症例設定
【患者】
- 72歳男性.165cm,65kg(BMI23.9)
【現病歴】
- 人間ドックで6cm大の腹部大動脈瘤(腎動脈下)を指摘され,破裂リスクが高いとして待機的に人工血管置換術が予定された.
【既往歴】
- 2年前に労作性狭心症でPCI施行(左前下行枝に薬剤溶出性ステント留置)
- 2型糖尿病(15年前より)
- 高血圧症(20年前より)
- 脂質異常症
- 軽度COPD(%FEV1.0 65%)
【服用中薬剤】
- メトプロロール(β遮断薬)120mg/日
- ロサルタン(ARB)50mg/日
- アトルバスタチン 20mg/日
- アスピリン 100mg/日
- クロピドグレル 75mg/日
- エンパグリフロジン(SGLT2阻害薬)10mg/日
- 血糖コントロール不良時のみ速効型インスリン
【主な検査データ・バイタルサインなど】
身体所見
- 血圧 148/85 mmHg,心拍数 76/分・整
- SpO2 96%(室内気)
- 呼吸数 16/分
- 心音:Ⅱ音亢進なし,Ⅲ音・Ⅳ音聴取せず,心尖部に収縮期雑音Levine Ⅱ/Ⅵ
- 呼吸音:両側下肺野で軽度の吸気性crackles聴取
- 腹部:拍動性腫瘤を触知,圧痛なし
- 四肢:両側下腿に軽度浮腫あり(+)
- 頸動脈:明らかな雑音なし
検査データ
- RBC: 320万/μL Hb: 9.8 g/dL WBC: 6500/μL 血小板: 20万/μL
- BUN: 32 mg/dL Cr: 1.8 mg/dL eGFR: 35 mL/min/1.73m²
- Na: 140 mEq/L K: 4.2 mEq/L
- PT-INR: 1.1 APTT: 32秒
- HbA1c: 8.2%
- BNP: 180 pg/mL
- 血液ガス(室内気):pH 7.38,PaO₂ 75 mmHg,PaCO₂ 42 mmHg,HCO₃⁻ 25 mEq/L,BE -0.5
画像検査など
- 肺機能検査:FVC 3.2L(%FVC 85%),FEV1.0 2.1L(%FEV1.0 65%),FEV1.0% 65.6%
- 胸部X線:CTR 55%,肺うっ血所見なし,両側肺野に軽度の間質影あり
- 腹部超音波:最大径約7cmの腹部大動脈瘤,壁在血栓あり
- 頸部血管エコー:左内頚動脈に中等度狭窄あり
- 呼吸機能検査:%VC 85%,FEV1.0% 65%
- 24時間ホルター心電図:心室性期外収縮 1,200/日(2連発 15回/日)
Q1. 本症例で特に注意すべき主要な麻酔リスク因子とRCRIによる評価を行ってください.
- 冠動脈疾患(PCI後,左室機能低下,心室性不整脈):周術期の心不全・心筋虚血・不整脈のリスクあり
- 慢性腎機能障害(Cr 1.8 mg/dL,eGFR 35 mL/min/1.73m²):AKIのリスクあり
- 糖尿病(HbA1c 8.2%と高値)による周術期血糖管理の困難の可能性.高血糖・低血糖リスク,SSIのリスクあり.
- 内頸静脈の中等度狭窄:術中血圧低下による脳虚血のリスクあり.
RCRIリスク評価:2点.血管手術のため30日以内の心血管イベント率は11.9%と高率.
- 高リスク手術:1点
- IHDの既往:1点
- CHFの既往:0点(厳密には解釈が分かれる可能性あり)
- 脳血管疾患の既往:0点
- インスリン依存性糖尿病:0点(術前から速効型インスリンが頻回使用となっていれば該当する可能性がある)
- クレアチニン>2.0 mg/dL:0点
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