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🔐50-5-1:頸動脈内膜切除術

65歳の男性。1年前からときどき視力の低下や意識消失を訴えていた。左頚動脈の閉塞(80%)を指摘され、頚動脈内膜切除術(CEA)が予定された。胸部エックス線写真、血液・生化学検査、心電図、呼吸機能検査には異常なし。既往歴に、狭心症、高血圧がある。

0)この問題を解くために必要な知識

  • CEA一般に関する知識
  • 虚血性心疾患患者の評価
  • 脳虚血のモニタリングについて
  • 過灌流症候群について
  • 術後末梢神経障害について

1)術前評価

①本症例の問題点を述べてください。
  • 頸動脈閉塞(症状あり)
  • 高血圧
  • 狭心症

②通常の術前検査(血液検査、心電図、胸部エックス線)以外に担当麻酔科医として得ておきたい情報を挙げて下さい。
  • 心エコー、負荷心エコー、負荷心電図
  • できればCAGや冠動脈CTや心筋シンチ
  • 狭心症の発作歴、治療、治療の反応性
  • 最近の活動度(NYHA、4METsあるかどうか)
  • 内服薬チェック

 

2)術中管理

①全身麻酔下の手術が選択されました。本症例における全身麻酔施行上の注意点を述べて下さい。心エコーにて左室壁運動の低下と心筋シンチにて心筋虚血が指摘され、EF50%です。
  • 灌流圧低下による心筋虚血、脳虚血を防ぐ。輸液、昇圧薬で対処。
  • 上記を行うために、動脈ライン(フロートラック)、中心静脈ライン(プリセップ)を挿入する。
  • TEEは術野の関係上使用が難しい。
  • 冠血管拡張薬(ニコランジルなど)やカテコラミンサポートも。
  • 内膜切除後は血圧を上げ過ぎないように(過灌流症候群)。
  • 頻脈を避ける。

②術中に脳虚血を検出するためのモニタリング(心電図、パルスオキシメータ、カプノメータ以外)について述べて下さい。
  • 脳波、BISモニタ(極端な脳虚血や深麻酔で低下)、rSO$_2$モニタなどが使用されます。

 

3)術後管理

①術後の起こりうる神経学的合併症を挙げて下さい。
  • CHS(cerebral hyperperfusion syndrome):過灌流症候群
    • 頭痛・けいれん・遅発性脳出血が生じる。まれだが、CEA術後死亡の50%を占める。
    • 危険因子としては、悪性高血圧や側副血行路が乏しい、脳梗塞発症から時間がたっていない、脳の循環予備能が低下している、などがある。
  • 反回神経麻痺?
  • 血管攣縮による脳梗塞様症状?

 

4)危機管理

①手術翌日に患者が左手のしびれを訴えました。頭部CTでは異常を認めていません。原因として何を考えますか。
  • 左手のしびれなので、頸部進展などによる腕神経叢の傷害もしくは左手の巻き込みで不適切な圧迫があった、などでしょうか。
  • 脳外科の先生とこの問題について話したら、手術には関係ないよ!と言われました(笑)