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47-1:頸椎後方固定術

78歳の女性。身長146cm、体重65kg。慢性関節リウマチによる環軸椎亜脱臼に対し頸椎後方固定術が予定された。ステロイドを8年前から服用し、現在はプレドニゾロンを1日7.5mg服用している。下顎が小さく開口は3cm程度である。

0)この問題を解くために必要な知識

  • 関節リウマチの知識
  • DAM
  • ステロイドカバー
  • 副腎不全に関する知識

 

1)術前評価

①慢性関節リウマチの全身状態の術前評価で注意する点は何ですか。
  • 気道評価の観点からは頸椎不安定性のチェックが必要です.また,可動域制限や開口障害も伴うことがあります.主治医,整形外科医にも頸部運動の許容範囲について協議しておきます.患者自身の手足のしびれなどの症状を問診しておきます.
  • 頸椎レントゲンやCTやMRIで確認します.
  • ステロイドを内服していることが多いため,内服量と内服期間を確認しておきます.
  • 肺病変(俗にいうリウマチ肺)の有無や眼病変の有無(約20%にSj¥”{o}gren症候群の合併)を確認します.
  • 約30%程度に心膜炎の合併があり,心嚢水の貯留がある場合もあります.
  • また,四肢の拘縮がある場合は,術中の体位や本人の楽な姿勢などを術前に確認しておくことも必要です.
  • 頸椎・四肢以外の関節病変としては,顎関節病変による開口障害がある場合もあり,術前の評価が重要です.また,RA患者の30%程度に輪状披裂関節病変による声帯固定があるとされ,挿管チューブが入りにくかったり,抜管後の気道閉塞のリスクも考慮していなければいけません.

②ステロイドカバーの必要性とその方法について述べてください.
  • 手術侵襲や麻酔,感染症などによるストレスによりコルチゾルの分泌量は増加しますが,ステロイドの長期投与によりHPA系の抑制が生じることで副腎機能の低下,副腎の萎縮が起こり,ストレスに見合うだけのコルチゾル分泌が得られなくなります.
  • その際に生じるショックを主体とする病態(ステロイド離脱症候群)を予防するために周術期にステロイドを補充することをステロイドカバーと呼びます.
  • ステロイド投与中止後1年以上たっていれば必要はないと言われています.つまりそれ以内ならとりあえず考慮します.
  • 具体的には過去1年間に2〜3週間以上,あるいは最近1週間以上にわたり生理的分泌量以上(25〜30mg/day以上)のヒドロコルチゾンまたは等価のステロイドが投与されている患者,(医原性)クッシング症候群(ムーンフェイスや中心性肥満など)を呈している患者はHPA系が抑制されている可能性があるためステロイドカバーを考慮します.
  • 5mg/day以下のプレドニゾロン(20mg/day以下のヒドロコルチゾン)あるいは,投与量にかかわらず3週以内あるいは隔日投与であれば周術期も常用量でよいとされています.
  • 内服以外では,長期間にわたる0.8mg/day以上の吸入ステロイド(喘息患者など)使用患者や,2g/day以上の局所ステロイド剤使用患者でも考慮します.
  • 悩む症例では,念のためステロイドカバーを行うか,余裕があればACTH刺激に対する反応性試験(rapid ACTH試験など)を行ってもよいかもしれません.

 

2)麻酔法および術中管理

①気管挿管はどのように施行するか述べてください.
  • 環軸椎亜脱臼もあるため、意識下で気管支ファイバーもしくはAWSで施行。鎮静は少量フェンタニル(100〜200μgまで)で。

②腹臥位の合併症について述べてください.
  • 眼球圧迫による失明、視力障害
  • ラインの事故抜去
  • 頸椎損傷
  • 気管チューブの脱落
  • 皮膚の圧迫(褥瘡の原因)や神経損傷(外側大腿皮神経や腕神経叢麻痺、尺骨神経麻痺など)

 

3)術後疼痛管理

①術後鎮痛はどのようにしますか.
  • NSAIDsやアセトアミノフェン
  • フェンタニル使用のIV-PCA

 

4)周術期危機管理

①術後,病棟で収縮期血圧が60mmHgになりました.考えられる原因を挙げてください.
  • (特に出血や心筋梗塞が疑われることがなければ)急性副腎不全が考えられます.