内容
- はじめに
- 高度肥満患者の周術期リスク概略
- 高度肥満患者の術前評価のポイント
- 気道評価・呼吸機能評価
- 循環器・代謝系の評価
- その他の術前にしたほうがいいこと
- 麻酔管理の注意点
- なんといっても気道確保
- 麻酔の維持は?
- 麻酔中・術後の人工呼吸管理について
- 術後疼痛管理
- 末梢神経障害や静脈血栓の予防
- 抜管時・抜管後の注意点
- 高度肥満患者の麻酔薬投与量の計算について
- 理想体重(IBW)と除脂肪体重(LBW)の違いについて
- 参考文献
はじめに

明日の麻酔,50歳のラパコレでBMI45超えなんですけど・・



おつかれさまでーす



いやいやしんどいんですけど.体重150kgだし・・.



仕方ないね.で?他に合併症は?



高血圧,糖尿病,SASでCPAP,頸も太くて短いし.大丈夫なのは歯くらいっす.



血ガス採られてる?



あります.やや低酸素とちょっと二酸化炭素溜まってますね.OHS(肥満低換気症候群)ってやつですかね・・



だろうね.術後の呼吸不全のリスクだね.他にもこの患者さん,血圧も高いし,糖尿病有るし,ひょっとしたら心疾患隠れてるかも知れないし,下肢血栓あるかもしれないし,CPAPはしてるし,挿管困難はあるかもしれないし,でもたまには色々意識して麻酔しなきゃね.最近専門医試験近かったから軽いのしか当ててなかったもんね.



これだけ大きいと麻酔薬の量とかも考えないとですね



そういうことだね.じゃぁ1つずつ確認していこか
高度肥満患者の周術期リスク概略
高度肥満(BMI≧40)の患者は、呼吸器系・循環器系・代謝系それぞれに周術期合併症のリスクを抱えています.例えば呼吸器系では,肥満に伴う胸腹部への脂肪蓄積で横隔膜が挙上し,機能的残気量(FRC)の低下が見られ,速やかな低酸素血症に陥りやすいことが知られています.
また閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)や肥満低換気症候群(OHS)の合併が多く,慢性的な低酸素・高炭酸ガス血症により術後呼吸不全のリスクが高まります.肥満患者は上気道内に脂肪沈着があるため咽頭部が狭小化し,気道確保(マスク換気および気管挿管)の困難さが増すことも大きな問題です.実際、肥満患者では挿管困難や挿管失敗のリスクが約30%増加するとの報告もあります.
さらに肥満は高血圧・糖尿病・虚血性心疾患など生活習慣病を合併する頻度が高く,心不全や不整脈,心筋虚血イベントの可能性にも注意が必要です.
循環血液量の増加に伴い心拍出量が増大し,心臓への負荷がかかる一方,末梢では動脈硬化や内皮機能障害も進行しやすく,全身麻酔下での血圧変動も大きくなる傾向があります.
また,肥満は深部静脈血栓症(DVT)・肺血栓塞栓症(PE)の危険因子の1つであり,術後に血栓症が発生すると重篤な転帰をとりえます.実際、肥満患者は標準体重患者よりもVTE(静脈血栓塞栓症)発症率が高く,固定用量の標準的LMWH予防投与でも不十分な場合があると報告されています.
そのほか長時間の手術では体重による圧迫で褥瘡リスクも増大します.加えて脂肪組織への薬物分布容量が増大し,麻酔薬の蓄積による覚醒遅延も懸念されます.特に静脈麻酔では投与量に注意が必要です.
これら多数の問題に対し,術前から配慮・対策が必要になります.



そうなんですよね.よほど若くない限り,太ってるだけってことないですもんね.



私が昔努めていた病院でも,当時30歳くらいだった高度肥満の職員さんが心筋梗塞起こしたこともあるので,若くても度を過ぎると安心できないね.
高度肥満患者の術前評価のポイント
高度肥満患者では術前評価において気道・呼吸、循環、代謝(内分泌)、消化器の各系統を総合的にチェックします.ASA-PS分類でも肥満はリスク評価に組み込まれており,高度肥満(BMI≧40)や重度のOSAはASA-PSクラス3に該当します.BMI30~40の肥満は合併症の有無,コントロール状態によってASA2〜3と評価されることが多い印象です.
結果,通常の肥満患者では少なくともASA2,高度肥満で臓器障害を伴えばASA3I以上と判断されることが多いでしょう.
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