📘 局所麻酔薬中毒【解いて学ぶシリーズ】【全文公開】

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局所麻酔薬中毒

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局所麻酔薬中毒(LAST)について,正しいものを全て選べ

正解:②,③,⑤

① 局所麻酔薬中毒の発症において,肋間神経ブロックは比較的安全であり,血管内誤投与がなければリスクは高いとは言えない. → 誤り


肋間神経ブロックは局所麻酔薬中毒のリスクが高いブロックの代表です.肋間は血流が豊富な部位であり,局所麻酔薬の吸収が速く血中濃度が上がりやすいため,中毒のリスクが高いとされています.


② プロポフォールは局所麻酔薬中毒による痙攣に対して使用可能だが,心抑制作用があるため少量にとどめるべきである. → 正しい


プロポフォールは局所麻酔薬中毒による痙攣に対して使用可能ですが,心抑制作用が強いため少量にとどめる必要があります(ベンゾジアゼピンが第一選択).また,プロポフォールに含まれる脂肪乳剤は濃度が低く(10%),脂肪乳剤治療の代用にはならない点に注意が必要です.


③ 局所麻酔薬中毒に対する脂肪乳剤の推奨投与量は,20%脂肪乳剤を初回ボーラスとして1.5 mL/kg,その後0.25 mL/kg/分の速度で持続投与する. → 正しい


局所麻酔薬中毒に対する20%脂肪乳剤の推奨投与量は,初回ボーラスとして1.5 mL/kg(成人では約100mL)を1~3分かけて静注し,その後0.25 mL/kg/分の速度で持続投与するとされています.症状が改善しない場合は,ボーラス投与を繰り返したり,持続投与速度を0.5 mL/kg/分に増量したりすることも考慮されます.


④ 局所麻酔薬中毒による心停止に対するCPRでは,通常量(1mg)のアドレナリン投与が推奨される. → 誤り


局所麻酔薬中毒によるCPRでは,通常のACLSプロトコルとは異なる部分があり,アドレナリンは少量(1回あたり<1µg/kg程度)に抑えることが推奨されています.通常のCPRでは1mgが推奨されますが,局所麻酔薬中毒時のCPRにおいては過量のアドレナリンは脂肪乳剤による心筋機能回復を妨げる恐れがあるためです.


⑤ 局所麻酔薬中毒の症状は,典型的には中枢神経症状が先行して現れるが,鎮静下では循環器症状のみが現れることもある → 正しい


局所麻酔薬中毒の症状は典型的には中枢神経症状(耳鳴り,口唇や舌のしびれ,金属味,多弁,興奮など)が先行し,続いて心血管系症状が現れるとされていますが,鎮静下では中枢神経症状がマスクされ,循環器症状のみが現れることがあります.また,血中濃度上昇が急速な場合は,神経症状を経ずに突然循環器系の症状が出現することもあります.



局所麻酔薬中毒(LAST)のリスク因子について,正しいものを全て選べ

正解:①, ②, ④

① 低酸素血症やアシドーシスは局所麻酔薬の毒性を増強する. → 正しい


低酸素血症やアシドーシス(呼吸性・代謝性ともに)は局所麻酔薬の毒性を増強します.高度の低酸素血症や高二酸化炭素血症は脳血管を拡張させ脳血流を増加させるため,薬物が中枢に移行しやすくなります.またアシドーシスが生じると,局所麻酔薬のタンパク結合率が低下して遊離型が増えるため,中毒症状が出やすくなります.


② 齢者は心機能・肝機能・腎機能の低下などにより,血中濃度が上がりやすい → 正しい


高齢者は心機能・肝機能・腎機能の低下や薬物分布容積の変化により,血中濃度が上がりやすくなります.そのため,局所麻酔薬中毒のリスク因子となります.


③ リドカインは心毒性が強く,他の局所麻酔薬に比べて心停止に至る頻度が高い → 誤り


リドカインは中枢神経症状(痙攣など)は起こしやすいものの,心停止に至る頻度は低い傾向があるとされています.ブピバカインが心臓への親和性が高く(結合しやすい),他の局所麻酔薬に比べて中毒発現時に重篤な心毒性を示します.


④ 反復投与や持続投与では,数時間から数日遅れて中毒症状が出現する遅発性LASTのリスクがある → 正しい


カテーテル留置による持続硬膜外や持続神経ブロックでは,投与開始時は問題なくても,数時間から数日遅れて中毒症状が出現する遅発性のLASTも報告されています.初回投与や開始初期は濃度が許容範囲でも,徐々に蓄積して閾値を超える場合があるためです.


⑤ 局所麻酔薬中毒のリスクは肥満やるいそうなどの体格にはあまり関係なく,理想体重から算出した投与量を投与する. → 誤り


局所麻酔薬中毒のリスクは体格に関係します.低体重・筋肉量が少ない患者(小さなおばあさんや小児など)では,全身の分布容積が小さいほど血中濃度は上昇しやすくなるため,るいそうや栄養状態の悪い患者では注意が必要です.



局所麻酔薬中毒(LAST)の病態と治療について,正しいものを全て選べ

正解:④, ⑤

① 局所麻酔薬中毒の発症メカニズムの本質は,局所麻酔薬による電位依存性カルシウムチャネルの遮断である. → 誤り


局所麻酔薬中毒の発症メカニズムの本質は,局所麻酔薬が興奮性細胞膜上の電位依存性ナトリウムチャネルを遮断することによります.


② 局所麻酔薬中毒による痙攣に対して,筋弛緩薬の投与は中枢神経症状の治療として有効である. → 誤り


筋弛緩薬は痙攣による外傷リスク低減の目的で使用することは可能ですが,中枢神経症状そのものの治療にはなりません.中枢神経症状の治療としては,ベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパムやミダゾラムなど)が第一選択となります.


③ 局所麻酔薬中毒による心停止に対するCPRでは,アドレナリンの効果が不十分な場合,バソプレシンの投与も有効である. → 誤り


局所麻酔薬中毒による心停止に対するCPRでは,バソプレシンの投与は避けるべきとされています.バソプレシン投与により血管抵抗を極端に上昇させても,局所麻酔薬で収縮不全に陥っている心臓は十分な拍出ができず有害と考えられているためです.


④ 局所麻酔薬中毒に対する脂肪乳剤治療は,循環が回復したとしても少なくとも10分間は持続投与を継続することが推奨されている. → 正しい


局所麻酔薬中毒に対する脂肪乳剤治療は,患者の循環が回復・安定した後も少なくとも10分間は持続投与を続けることが推奨されています.これは血中の局所麻酔薬が再分布して再び毒性を示す再燃を予防するためです.


⑤ 局所麻酔薬中毒の心停止は主にPEAや心静止として認められることが多い. → 正しい


局所麻酔薬中毒による心停止はPEA(無脈電気活動)や心静止として認められることが多いとされています.その前段階として著明な徐脈と血圧低下が数分間進行しつつ悪化していく経過が報告されています.徐脈+血圧低下は最終段階(心停止)一歩手前と考え,迅速な対処が不可欠です.



局所麻酔薬中毒(LAST)の臨床症状について,正しいものを全て選べ

正解:①, ③

① 局所麻酔薬中毒の中枢神経症状として,初期には耳鳴り,口唇や舌のしびれ,金属味などの感覚異常が出現することがある. → 正しい


局所麻酔薬中毒の初期の前駆症状として,耳鳴り,口唇や舌のしびれ,金属味などの感覚異常が出現することがあります.また,焦燥感・多弁・錯乱などの精神神経症状も初期症状として現れることがあります.


② 局所麻酔薬中毒の症状として,痙攣が初発症状となることは稀であり,通常は軽度の精神症状から始まる. → 誤り


痙攣は局所麻酔薬中毒の初発症状となることも多く,症例の約50%で痙攣が初発であったという報告もあります.初期の軽度症状が出ずにいきなり痙攣に至る例もあり,症状の出方は一定ではありません.


③ 局所麻酔薬中毒の初期には頻脈や高血圧が見られることがあるが,その後徐脈・低血圧に移行し,最終的に致死的不整脈や心停止に至る. → 正しい


局所麻酔薬中毒の経過の典型例では,初期には頻脈や高血圧(交感神経刺激に伴う)も見られますが,その後徐脈・低血圧になり,やがて致死的不整脈(心室頻拍,心室細動)や心停止に至ります.特に重症のLASTでは急速な悪化が特徴的で,数分以内に循環が破綻することもあります.


④ 局所麻酔薬中毒の重症度は,投与した薬剤の種類よりも投与量に依存する. → 誤り


もちろん投与量は重要な因子ですが,薬剤の種類も局所麻酔薬中毒の重症度に大きく影響します.特にブピバカインは心臓への親和性が高く,他の局所麻酔薬に比べて中毒発現時に重篤な心毒性を示します.レボブピバカインやロピバカインはブピバカインよりも安全域が広いとされていますが,高用量では安全とは言えません.


⑤ 局所麻酔薬中毒の症状は投与後30分以内に生じ,それ以降に症状が出現することはまれである. → 誤り


局所麻酔薬中毒の症状発現は投与直後だけでなく,カテーテル留置による持続硬膜外や持続神経ブロックでは,投与開始時は問題なくても,数時間から数日遅れて中毒症状が出現する遅発性のLASTも報告されています.初回投与や開始初期は濃度が許容範囲でも,徐々に蓄積して閾値を超える場合があるためです.


局所麻酔薬中毒(LAST)の予防と対応について,正しいものを全て選べ

正解:1, 2, 4

① 局所麻酔薬中毒が疑われた場合の最初の対応は,局所麻酔薬の投与中止と100%酸素投与である. → 正しい


前駆症状を疑うなど異常を認めたら直ちに局所麻酔薬の投与を停止し,応援を依頼します.また,100%酸素投与と必要に応じて気道確保し,補助換気を行います.低酸素・高二酸化炭素血症の是正は悪循環を防ぐため最優先です.合わせて脂肪乳剤の投与も早期に行います.


② 局所麻酔薬中毒による痙攣に対しては,ベンゾジアゼピン系薬剤が第一選択薬である. → 正しい


局所麻酔薬中毒による痙攣に対しては,ベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパムやミダゾラムなど)が第一選択薬です.ベンゾジアゼピンが入手困難な場合,バルビツレートやプロポフォールの少量投与も選択肢ですが,プロポフォールは心抑制作用が強いため少量にとどめる必要があります.


③ 局所麻酔薬中毒による心停止に対しては,リドカインなどのクラスIB抗不整脈薬の投与が有効である → 誤り


局所麻酔薬中毒による心停止に対しては,リドカインなどのクラスIB抗不整脈薬の投与は禁忌です.局所麻酔薬中毒はナトリウムチャネル遮断で生じているため,さらにナトリウムチャネル遮断薬(局所麻酔薬)を投与することはさらに状態を悪化させます.


④ 局所麻酔薬中毒に対する20%脂肪乳剤の投与上限量は,目安として12 mL/kg(理想体重あたり)とされている. → 正しい


局所麻酔薬中毒に対する20%脂肪乳剤の投与上限量は,目安として12 mL/kg(理想体重あたり)とされています.上限を超えると脂肪酸負荷による膵炎・高脂血症などのリスクがありますが,救命が優先される状況では多少の超過も容認されます,


⑤ 血管内誤注入を防ぐためには,素早く吸引し,十分に広げるために一度に神経周囲や標的部位に注入することが重要である. → 誤り


緩徐に吸引,少量ずつ,分割投与が大原則です.強く吸引すると血管内に入っていても血液が引けないことがあります(血管壁が陰圧で針の先端を塞ぐ).


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