症例設定
【患者】
- 7歳男児.115cm,22kg(標準慎重120〜125cm,標準体重24〜26kg)
【現病歴】
- 扁桃肥大によるいびきや食事が飲み込みにくさを主訴に小児耳鼻科を受診.著明な口蓋扁桃肥大(Mackenzie分類Grade III)およびアデノイド肥大を認め,扁桃摘出術およびアデノイド切除術が予定された.
【既往歴】
- ダウン症:日常生活動作は概ね自立.コミュニケーションは基本的な事項は可能.
- 反復性上気道感染(過去1年間に4回の抗菌薬治療を要する上気道感染歴)
- 重症閉塞性睡眠時無呼吸症候群(2週間前にポリソムノグラフィ検査実施)
- 心房中隔欠損(二次孔欠損,径5mm).循環動態は安定
【服用中薬剤】
- 特になし(最近の上気道感染に対する抗菌薬は2週間前に終了)
【主な検査データ・バイタルサインなど】
バイタルサイン:
- 血圧 102/58 mmHg
- 心拍数 95回/分
- 呼吸数 22回/分
- SpO2 94%(室内気)
- 体温 36.5℃
身体所見:
- 全身:ダウン症の特徴的顔貌(眼裂斜上,鼻根部扁平,舌突出傾向)
- 気道:Mallampati分類 III度,舌肥大,甲状軟骨-オトガイ間距離 5.0cm,開口制限なし
- 呼吸音:清,副雑音なし
検査所見:
- 血液検査:Hb 12.5 g/dL,Plt 28.0万/μL,WBC 6,500/μL,PT-INR 1.05,APTT 32秒
- 生化学:AST 28 U/L,ALT 24 U/L,BUN 12 mg/dL,Cr 0.4 mg/dL,Glu 88 mg/dL
- 胸部X線:心胸郭比 52%,肺野清明,肺血管陰影の軽度増強
- 心電図:洞調律,右軸偏位,不完全右脚ブロック
Q1. 本症例における術前評価のポイントを列挙してください.
- OSASの程度評価:ポリソムノグラフィ結果(AHI,最低SpO2,無呼吸パターン)の確認
- 家族からの情報収集:普段の睡眠状態,活動性,発達状況
- 気道解剖学的特徴の評価:小顎,舌肥大,声門狭小化
- 心房中隔欠損の評価:シャント量(Qp/Qs),肺高血圧の有無,右心系負荷.心エコーや,かかりつけ医からの情報提供を依頼する.
- 頸椎不安定性の評価:画像所見(ADI)と神経学的症状の有無.整形外科や脊椎外科の診察・評価を得る.
- 直近の上気道感染状況確認
⏩【経過】
- 最近ポリソムノグラフィを受けており,重症のOSASと診断されています.昼間は学校でよくうとうとしているとのことです.追加情報を提示します.
🖥️【追加情報】
- ポリソムノグラフィ:AHI 12/時間,最低SpO₂ 82%,3%ODI 10回/時間,中枢性無呼吸4%・閉塞性無呼吸96%
- 心エコー:二次孔欠損型ASD(径5mm),Qp/Qs 1.4,右心系拡大なし,肺高血圧所見なし.
- 頸椎X線:側面像でC1-C2間の前方亜脱臼を示唆する軽度の不安定性あり(ADI 4.2mm).整形外科診察では特に症状は見られないが,気道確保時の操作は愛護的に行うようにコメントあり.
- 最終上気道感染後,ここ1〜2週間は上気道の感染症状は見られていないとのことです.
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