📘【想定問題】大腿骨人工骨頭置換術

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補足・解説

【患者】

  • 68歳女性.155cm,45kg(BMI18.7)

【現病歴】

  • 2年前に膵癌(Stage IV)と診断され,現在は多発転移(肝,肺,骨)を有する.疼痛管理のために緩和ケア病棟に入院中.オキシコドン徐放錠 120 mg/日(レスキューとして同速放剤20mg/日),デキサメタゾン4mg/日を服用している.
  • 昨日,大腿骨近位部への転移による病的骨折を発症し,疼痛の増強と歩行困難がみられたため,大腿骨頭置換術(人工骨頭置換術.骨セメント使用予定)が予定された.内服は現在のところ問題なく可能であり,腎機能障害は見られるものの,オキシコドンによる明らかな副作用は見られていない.

【既往歴】

  • 膵癌(Stage IV)、多発転移
  • 糖尿病(インスリン療法中、HbA1c 7.2%)
  • 高血圧(アムロジピン5 mg/日内服中)
  • 慢性腎機能障害

【投薬内容】

  • オキシコドン徐放錠:120 mg/日
  • オキシコドン速放剤:20mg/日(1日最大5回まで)
  • デキサメタゾン:4 mg/日
  • アムロジピン:5 mg/日
  • インスリン グラルギン 12単位/日
  • インスリン リスプロ 食前4〜6単位
【主な検査データ・バイタルサインなど】

バイタルサイン

  • 血圧 128/74 mmHg
  • 心拍数 86回/分・整
  • SpO₂ 94%(室内気)
  • 体温 36.7℃
  • 呼吸数 18回/分

検査データ:

  • WBC 5,800/μL,RBC 285万/μL,Hb 9.2 g/dL,Ht 28.0%,Plt 13.2万/μL
  • PT-INR 1.15,APTT 32秒
  • TP 6.2 g/dL,Alb 2.7 g/dL,
  • T-Bil 0.8 mg/dL,AST 42 IU/L,ALT 38 IU/L, ALP 380 IU/L,LDH 250 IU/L,
  • BUN 32 mg/dL,Cr 1.5 mg/dL,eGFR 35 mL/分/1.73m²,
  • Na 138 mEq/L,K 4.5 mEq/L,Cl 102 mEq/L,Ca 10.8 mg/dL
  • Glu 132 mg/dL

血液ガス分析(室内気):

  • pH 7.40,PaO₂ 78 mmHg,PaCO₂ 40 mmHg, HCO₃⁻ 24 mEq/L,BE 0.0 mEq/L,Lactate 1.5 mmol/L

心機能検査:

  • 心エコー: EF 60%,壁運動異常なし.軽度の僧帽弁閉鎖不全.
  • 心電図: 洞調律,HR 86/分.非特異的ST-T変化あり.
  • NT-proBNP: 340 pg/mL

呼吸機能検査:

  • %VC 75%,FEV1.0% 68%(軽度混合性障害)

画像所見:

  • 胸部X線: CTR 52%,両側少量胸水あり,両肺野に多発小結節影
  • 胸部CT: 両側少量胸水,両肺に多発結節影(最大径15mm)あり,肝右葉に低吸収域あり(転移性病変)
  • 骨シンチグラフィ: 大腿骨転子部に強い集積あり,脊椎多発集積あり
  • 大腿骨X線: 右大腿骨転子部に溶骨性変化を伴う病的骨折あり

特記すべき身体所見:

  • 右大腿部の疼痛あり,安静時NRS 6/10,動作時NRS 9/10
  • Performance Status:3(日中の50%以上は臥床)
  • 全身の浮腫は軽度
  • 呼吸音:両側下肺野で減弱
  • 腹部:平坦・軟,明らかな腫瘤は触知せず
  • 神経学的所見:特記事項なし
  • 右下肢:牽引固定中
Q1. 本患者における,周術期および麻酔管理上の問題点を挙げてください.
  • 末期癌による全身状態の低下
    • 低栄養(Alb 2.7 g/dL)
    • るいそう: 創傷治癒遅延,感染リスク,圧迫等による褥瘡形成リスクの増加
  • 高Ca血症(10.8 mg/dL)(術中・術後の循環動態や意識レベルへの影響)
  • 疼痛コントロールの困難の可能性(必要量増加や退薬症状の出現リスク)
  • ステロイド内服中(ステロイドカバーを行う)
  • 慢性腎機能障害(eGFR 35 mL/分/1.73m²)
  • 貧血(Hb 9.2 g/dL)
  • 糖尿病管理(周術期の血糖変動リスク)
  • 軽度混合性呼吸障害(%VC 75%,FEV1.0% 68%)・両側胸水
  • 多発転移病変による臓器予備能低下
  • 術中の骨セメント症候群発症のリスク
Q2. 術前の疼痛管理について,どのような点に注意しますか?
  • 病的骨折部位の安定化による疼痛軽減が期待できますが,術後も癌性疼痛は継続するため,基本的な疼痛管理計画は維持します.
  • 既存のオピオイドは中断せず継続します.周術期には離脱症状の出現に出ないよう注意します.
  • オピオイド耐性が生じている可能性があるため,鎮痛薬必要量が増加している可能性があります.
  • 鎮痛はマルチモーダル鎮痛を行います(区域麻酔,NSAIDs,オピオイド).ただしNSAIDsは腎機能障害がある場合は慎重に判断.

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