとは限らない理由

♦️ はじめに
「SBTしようか」
人工呼吸管理中の患者さんについて,こんな言葉を聞くことがあります.
SBTはSpontaneous Breathing Trialの略で,日本語では「自発呼吸トライアル」と呼ばれます.
人工呼吸器からの離脱を考える際に,患者さんが自発呼吸を続けられるかどうかを評価する試験です.
この記事では,主にICUで侵襲的人工呼吸管理を受けている成人患者のSBTについて簡潔に紹介します.
🔹 SBTでは何を確かめる?🤔
SBTでは,人工呼吸器による補助を減らした条件で,患者さんが一定時間,自発呼吸を維持できるかをみます.方法には,Tピースを使うものや,低いプレッシャーサポート(PS)などの圧補助を残すものがあります.
「自発呼吸」といっても,試験中の補助を必ずゼロにするわけではありません.AARCの2024年ガイドラインも,圧補助を使う方法と使わない方法のどちらも選択肢として挙げています.
🔹 始める前にみること☝️
まず,人工呼吸が必要になった原因が改善に向かっているかを確認します.そのうえで,酸素化,血行動態,自発的な吸気努力があるかなどを評価し,SBTを行える状態かどうかを判断します.
数値の例としては,国内の3学会合同プロトコル(2015年)では,FiO₂ ≦ 0.5,PEEP ≦ 8 cmH₂Oの条件でSpO₂>90%を,開始前の酸素化の基準に挙げています.ただし,これはあくまで同プロトコルにおける基準の一例であり,すべての施設・患者さんに共通する閾値ではありません.
実際には酸素化だけでなく,循環や呼吸の様子,全身状態も合わせて評価します.
開始前の評価でよく目にする指標に,RSBI(rapid shallow breathing index)があります.1分間の呼吸数を1回換気量(L)で割った値で,浅く速い呼吸を捉えるために使われてきました.3学会合同プロトコルでは「105回/分/L未満」が開始基準の一つとされています.
一方で,AARCの2024年ガイドラインは,SBTの開始を判断する際にRSBIの計算は必ずしも必要ないと提案しています(条件付き推奨).RSBIは従来用いられてきた指標ですが,SBTを始めるための必須条件と考える必要はありません.
🔹 試験中は「変化」をみるのが大事☝️
SBT中は,呼吸数や呼吸パターン,酸素化,心拍数・血圧などの循環状態,患者さんの苦しさや不快感を観察します.開始時には落ち着いていても,時間とともに呼吸が苦しくなることがあります.
大切なのは,ある時点の測定値だけで判断するのではなく,開始前からどう変化したかをみることです.呼吸や循環が悪化した場合は試験を中止し,原因を評価します.AARCのガイドラインと3学会合同プロトコルのいずれでも,評価項目として呼吸パターン,酸素化,循環状態,苦痛が挙げられています.
🔹 SBTに成功しても,すぐ抜管できるとは限らない?🤔
ここは混同しやすいポイントです.SBTは気管チューブが入ったまま行います.そのため,人工呼吸器の補助を減らしても自発呼吸を続けられるかは分かりますが,チューブを抜いた後に上気道を通して呼吸し,気道を守り,分泌物を排出できるかまでは,SBTの結果だけでは十分に判断できません.
そこで抜管前には,意識状態,咳の強さ,分泌物の量や排出能力,上気道狭窄のリスクなどをSBTとは別に評価します.
たとえばSBT中の呼吸が安定していても,咳が弱く痰が多い場合は,抜管失敗のリスクを考える必要があります.実際,SBTに成功した患者さんを対象とした観察研究でも,咳の弱さや分泌物の多さは抜管失敗と関連していました.AARCのガイドラインも,気道を守る能力と分泌物を排出する能力を,SBTとは別にみる要素として挙げています.
抜管の条件を満たし,抜管後喘鳴のリスクが高いと考えられる患者さんでは,カフリークテストを行うことがATS/CHESTのガイドラインで提案されています.ただし,全員に行う検査ではありません.カフリークテストの方法や結果の解釈については,こちらの記事やnote記事でも解説しています.
AARCのガイドラインと3学会合同プロトコルも,抜管の評価をSBTとは別の段階として扱っています.
SBTの成功は抜管を考慮する上で重要なステップですが,抜管後に求められる呼吸能力をすべて確かめたわけではないため,それだけで抜管可能とは判断できません.
📝 まとめ
🔑 Key Points
- SBTを理解するときは,「SBTを始められる状態か」,「SBT中に自発呼吸を保てるか」「抜管後に気道を守れるか」の3段階を順に考えると整理しやすいです😊☝️
- SBTは,人工呼吸器の補助を減らした状態で,患者さんが自発呼吸を続けられるかを確かめる試験.
- 開始前には,人工呼吸が必要になった原因が改善に向かっていることを前提に,酸素化,循環,自発的な吸気努力などを評価する.
- RSBIは従来用いられてきた指標だが,必須条件ではない.
- 試験中は,ある時点の数値だけでなく,開始前からの変化が重要.
- SBTに成功しても,それだけで抜管できるとは限らない.
- 抜管後に気道を維持でき,分泌物を排出できるかは,意識状態や咳の強さ,分泌物の量,上気道狭窄のリスクなどから別に評価する必要がある.
📚 References & Further reading
- Roberts KJ, Goodfellow LT, Battey-Muse CM, et al. AARC Clinical Practice Guideline: Spontaneous Breathing Trials for Liberation From Adult Mechanical Ventilation. Respir Care. 2024;69(7):891–901. doi:10.4187/respcare.11735.
- 日本集中治療医学会,日本呼吸療法医学会,日本クリティカルケア看護学会.人工呼吸器離脱に関する3学会合同プロトコル.2015年.
- Khamiees M, Raju P, DeGirolamo A, et al. Predictors of extubation outcome in patients who have successfully completed a spontaneous breathing trial. Chest. 2001;120(4):1262–1270. doi:10.1378/chest.120.4.1262.
- Girard TD, Alhazzani W, Kress JP, et al. An Official American Thoracic Society/American College of Chest Physicians Clinical Practice Guideline: Liberation from Mechanical Ventilation in Critically Ill Adults. Rehabilitation Protocols, Ventilator Liberation Protocols, and Cuff Leak Tests. Am J Respir Crit Care Med. 2017;195(1):120–133. doi:10.1164/rccm.201610-2075ST.