症例設定
【患者】
- 68歳女性.158cm,82kg(BMI32.8)
【現病歴】
- 2週間前からのめまい,嘔気,右側視力低下,ふらつきを主訴に受診.MRIで右小脳橋角部に4cm大の腫瘤を認め,手術適応となった.頭痛も最近増悪傾向にあり,朝方に強い傾向がある.過去2日間で2回嘔吐あり.
【既往歴】
- 高血圧:10年前から内服治療中
- 2型糖尿病:8年前から内服治療中
- 心房細動:5年前から内服治療中
- 腰椎椎間板ヘルニア:3年前(保存的加療)
【服用中薬剤】
- アムロジピン 10mg/日
- カンデサルタン 8mg/日
- メトホルミン 1000mg/日
- リナグリプチン 5mg/日
- アピキサバン 5mg×2回/日
【主な検査データ・バイタルサインなど】
バイタルサイン
- 血圧 154/92 mmHg
- 心拍数 88/分,不整
- 呼吸数 16/分
- SpO₂ 96%(室内気)
- 体温 36.8℃
血液検査
- Hb 11.8 g/dL, WBC 7,800 /μL, Plt 16.8万/μL
- PT-INR 1.2, APTT 32秒
- Na 138 mEq/L, K 4.2 mEq/L, Cl 104 mEq/L
- BUN 18 mg/dL, Cr 0.92 mg/dL, eGFR 58 mL/min/1.73m²
- 空腹時血糖 142 mg/dL, HbA1c 7.2%
- AST 28 IU/L, ALT 32 IU/L
画像検査など
- 12誘導心電図:心房細動,心拍数85/分,特記すべきST-T変化なし
- 胸部X線:CTR 54%,肺うっ血所見なし,肺野清明
- 頭部MRI:右小脳橋角部に4cm大の造影効果を伴う腫瘤あり.T2強調画像で高信号.周囲の浮腫と第四脳室の圧排を認める.脳幹への圧迫所見あり.
- 頭部CT:腫瘍による軽度の水頭症所見あり.
身体所見
- 意識レベル:GCS E4V5M6
- 神経学的所見:右側聴力低下,右顔面感覚鈍麻,小脳失調(測定障害,歩行時ふらつき)
- 気道評価:Mallampati分類 II,開口制限なし,頸部後屈制限なし
Q1. 本症例の麻酔を行う上で,特に注意すべき問題点を3つ挙げ,それぞれの理由を簡潔に説明してください.
- 後頭蓋窩腫瘍による頭蓋内圧亢進:嘔気・嘔吐,頭痛,視力障害は頭蓋内圧亢進症状の可能性があります.腫瘍の位置と大きさから第四脳室圧迫と脳幹圧迫のリスクがあり,麻酔導入時に頭蓋内圧を上昇させないよう注意がが必要です(脳ヘルニアの誘発や悪化につながる可能性が高い).
- 抗凝固療法(アピキサバン内服):心房細動に対して抗凝固療法中.効果残存による術中出血リスクと,中止による血栓・塞栓症リスクがあります.
- 肥満(BMI 32.8):気道確保困難のリスク上昇,体位による組織障害や神経障害のリスクがあります.気道内圧が上昇しやすいため,循環に影響が出る可能性もあります.
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