📘【想定問題】癌性疼痛管理(膵臓癌)

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症例設定

【患者】

  • 68歳男性。170cm、65kg(BMI22.5)

【現病歴】

  • 3ヶ月前より、労作とは無関係の持続的な心窩部不快感が出現。当初は市販の胃薬で様子を見ていたが改善せず、徐々に鈍痛へと変化。1ヶ月前からは食事摂取により軽度増悪するようになり、食欲不振も伴い体重が3kg減少した。夜間から早朝にかけて痛みがやや強くなることがあり、時折背部への放散痛も自覚するようになり、近医を受診。
  • 腹部超音波検査で膵臓に腫瘤を指摘され、精査加療目的に当院消化器内科紹介となった。上部消化管内視鏡では異常所見を認めず。腹部造影CTにて膵頭部癌の診断に至った。

【既往歴】

  • 高血圧症:アムロジピン5mg/日 内服中。コントロールは比較的良好。
  • 2型糖尿病:グリメピリド2mg/日 内服中。食事療法・運動療法はあまり遵守できていない。HbA1c 7.8%。
  • 喫煙歴:20本/日 × 40年間(3ヶ月前から禁煙)
  • 飲酒歴:ビール500mL/日 × 40年間
【主な検査所見・バイタルサインなど】

血液検査

  • WBC 7,800/μL, Hb 10.2 g/dL, Plt 18.5万/μL
  • TP 6.5 g/dL, Alb 3.2 g/dL
  • AST 45 IU/L, ALT 52 IU/L, T-Bil 1.8 mg/dL, ALP 350 IU/L, γ-GTP 120 IU/L
  • BUN 18 mg/dL, Cre 0.9 mg/dL
  • Na 140 mEq/L, K 4.2 mEq/L, Cl 102 mEq/L
  • PT 100% (INR 1.0), APTT 30.0秒
  • CA19-9 450 U/mL (基準値 <37 U/mL)

画像検査など

  • 腹部造影CT:膵頭部に径3.5cmの不整形で境界不明瞭な低吸収域を認める。上腸間膜静脈への軽度接触を認めるが、明らかな血管壁への浸潤は指摘できない。領域リンパ節に数個の軽度腫大を認めるが、明らかな肝転移や遠隔リンパ節転移は指摘できない。
  • 心電図: 洞調律、ST変化なし、軽度左室高電位
  • 胸部X線: 心胸郭比 52%、肺野に異常影なし
  • 呼吸機能検査: FEV1.0 2.5L, FEV1.0% 75%, %VC 85%
Q1. この患者の術前評価をしてください。

全身状態の評価術前問題点

  • ASA-PS 3(膵癌、糖尿病、貧血、喫煙歴、栄養状態)
  • 栄養状態不良(Alb 3.2g/dL、体重減少3kg)。創傷治癒遅延、免疫力低下、縫合不全のリスク。
  • 軽度貧血(Hb 10.2g/dL)
  • 肝機能異常(T-Bil, ALP, γ-GTP上昇)は胆道系への腫瘍浸潤または圧迫による閉塞性黄疸の可能性を示唆。
  • 糖尿病:血糖コントロール不良(HbA1c 7.8%)、自律神経障害(心窩部痛の性状変化、食欲不振)、末梢神経障害の有無確認。周術期は適宜血糖測定を行い、インスリンを用いてコントロール。
  • 長期喫煙歴と呼吸機能検査結果:術後呼吸器合併症(肺炎、無気肺など)のリスク評価。
  • 高血圧(内服コントロール中)。コントロール状況確認

追加検査の依頼

    • 心エコー:糖尿病、高血圧、喫煙歴があり、侵襲の大きな手術であるため。

    総合評価

    • 栄養状態不良かつ高血圧・糖尿病・長期の喫煙歴(データ上はまずまず)があり,大侵襲手術後の各種コントロールが不良になる可能性や,周術期肺合併症のリスクもあり,総じて高リスクと判断できます。
    • また,播種や切除困難と判断された場合の代替手術案について,外科医から情報をとっておきます。
    Q2. 本症例の麻酔計画について説明してください。
    1. 麻酔方法
    • 全身麻酔+硬膜外麻酔
    • 硬膜外カテーテルはTh8-9またはTh9-10から留置。
    1. モニタリング
    • 標準モニタリング
    • 観血的動脈圧測定(Aライン。Flotrac®など)
    • 中心静脈カテーテル(オキシメトリ付。ScvO₂・CVP測定、輸液・薬剤投与ルートとして)
    • 筋弛緩モニター
    • BISモニター
    1. 麻酔導入・維持
    • 導入:プロポフォール、レミフェンタニル、ロクロニウム
    • 維持:吸入麻酔薬(セボフルランまたはデスフルラン)+レミフェンタニル+硬膜外麻酔(局所麻酔薬+オピオイド)
    1. 術中管理の要点
    • 血糖管理:持続インスリン投与も考慮し、140〜180mg/dLを目標
    • 適切な輸液管理:循環動態の指標(CVP、PPV/SPVなど)を参考にしつつ、輸液・輸血を行います。必要に応じてアルブミン製剤の使用も考慮。
    • 体温管理:低体温の防止。
    • 出血への備え:血液製剤(RCC、FFP、PC)の準備状況確認。
    • 呼吸管理:肺保護換気で。

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