📘【想定問題】腹腔鏡下副腎摘出術(褐色細胞腫)

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症例設定

【患者】

  • 62歳女性.158cm,体重68kg(BMI27.2)

【現病歴】

  • 3ヶ月前から頭痛,動悸,発汗過多を自覚 近医受診時に高血圧(190/110mmHg)を指摘され精査したところ,腹部CTで右副腎に3.5cm大の腫瘤を認め,血中・尿中カテコラミン高値から褐色細胞腫と診断された.待機的に腹腔鏡下副腎腫瘍摘出術が予定された.

【既往歴】

  • 高血圧症(3ヶ月前に診断)
  • 2型糖尿病(HbA1c 7.2%)
  • 甲状腺機能亢進症(内服コントロール中)

【服用中薬剤】

  • ドキサゾシン 8mg/日(2週間前から開始,4mg/日→8mg/日に増量)
  • メトホルミン 750mg/日
  • メチマゾール 5mg/日
【主な検査所見・バイタルサインなど】

バイタルサイン:

  • 血圧 135/85mmHg(ドキサゾシン内服中)
  • 心拍数 88/分,整
  • SpO₂ 98%(室内気)
  • 体温 36.5℃

血液検査:

  • Hb 13.5g/dL, Ht 40.2%, WBC 7,500/μL, Plt 28.5万/μL
  • Na 140mEq/L, K 3.6mEq/L, Cl 104mEq/L, Ca 9.2mg/dL
  • BUN 18mg/dL, Cr 0.72mg/dL, eGFR 68mL/min/1.73m²
  • AST 28U/L, ALT 32U/L, LDH 210U/L, ALP 245U/L, T-Bil 0.8mg/dL
  • Glu 145mg/dL, HbA1c 7.2%
  • PT-INR 1.02, APTT 29秒
  • TSH 0.1μIU/mL(低値),FT3 3.8pg/mL(正常),FT4 1.3ng/dL(正常)

内分泌検査:

  • 血中アドレナリン 150pg/mL(基準値: <100)
  • 血中ノルアドレナリン 1200pg/mL(基準値: <450)
  • 尿中メタネフリン 1.2mg/日(基準値: <0.2)
  • 尿中ノルメタネフリン 0.78mg/日(基準値: <0.33)

心電図: 洞調律,心拍数90/分,左室肥大所見あり

胸部X線: 心胸郭比52%,肺野清明

心エコー:

  • 左室駆出率65%
  • 左室肥大あり(心室中隔厚 12mm)
  • 軽度僧帽弁逆流あり
  • 壁運動異常なし

呼吸機能検査:

  • VC 2.8L(%VC 98%)
  • FEV₁.0 2.3L(FEV₁.0% 82%)

気道評価:

  • Mallampati分類 II度
  • 開口良好,頸部伸展制限なし

画像所見:

  • 腹部CT: 右副腎に3.5cm大の境界明瞭な腫瘤,造影効果あり
  • MIBG シンチ: 右副腎に一致した集積亢進,他部位に異常集積なし
Q1. 褐色細胞腫患者の術前準備として最も重要なものは何ですか?また,この患者の術前管理は適切といえますか?
  • まずはα遮断薬による前処置が重要です.術中のカテコラミン放出による高血圧クリーゼを予防するために不可欠です.
  • 本症例ではドキサゾシン8mg/日が2週間投与されており,入室時の血圧が135/85mmHgとコントロールされていることから,前処置は概ね適切であると判断します(下記の目標もチェック).
  • α遮断薬前処置の目標は,①安静時血圧の正常化,②軽度の起立性低血圧が見られる程度,③心電図上の虚血性変化の消失,④2週間以上の前処置期間,とされています.
  • 血圧がコントロールされた後も頻脈傾向がある場合はβ遮断薬の開始を検討します.
Q2. 本症例は糖尿病と甲状腺機能亢進症を合併しています.褐色細胞腫の周術期管理においてこれらの合併症がもたらす影響と対応策について説明してください.

糖尿病について

  • カテコラミンは血糖上昇作用(インスリン抵抗性の増加)があり,腫瘍摘出後に急激な血糖低下をきたす可能性があります.
  • 対応策としては,術中の頻回な血糖測定(腫瘍摘出前後は30分ごと),腫瘍摘出後の低血糖に備えたブドウ糖投与準備を行います.

甲状腺機能亢進症について

  • カテコラミンと甲状腺ホルモンの相乗効果により,頻脈や不整脈リスクが増加します.また,甲状腺クリーゼのリスクもあります.
  • 対応策としては,術前の甲状腺機能の正常化(メチマゾールによるコントロール),β遮断薬の適応の検討(頻脈持続時.ただし,術前のα遮断薬による血圧のコントロール後),体温モニタリング,術中の不整脈に注意する,などが挙げられます.
  • 本症例ではメチマゾール内服により甲状腺機能はある程度コントロールされていますが,TSHは依然として抑制されています.周術期のストレスにより甲状腺機能が悪化する可能性があるため注意が必要です

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