📘【想定問題】僧帽弁形成術

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症例設定

【患者】

  • 78歳女性.152cm,45kg(BMI19.5)

【現病歴】

  • 高血圧,糖尿病,心臓弁膜症で近医内科かかりつけ.以前より軽度労作時呼吸困難があったが,最近増悪し,夜間起座呼吸も出現したため.当院循環器内科を紹介受診.経胸壁心エコーで僧帽弁閉鎖不全増悪を認めたため,僧帽弁形成術が予定された.

【既往歴】

  • 高血圧症
  • 2型糖尿病(HbA1c 6.8%)
  • 心房細動
  • 慢性腎臓病(eGFR 45 mL/min/1.73m²)
  • 僧帽弁閉鎖不全症(重度,NYHA III度)
  • 肺高血圧症(平均肺動脈圧35 mmHg)

【服用中薬剤(術前評価時

  • アムロジピン 5mg/日
  • カンデサルタン 4mg/日
  • メトホルミン 500mg×2回/日
  • フロセミド 20mg/日
  • カルベジロール 2.5mg×2回/日
  • ダビガトラン150mg×2回/日
【術前バイタルサイン・検査データ】

バイタルサイン

  • 血圧 138/62 mmHg
  • 心拍数 78回/分,不整
  • SpO₂ 94%(室内気)
  • 体温 36.5℃
  • 呼吸数 18回/分

主要検査データ

  • 血液検査:Hb 10.8 g/dL,Plt 15.5万/μL,WBC 5,800/μL
  • 生化学:BUN 28 mg/dL,Cr 1.3 mg/dL,AST 28 IU/L,ALT 22 IU/L,Na 140 mEq/L,K 4.2 mEq/L,Cl 104 mEq/L
  • 凝固:PT-INR 1.2,APTT 32秒
  • 動脈血ガス(室内気):pH 7.42,PaO₂ 68 mmHg,PaCO₂ 37 mmHg,HCO₃⁻ 24 mEq/L,BE 0
  • 心機能:左室駆出率(LVEF)55%,三尖弁圧較差 60 mmHg,推定肺動脈収縮期圧 70 mmHg
  • 肺機能:特記事項なし

画像所見

  • 胸部X線:心胸郭比 62%,肺うっ血像あり
  • 経胸壁心エコー:重度僧帽弁閉鎖不全(後尖P2逸脱,カラードプラー法で左房面積に対する逆流ジェット面積比50%以上),左房拡大(左房径48mm),軽度三尖弁閉鎖不全
  • 冠動脈造影:有意狭窄なし

特記すべき身体所見

  • 頸静脈怒張(+)
  • 下腿浮腫(+)
  • Clinical Frailty Scale: 5(軽度フレイル)
Q1. 僧帽弁閉鎖不全症に合併した肺高血圧症の病態生理について説明し,術前評価で重要な点を挙げてください.

【MRに合併したPHについて】

  • 僧帽弁閉鎖不全症では,左室から左房への逆流により左房圧が上昇します.この上昇した圧が肺静脈を経て肺毛細血管へと伝わり,受動的に肺動脈圧が上昇します(受動的肺高血圧).
  • さらに,長期間の肺うっ血は肺血管のリモデリングを引き起こし,肺血管抵抗の上昇を引き起こします(反応性肺高血圧).
  • 右室は薄壁構造であるため,肺動脈圧上昇による後負荷の増大に対して脆弱であり,右室肥大から最終的には右心不全に至る可能性があります.

【術前評価の留意点】

  • 肺高血圧の重症度評価:平均肺動脈圧や肺血管抵抗の測定.
  • 右室機能の評価:右室駆出率,三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE),右室拡大の有無などを確認.
  • 右心不全の徴候として,頸静脈怒張,肝腫大,下腿浮腫の有無を確認.
  • また,肺うっ血の評価として,労作時呼吸困難,起座呼吸,夜間発作性呼吸困難の有無を確認します.
  • 僧帽弁閉鎖不全そのものについては,逆流の定量的評価に加え,弁の形態学的評価が必要です.本症例では後尖P2の逸脱が認められています.

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