症例設定
【患者】
- 35歳女性.160cm,78kg(BMI30.5.非妊娠時64kg)
【現病歴】
- 妊娠36週頃より血圧上昇(150/95mmHg)を認め,妊娠高血圧症候群と診断.本日,胎児心拍モニターで遷延一過性徐脈を認め,胎児機能不全の診断で緊急帝王切開術の方針となる.前回の帝王切開術では脊髄くも膜下麻酔(+硬膜外麻酔)で問題なく終了.
【既往歴】
- 妊娠高血圧症候群:降圧薬の内服なし
- 妊娠糖尿病:食事療法のみでコントロール良好(HbA1c 5.8%)
- 喘息:学生時代に発症,現在は軽症で非発作時
- 薬剤アレルギー:なし
【主な検査所見・バイタルサインなど】
血液検査など
- WBC 9,800/μL,RBC 345万/μL,Hb 11.2g/dL,Plt 18.2万/μL
- AST 22 U/L,ALT 18 U/L,LDH 210 U/L,ALP 320 U/L,γ-GTP 25 U/L, T-Bil 0.8 mg/dL,TP 6.2 g/dL,Alb 3.4 g/dL,
- BUN 12 mg/dL,Cr 0.68 mg/dL,
- Na 138 mEq/L,K 4.0 mEq/L,Cl 104 mEq/L,
- Glu 96 mg/dL
- PT-INR 0.98,APTT 28.0秒,Fib 450 mg/dL
- 尿検査:尿蛋白(2+),尿糖(-)
画像検査など
- 胸部X線:異常所見なし
- 心電図:洞調律,心拍数82/分,異常所見なし
術前バイタルサイン
- 術前バイタル:BP 148/92mmHg,HR 88/分,RR 18/分,SpO₂ 98%(室内気),体温 36.6℃
Q1. 本症例の帝王切開の緊急度について説明してください.
- 緊急度のカテゴリーではカテゴリー2(maternal of fetal compromise which is not immediately)に相当すると考えられます.このカテゴリーには,分娩停止で児の状態がよくない場合,胎児機能不全,分娩前の出血でショックまでは至っていない場合などが含まれます.
- 多くの場合手術決定から75分以内に帝王切開を行うべきであるとされています.
Q2. この緊急帝王切開術に対して,どのような麻酔法を選択しますか?理由とともに説明してください.
- 前回と同様CSEAを行います.
- カテゴリー2の緊急帝王切開であり,時間的余裕があること,前回帝王切開の既往があるが,脊髄くも膜下麻酔で問題なく終了していること,全身麻酔に比べ,母体の気道確保リスク(気道浮腫など)を回避できること,薬剤の胎児移行が少ないこと,術後鎮痛に優れるなどの利点があること,硬膜外カテーテルを併用することで,麻酔レベル低下時の追加投与や術後鎮痛に活用できることなどが理由です.
⏩【経過】
- L3/4よりCSEA施行(脊髄くも膜下腔:高比重0.5%ブピバカイン2.2mL+フェンタニル15μg,硬膜外カテーテル:頭側5cm挿入)
- 麻酔レベル:両側T10(冷覚)
- バイタルサイン変化:BP 95/60mmHg,HR 88/分と低下傾向にあったため,フェニレフリン0.05mg静注およびエフェドリン4mg静注し,BP 120/75mmHgに回復しています.
- ブピバカイン投与後15〜20分で麻酔域がT10で変わりません.硬膜外カテーテルから2%リドカイン5mLの追加投与を行うことにしました.
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