29歳女性。身長152cm、体重87kg。妊娠39週初産婦。血圧158/97mmHg、心拍数103bpm、両下肢に浮腫が著明に認められる。蛋白尿2+。ヘモグロビンは12.2g/dl。胎児仮死の診断で緊急帝王切開が申し込まれた。
1)術前評価と管理
①この患者の術前状態における問題点を列挙してください.
- 高度肥満
- 高血圧,下肢の浮腫,尿タンパクより妊娠高血圧症候群(HDP)が疑われる
- 頻脈(刺激薬の投与?あるいは循環血液量不足?)
- 胎児仮死
②術前に必要な検査を挙げ,説明してください.
- HELLP症候群をきたしていないか(肝酵素上昇や血小板減少など)と深部静脈血栓症のチェック。
- 下肢静脈エコー
- 胎児エコー
- 採血(血算、生化、凝固系、Dダイマー、血糖値、AST/ALT、血圧コントロール)など
2)麻酔法および術中管理
①胎児仮死の緊急度およびあなたが所属する施設のシステムを考慮して麻酔法を選択し、その理由を説明してください。あなたが選択しなかった麻酔法ではいけない理由も説明してください。
- 当施設では胎児仮死の徴候が見られれば全身麻酔で行う。
- 胎児仮死の徴候が一過性であり、凝固異常が見られなかれば区域麻酔で行なってもよいかと。
②輸液の投与法について具体的に述べてください。
- 18G以上で1〜2本の輸液ラインを準備。区域麻酔を行う場合は手技施行中に1本は全開投与。その後は血圧、用量などみあがら適宜調節。
- HDP合併妊婦であり、過剰輸液は浮腫を助長するので注意する。
- 全身麻酔の場合は搬入時から1本は全開投与。あとは適宜調節する
3)周術期危機管理
①児娩出後、呼気終末二酸化炭素分圧低下と血圧の著明な低下を認めました(全身麻酔でしたのですね)。どのように対処しますか。
- DVTによる肺血栓塞栓症の発症が疑わしい(娩出後の羊水塞栓や空気塞栓の報告もあり)。全身麻酔の場合は回路のトラブルや測定機器の異常を素早くチェックし除外しておく。
- 術者に知らせ、応援の麻酔科医を大至急コール。
- 100%酸素、輸液、昇圧薬の使用。TEEで血栓を確認する。診断がついたらヘパリン5000単位静注。循環器コンサルト。
4)術後管理
①術後鎮痛の方法を具体的に説明してください.
- RSB+アセトアミノフェンやNSAIDs併用
- フェンタニルによるIV-PCA