よくある麻酔導入後の低血圧|昇圧薬を追加する前に考えたいこと🤔

♦️ はじめに
麻酔導入時に血圧が下がった.
こういうとき,エフェドリンやフェニレフリンなどの昇圧薬を投与することはよくあります.
実際,多くの場合それで血圧は上がります.
ただ,
「麻酔導入時は麻酔薬の影響でよく血圧が下がる」
⬇️
「一時的なのでとりあえず昇圧薬」
だけで考えていると,うまくいかないことがあります.
何回投与しても血圧が上がらない.
だんだん焦ってくる😫
そんなときには,
そもそも,いつもと違うこの血圧低下は,何の影響で起きているのか?
と一度戻って考える必要があります.
どのような事象にも言える内容ですが,身近な「血圧」を例に話したいと思います.
🔹 血圧低下という「結果」だけを見ない
麻酔中の低血圧には,いろいろな原因があります.
- 血管拡張.
- 出血や術前脱水など循環血液量の減少
- 心原性の心拍出量の低下
- 不整脈
- 換気や胸腔内圧の問題
もちろん,実際にはこれらが重なっていることもあります.
だから,
「血圧が低い」
という一つの数字だけでは,原因までは分かりません.
麻酔薬の一時的な影響が主な原因であれば,昇圧薬などへの反応をみながら対応できることが多いです.
でも反応が乏しいなら,
いま使っている薬は,本当に原因に触れているのか
を考え直した方がよいことがあります.
🔹 たとえば,換気の問題でも血圧は下がる
麻酔導入後に,手動換気から人工呼吸器への切り替えを忘れて,高い気道内圧がかかり続けていたとします.
胸腔内圧が上がれば,静脈還流が減少し,心拍出量も低下します(ほかにも色々と弊害はありますが).
結果として血圧は急激に下がります.
このとき,先ほど挙げたように,
「導入直後だから,麻酔薬の影響だろう」
と考えて昇圧薬を追加しても,原因そのものは残ったままです.
実際には,よくある原因を考えてまず対処しつつも,頭の片隅では血圧が下がったという結果だけでなく,
- 換気はどうなっているか
- 気道内圧は高くないか
- 心拍数や心電図に変化はないか
- 出血や循環血液量の変化はないか
- 今使っている薬に反応しているか
と,少し広げて見る必要があります.
🔹 「いつもの対応」が効かないときにどうするかが大事
臨床では,パターンで考えること自体は悪いことではありません.
むしろ,毎回すべてをゼロから考えていたら間に合いません.
「この状況ならまずこれ」
というテンプレートは必要です.
ただし,
テンプレートが効かなかったときに,そのまま繰り返し続けないこと
も同じくらい大切です.
昇圧薬を使った.でも反応しない.
なら,
「薬が足りないのか?」
だけではなく,
自分が想定している原因そのものが違うのではないか?
と考える.
ここが病態生理が役に立つところです.
🔹 病態生理は,困ったときに戻る場所
病態生理を詳しく暗記して説明することだけが目的ではありません.
いつもの対応がうまくいかないときに,
「血圧は何で決まっていたのだっけ?🤔」
「何が起きたら,この現象が起きうるんだっけ?🤔」
と戻って考える.
そのための材料になります.
経験したことがあるトラブルなら,
「あ,これ前にもあった,見落としやすい”あれ”だ」
とすぐ気づけるでしょう.
でも,すべてのトラブルを経験してから覚えることはできません.
だから,
経験していないことでも,構造から少し考えられる
というのは,臨床では大事なのだと思います.
📝 Take Home Message
今回は血圧を例に話しましたが,何かが起きたとき,「とりあえずこれかな」と対処を始めるのは間違いではありません.
ただ,
その「いつもの対応」が効かないときには,「もっと同じことをする」前に原因へ戻る.
今回で言えば,血圧低下という結果ではなく,
何が起こって,この血圧になっているのか?🤔
と考えてみる.
そうすると,いつものテンプレートから少し外れた患者さんにも対応しやすくなります😊☝️.

今回の話の背景にある「暗記・理解・テンプレート・AIとの付き合い方」について,noteでのシリーズ「臨床の解像度」で考えてみました.
X の記事でも全文公開しています.
よろしければどうぞ😊