📘【想定問題】胸腔鏡下肺嚢胞切除術

補足・解説

【患者】

  • 27歳男性.173cm,120kg(BMI40)

【現病歴】

  • 3日前から左胸痛と呼吸困難を自覚し,近医を受診.胸部X線で左自然気胸と診断され,胸腔ドレナージが行われた.エアリークが持続し,手術適応と判断され当院紹介.2年前にも左自然気胸の既往あり,保存的に治療されていた.

【既往歴】

  • 高血圧(2年前に診断)
  • 高脂血症(2年前に診断)
  • 気管支喘息(10年前から,軽症持続型)
  • 重度睡眠時無呼吸症候群(AHI 45回/時,1年前に診断されるもCPAP療法は使用せず.いびきがひどく,家族からは頻回の無呼吸を指摘.日中仕事中に眠気を感じている)
  • 喫煙歴:10本/日×7年間(現在も継続している.禁煙してくれ)
  • アレルギー歴なし

【使用中薬物】

  • テルミサルタン 40mg 1日1回
  • ロスバスタチン 5mg 1日1回
  • ブデソニド/ホルモテロール 吸入(シムビコート)朝夕2吸入
  • サルブタモール 吸入(発作時使用,週1-2回程度)
【バイタルサインや主な検査所見】

バイタルサイン

  • 血圧: 145/85 mmHg
  • 心拍数: 88回/分(整)
  • SpO₂: 94%(室内気)
  • 呼吸数: 16回/分
  • 体温: 36.5℃

血液検査:

  • WBC: 8,500/μL, RBC: 4.8×10⁶/μL, Hb: 14.2 g/dL, Hct: 43%, Plt: 28.5×10⁴/μL
  • PT-INR: 1.02, APTT: 30秒

生化学検査:

  • TP: 7.0 g/dL, Alb: 4.0 g/dL
  • T-Bil: 0.8 mg/dL, AST: 28 IU/L, ALT: 32 IU/L, ALP: 220 IU/L, γ-GTP: 45 IU/L
  • BUN: 15 mg/dL, Cr: 0.9 mg/dL, eGFR: 85 mL/min/1.73m²
  • Na: 140 mEq/L, K: 4.0 mEq/L, Cl: 102 mEq/L,
  • Glu: 98 mg/dL, HbA1c: 5.8%

動脈血ガス分析(室内気)

  • pH: 7.38
  • PaO₂: 78 mmHg
  • PaCO₂: 42 mmHg
  • HCO₃⁻: 24 mEq/L
  • BE: -0.5 mEq/L
  • SaO₂: 95%

心電図・心エコー:特記事項なし

胸部X線:

  • 左肺の虚脱(約20%)
  • 胸腔ドレーン挿入状態
  • 心胸郭比 50%
  • 明らかな浸潤影なし

胸部CT:

  • 左肺尖部に複数の肺嚢胞(最大径 3cm)
  • 右肺尖部にも小さな肺嚢胞(最大径 1cm)
  • 両側肺野にびまん性の軽度気腫性変化
  • 縦隔・肺門リンパ節腫大なし
  • 胸壁皮下脂肪厚:前胸部で 4.5cm,側胸部で 5.2cm

睡眠ポリグラフ検査(1年前の記録):

  • AHI: 45回/時
  • 最低SpO₂: 75%
  • T90(SpO₂が90%未満の時間): 35%
  • CPAP適応と診断されるも未使用(してくれ)

身体所見

  • 気道評価:
    • Mallampati分類:Ⅲ度
    • 開口度:2横指
    • 頸部伸展制限:なし
    • 甲状軟骨-顎下距離:4cm
    • 頸囲:45cm
  • 呼吸:
    • 左胸腔ドレーンが挿入され,エアリーク(+)
    • 右肺野:呼吸音清明
    • 左肺野:減弱(ドレーン留置側)
  • 循環:
    • 心音:整,雑音なし
    • 頸静脈怒張なし
    • 下腿浮腫なし
  • その他:
    • 著明な腹部肥満
    • 胸壁厚:皮下脂肪が厚く,肋骨触知困難
Q1. この患者の術前評価において特に注意すべき事項を挙げ,それぞれについての評価・対応について説明してください.

肥満に伴う気道確保困難のリスク

  • Mallampati分類III度,頸囲45cm,BMI 40は気道確保困難の予測因子.
  • DAMカートの準備(ビデオ喉頭鏡やファイバー気管支鏡の準備),意識下挿管の検討,複数麻酔科医による気道確保.

重度睡眠時無呼吸症候群(OSA)のによる気道確保困難リスク

  • AHI 45回/時の重症OSA,CPAP未使用,術後呼吸器合併症のリスクが高い.
  • 術前からのCPAP導入検討,過度のオピオイド使用を控える,術後の継続的な呼吸モニタリング,半座位や頭高位での管理,術後の抜管後の気道閉塞に注意.

気管支喘息と喫煙による術中・術後呼吸器合併症リスク

  • 喫煙継続中,気管支喘息の合併(禁煙しろ).
  • 術前禁煙指導,気管支拡張薬の継続,術中の適切な呼吸器設定(肺保護戦略),術後の積極的な呼吸リハビリテーション.早期離床
Q2. この患者のSTOP-BANG storeついてスコアリングしてください.

STOP-BANGˈスコア

  • S (Snoring):いびきが大きい
  • T (Tiredness):日中の眠気や疲労感
  • O (Observed apnea):周囲が指摘する無呼吸
  • P (Pressure, hypertension):高血圧の既往
  • B (BMI):BMI>35kg/m²
  • A (Age):50歳以上
  • N (Neck circumference):頸囲が男性43cm以上,女性41cm以上
  • G (Gender):男性

Age以外は全て該当するため7点です.

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