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48-1-1:経尿道的膀胱腫瘍切除術

75歳の男性.身長170cm、体重65kg。経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)が予定された。腫瘍は膀胱頸部から右側壁に位置していた。肝硬変を有し、プロトロンビン時間32秒(対照29秒)、Hb 9.0g/dl、血小板10万/mm3である。

0)この問題を解くために必要な知識

  • 肝硬変の知識
  • 膀胱穿孔の徴候とその対応

 

1)術前評価と管理

①この患者の術前における問題点を列挙してください.
  • 貧血
  • 血小板数の軽度減少
  • 肝硬変
  • 高齢

②追加すべき術前検査を挙げてください.
  • 肝機能障害や肝硬変があるような場合は背景疾患の把握(ウイルス性,アルコール性など)をし,ウイルス性では特に針刺し事故などに注意します.
  • 大まかな状態や予後を把握するために,一般的にはChild-Pugh分類が用いられます.
  • Child-Pugh分類は,脳症の有無,腹水の有無,血清総ビリルビン,血清アルブミン,PT%を元にスコア化して判断します.
    進行した肝障害では,貧血や凝固機能障害,脳症も起こすため,それらの血清学的な検査(NH3含)や,呼吸機能障害(肝肺症候群)や腎機能障害(肝腎症候群)を起こすため,血液ガスやスパイロメトリ,クレアチニンクリアランスなどの検査も必要です.
  • 肝硬変がある場合は食道静脈瘤,胃静脈瘤の評価が必要なため,内視鏡検査を行います.
  • その他肝機能検査では,排泄能検査を評価するためにICG試験(10%以下で正常,30%以上で肝硬変示唆,40%以上予後不良)を行ったり,凝固因子産生能の評価でHPT(ヘパプラスチンテスト)を行ったりします.
  • この手術ではあんまり細かなことまでは調べないでしょうけど

 

2)麻酔法および術中管理

①麻酔法は何を選択するか,また選択した根拠も説明しなさい.
  • 血小板数と凝固能だけを見れば細いスパイナル針を用いた脊髄くも膜下麻酔でもいいような気がしますが・・・相対的禁忌と見れば全身麻酔単独で。

 

3)周術期危機管理

①術中、モノポーラ式切除システムで腫瘍切除を繰り返していたところ、腹部膨満に気がついた。原因を挙げてください。
  • 膀胱穿孔が疑われます.腹膜外と腹腔内への穿孔がありますが,前者がほとんどです.

②その他の徴候,治療について述べてください.
  • 腹膜外への穿孔では,下腹部(恥骨上部)の膨満感,鼠径部,臍周囲の痛みなどが生じ,腹膜内への穿孔では,上腹部痛や肩への放散痛などの腹膜刺激症状や腹部膨満感,顔面蒼白,悪心・嘔吐,血圧上昇,頻拍などが生じます.最終的に循環虚脱を起こすこともあります.
  • 治療は基本的ドレナージですが,穿孔部が大きければ開腹して縫縮する場合もあります.
  • 麻酔高が高いと(Th10以上),腹膜内への穿孔に気づくのが遅れる場合もあります.

 

4)接遇問題

①患者は肺水腫を併発し、集中治療室での呼吸管理となった。家族が、何故集中治療管理になったかを説明してほしいといっています。口頭試験官を患者さんの妻佐藤花子さんとします。佐藤花子さんがすでに部屋で待っていて、先生(受験者)が、その部屋に入っていくところから始まります。では、はじめてください。
  • 自己紹介、説明相手の確認
  • 現在の状況を説明。
  • 肺水腫という肺に水がしみだして溜まってしまう状態になってしまったため、呼吸の状態が悪く、人工呼吸管理が必要になったこと。
  • 原因の1つとしては手術の合併症の膀胱穿孔が考えられるが、もともと肝臓が悪いため体に水がたまりやすい状態であったこと。そして合併症は一定の確率で起きてしまうこと。
  • 呼吸・循環の管理を厳重に行い、ベストを尽くすこと。
  • 何か質問があるか。今なくても、わからないことがあれば聞くことができること。
  • 定期的に状況を説明すること など。